人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊

発刊
2016年7月21日
ページ数
256ページ
読了目安
276分
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人工知能によって労働者がいなくなる
人工知能によって、人は労働から解放される時代が来る。人に変わって、機械が労働を代替する時代が2030年以降に到来するとし、そのための社会保障制度と経済について考察している一冊。

汎用人工知能の出現

2030年頃に「汎用人工知能」の開発の目処が立つと言われている。「汎用人工知能」というのは、人間のように様々な知的作業をこなすことのできる人工知能である。今の世の中に存在する人工知能はすべて「特化型人工知能」であり、1つの特化された課題しかこなすことができない。特化型人工知能の及ぼすインパクトは、耕運機や自動改札機といったこれまでの機械と質的にはそれほど変わりないかもしれない。

ところが、人間と同じような知的振る舞いをする汎用人工知能が実現し普及したならば、既存の技術とは質的にも異なる変化がもたらされると考えられる。というのも、あらゆる人間の労働が汎用人工知能とそれを搭載したロボットなどの機械に代替され、経済構造が劇的に転換するからである。

技術的失業

AIは次の2つの効果を通じて経済成長を促進する。

①生産性の効率性を向上させる
②人間の労働の大部分を代替し経済構造を変革する

これらの両方共が技術的失業をもたらす可能性がある。これはAIに限った話ではなく、イノベーションは労働力を節約することで生産性を高めるので、労働者を失業させる危険を伴いつつも、経済成長を促進する。

ある部門の技術進歩が雇用を減少させないとすれば、それは需要が増大する場合に限られる。冷蔵庫や掃除機などの工業製品が普及し尽くして、需要が飽和したならば工業の技術進歩は雇用を減少させる。1970年代以降の工業の相対的縮小期であっても、幸いサービス業の労働需要が増大し、余剰人員がサービス業へ労働移動したため、技術的失業が顕著に増大する事態は避けられた。

世の中の多くの技術・機械と労働者の関係は完全に代替的というわけではなく、ほどほどに代替的という関係にある。従って、新しい技術は多くの場合、ある職業を根こそぎ消滅させるよりも、雇用を一定程度減少させるという効果を持つ。特化型AIについても同様のことが言える。AIがすべて特化型である限り、技術的失業はこれまで通り一時的局所的な問題に留めることができる。AIを搭載した自動運転車やドローンが普及することで、タクシーの運転手や配送員が失業したとしても、人間に優位性のある別の仕事に移動すれば良いからである。

労働が不要となる時代

しかし、汎用AIが現れ、大半の仕事が奪われるのであれば話が変わってくる。汎用AIは平均的な人間のなしうる仕事の大部分を奪ってしまうことで、経済構造の抜本的な変革を引き起こす。汎用AIは、2030年頃に実現するとされ、その時から人間の労働需要が減少していくと考えられる。2045年頃には人間にしかできない仕事の範囲はかなり狭いものになり、全人口の1割ほどしか労働していない社会になっているかもしれない。

労働者の多くが雇用されず、汎用AI・ロボットが生産活動に全面的に導入されるような経済を「純粋機械化経済」と呼ぶ。あらゆる産業で労働が不必要となる純粋機械化経済は、機械=資本の限界生産力が逓減しない。この経済では、機械=資本そのものが産出物であり、幾らでも作り出すことができ、爆発的な経済成長が可能となる。

純粋機械化経済においては、人は労働から解放されるが、賃金所得を得ることができない。そのため何の社会保障制度もなければ、飢えて死ぬしかなくなる。労働者が餓死しないようにするには、例えば生活保護を国民の大半に適用するといった政策を推し進める必要がある。その方法として「ベーシックインカム」制度がふさわしい。