STARTUP STUDIO 連続してイノベーションを生む「ハリウッド型」プロ集団

発刊
2017年10月20日
ページ数
348ページ
読了目安
410分
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次々にイノベーションを生み出すための仕組み
近年、新規事業を生み出すための新しいシステムとして注目されている「スタートアップスタジオ」を解説する一冊。起業経験者、マーケター、投資家、エンジニアなど、事業開発の各専門家を集め、次々に新規事業を生み出す仕組みを紹介しています。

スタートアップスタジオとは

スタートアップスタジオとは、スタジオ内にある様々なリソースを使いながら、次から次へとイノベーティブな企業を立ち上げていく、新しい組織形態のことである。いわば「連続してイノベーションを生み出す集団」であり、ハリウッドの映画スタジオに例えられることも多い。起業したいと考える人や大企業の新規事業担当者などが、スタジオ内にいる事業開発の各種専門家たちと共にイノベーションを生み出していく。
この組織は持続的で、多方面にわたる起業支援の再現性も高いものとなっている。それゆえ、「ベンチャービルダー」「スタートアップファクトリー」「ファウンドリー」などと呼ばれることもある。

昨今、スタートアップスタジオは世界的に増加傾向で、新規事業創出の新たなトレンドとなりつつある。スタジオをうまく活用すれば、少ないリスクで効率よくスタートアップを立ち上げることができる。

スタートアップスタジオの運営プロセス

スタートアップスタジオとは、同時多発的に複数の企業を立ち上げる組織である。一般的な手順は次のようになる。

①スタジオの中心となるコアチームおよび起業家を招聘する
②スタジオに所属する人全員が共有できるインフラと、運営資金を準備する
③事業のアイデアを考え、場合によっては共同創業者のように振る舞う
④複数のスタートアップを並行して立ち上げる
⑤うまくいかないアイデアは捨て、そのアイデアを育てることに携わっていたチームメンバーを配置転換する(結果、ノウハウはすべて残る)
⑥うまくいきそうなアイデアを独立させて、専門の別会社を設立する
⑦優れたアイデアを成長させ、イグジットさせるまでを繰り返す

スタートアップスタジオは、起業家やイノベーターが新しいコンセプトを次々に打ち出す上で理想的な場を提供する。そのために利用できるリソースはスタジオ内に豊富にあるので、スタジオに所属する起業家やイノベーターは商品開発と顧客開拓に専念できる。また、スタジオは投資家に安定したディールフローをもたらす存在にもなり得る。

インキュベーターやアクセラレーターは、スタートアップしたチームを指導したり、相手の株式と交換で投資したり、有償で事業に必要なインフラを提供したりすることに重きを置いている。一方、スタートアップスタジオはスタートアップそのもの、つまり商品とチームと企業を次々に作っている。

スタートアップスタジオのアイデアをどこから持ってくるか

スタジオの基本は、スタートアップを次々と立ち上げることである。そのためには、アイデアの「健全な供給路」が必要になる。アクセラレーターの場合は、外部から応募者を探す。一方、スタジオは、自らアイデアを生み出し、自分たちの中からスタートアップを立ち上げる場合がほとんどである。その手順は次の通りである。

①しっかりとしたアイディエーションのプロセスを設ける
健全なアイデアプールを作るには、アイディエーションのための定期的なセッションを設けたり、業界ニュースに目を通してトレンドや新しく出てきたチャンスを把握したり、可能性のある事柄をすべて書き留めることが必要である。そして、どのアイデアを実行するかを決めるための評価システムを作らなければならない。

②リソースの割り当てを見極める
スタジオの中で「実験」するためにリソースを割り当てる。

③成功要因と対立のマネジメント
リソースを巡るスタートアップ間の対立を管理するために、標準的な優先事項について明確なガイドラインを設け、定期的に話し合いをする。

④継続か中止かの決定
マイルストーンを設定し、スタジオがそれぞれの実験にどこまでお金や時間を割けるのか指標を作る。