答えは相手の中にある

発刊
2020年6月7日
ページ数
184ページ
読了目安
172分
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推薦者

人材を育成するために大切な心構え
日本ハムファイターズの元コーチが、組織の中で人材を育成する時に必要となる態度や方法を紹介している一冊。指導者には何が必要とされるのかという心構えが書かれています。

組織の目標と個人の目標を一致させる

「組織の中で働かされている」「働いてあげている」という感覚は、大なり小なり誰もが持っている。多くの人がやらされているというスタンスからどうしても抜け出せない。

「我々は、自己実現のために組織からチャンスを頂いている立場なんだ」ということに気づけば、行動が変わる。やらされていると思ってするのと、自分が「こういう成績を残したい」と思ってするのとでは、成果は180度異なる。

 

上司は往往にして部下のためにやってあげている、育ててあげているというスタンスをとっている。しかし、上司は「言ってあげている」、部下は「言われたことをしてあげている」と解釈している限り、エネルギーは生まれない。上司のゴールは、部下を育て、組織的な成果を上げることである。上司は、本人の願望を明確にして、それを叶える支援をするのが役割である。そこに指示や命令は必要ない。

 

組織には理念がある。組織として人材を育成するとは、一人ひとりが会社の目的を理解し、会社の目標を自分の目標として捉えて、できることを考えて動けるようにすることである。大事なのは組織の目的・目標の価値共有である。やらされ感が出るのは、組織の目標を自分の目標にできていないからである。

会社の目標と自分の目標は、極めてリンクする。会社組織にいる限り、会社の目標を自分の目標とした方が大きなエネルギーを出せる。

 

ハイパフォーマンスチームの条件

チームの目標を自分の目標として一人ひとりが取り組むことで、チームとしての成果が出る。これは「GRIP」というモデルで説明できる。

  • Goals(目標):チームの目標をチームのすべての人が自分の目標にする
  • Roles(役割):一人ひとりに与えられた役割や責任を全員で全うする
  • Interpersonal Relationship(人間関係):組織の目標に焦点を合わせて、組織の一員として関わる
  • Process(プロセス・段階):成果につながる行動目標を立てて進捗を管理する

ハイパフォーマンスチームに共通するのは、この4項目が満たされていることである。

 

組織の利点は、同じ喜びや悲しみを共有できることである。相手の成功が自分の成功である。相手の喜びが自分の喜びである。相手の悲しみが自分の悲しみである。

しかし、「みんなで達成するぞ」と号令をかけても、同じ熱量にならない、冷めた状態の人がいることも常である。そんな時でも、組織のゴールに対して、みんながエネルギーを注げるようなアプローチを全力でしていくのが指導者である。重要なのは、「私は絶対に諦めない。私は絶対に可能性を信じている」というスタンスである。変わらない相手を、相手自身ではなく、自分の問題として捉えているだけで、ほとんど問題は解決しているようなものである。

 

人を育てる3つの方法

①ティーチング

メンバーへの1wayコミュニケーションを中心に仕事に必要なマインド・ナレッジ・スキルを教える、相手にとって何が重要かを考えることが、ティーチングでは一番重要である。指導が合わない時「相手が理解しない」と考えると学ばなくなる。

 

②コーチング

メンバーとの2wayコミュニケーションによってメンバーが持つ答えを引き出しながら、問題解決の支援をする。コーチングは、答えは相手側が持っているというのが大前提である。答えは指導者が持っていると相手が思ってしまうと、相手を導くことはできない。

 

③エンパワーメント

メンバーに権限委譲し、メンバーは権限を持って自主的に業務を行う。人間は任されると、それを遂行するために力を発揮しようとする。誰にどれくらいの責任を与えるかは、相手を観察して、事前にデザインしなければならない。

 

いずれのステップでも、上司の立場で部下に接する時に、一番大切なのは土台となる信頼関係である。信頼関係を築くためには、考えと言葉が一致していなければならない。考えていることを言葉に出して、自分の行動を一致させる。「あの人は一貫性があって、ブレない」と思ってもらえるから信頼が生まれる。