洞察力――弱者が強者に勝つ70の極意

発刊
2017年10月26日
ページ数
248ページ
読了目安
303分
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推薦者

野球でも仕事でも成果を出すための方法
相手を知り、自分を知ることで勝利をひきよせる。元ヤクルトスワローズのプロ野球選手だった著者が、あらゆる仕事にも通じる、成果を出すための考え方を紹介している一冊。

勝負を懸けて選択したのなら、失敗しても仕方がない

プロ野球界で一番、頭が良いと感じた選手は誰かと聞かれたとするなら、一緒にプレーした中では古田敦也さんの名前を挙げる。野手全員で盗塁の練習をする機会があった。投手も盗塁を仕掛けてくることがわかっているから、素早いクイックモーションで投げる。当然、投手が投げ始めてからスタートを切っても、二塁でアウトになってしまう。

古田さんの考え方は違った。真面目にスタートをしても良い結果が出ないのなら、投手が動き始める前にスタートをしてみればいい。もちろん、牽制でアウトになって首脳陣に叱られるリスクだってある。だが、勝負を懸けて選択したのなら、たとえ失敗しても仕方がない。セオリー通りにプレーすることが、常に正解とは限らない。現役時代の古田さんのプレーは遊び心に溢れていた。球界の常識を疑ってかかるような探究心には、驚かされることが多かった。古田さんがよく口にしていたのが「最後は命を取られるわけじゃない」という言葉だった。

勝負強さの原点

プロ野球には「勝負強い」と表現される選手がいる。実際に得点圏にランナーを置いている時や、試合の勝敗を決める場面で好成績を残す選手がいるのは事実だ。最近では、阪神の福留孝介が代表例だ。

勝負強いとされる打者は、腹が据わっていると感じさせる選手が多い。投手は速いボールと遅いボールの急速の緩急、内角と外角、高低のコースを投げ分けて、打者のタイミングをずらそうとしてくる。これら全てのボールに対応して打ち返そうとするのは不可能に近い。打者側としては、より球種やコースを予測して対応する必要がある。0点か100点か。50点を狙って成果を出せる局面ではない。「この場面でストレートが来たら、打てなくてもしょうがない。その代わりスライダーが来たら絶対にヒットを打ってやろう」、打席の中でこれぐらい思い切った割り切りができるかどうかが、勝負強さの原点になっていく。福留は若い頃から、この割り切りに長けていた。試合終盤のツーアウト満塁、フルカウントからでも、ど真ん中の真っすぐを見逃すことがあった。スライダーを狙っていましたと言わんばかりの表情でベンチに戻っていく。守る側からすれば、これほど怖いと感じることはなかった。

自分ができる準備をコントロールする

プレッシャーとは、突き詰めて考えれば「何かをしなければならない」と考えた時に生まれるものだ。一度「この試合に勝たなければいけない」と受け身に回ってしまうとプレッシャーは増大する。プレッシャーから逃れることはできない。プレッシャーと向き合う上で考えていたのが、自分ができる準備を整理することだ。

結果はコントロールできないが、どう準備するかは自分でコントロールすることができる。準備を整理することで、打てなかったらどうしようと結果を考える思考の隙間が少なくなっていった。

変化するべき潮目に気づく

野村克也監督は「変化を恐れないのが一流」と話されているが、「変化」とは「勝負」を懸けることだと思っている。安全を確保していては本当の意味で変化することはできない。丁か半かの勝負を懸けなければ、大きな成果を得ることはできない。実績のない人ほど過去の小さな成功体験から離れられないように感じる。

変化するべき潮目だと気づくことができるか。気づいた時に「ゼロベース」で勝負を懸けることができるか。それが成長の分かれ道になる。ただ忘れてはならないのは変化の前には自己分析が必要ということだ。自分の力量がどれほどあり、何が不足しているのか。現状を分析できていなければ、変化しようにも回り道となってしまう。