ヘルスケア産業のデジタル経営革命 破壊的変化を強みに変える次世代ビジネスモデルと最新戦略

発刊
2017年10月19日
ページ数
376ページ
読了目安
511分
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ヘルスケア業界に破壊的変化がやってきている
デジタル技術の発達によって、ヘルスケア業界に変革の波が押し寄せつつある。従来のビジネスモデルから、患者へのアプトプットを重視した新しいビジネスモデルへの転換を紹介しながら、次世代の経営戦略について書かれています。

ヘルスケア産業激変の背景

医療業界は立ち遅れ、かつてない課題に直面しているかもしれないが、追い風となるプラス材料もある。その1つは、高齢化や慢性疾患の増加に伴い、多くの市場で「健康志向」が高まっていることだ。企業にとっては、健康や福祉を増進する消費者向けの商品・サービスを開発・販売するチャンスである。

こうした商品・サービスには、変革の鍵となるデジタルの力が用いられるようになっている。例えば、ウェアラブルデバイスや携帯電話に内蔵されたテクノロジーを使えば、これまでになかった方法で健康データを追跡・保存できる。その結果、そうしたデバイスやエコシステムの作り手は、医療システムを患者にどんぴしゃで届けられるようになった。患者に対する理解や患者とのやり取りの方法が変わり、医療は一般消費財市場の様相を呈するようになる。

他にも、電子カルテや個人ゲノム情報からライフスタイルデータ、個人健康データまで、各種のデジタルデータを分析することで、今までに類を見ない知見が得られ、新薬や治験サービスの開発が飛躍的に進歩する。

アウトプットや患者価値を重視した医療改革

従来のインプットベースの出来高払いシステムはこのままでは、そのコストを支えきれない。他方、アウトプットや患者価値(最大限の健康)、システム価値(適正コストでの有効な治療)に基づく支払いでは、実現された臨床アウトカムを測定できなければならないが、最近まで病院や国、保険事業者が保有するほとんどのシステムではそれができなかった。しかし、今はそれが可能になり、臨床活動の内容、治験前の患者の健康状態、治療後の健康状態の変化に関するデータを収集できる。これらのデータのおかげで、治療の提供方法やアウトカムの把握に関する基準を作るという改革が可能になる。アウトプットや価値を重視した医療市場の土台を作れるようになった。

古いモデルの特徴

これまで、製薬企業、医療機器メーカーのオペレーション方法は比較的シンプルだった。基本は製品・サービスの価格であり、使われる製品やサービスが増えれば支払われる金額も増えた。この環境下のビジネスは「ジェネリック」「イノベーター」「サービス」の3つに分類できた。ジェネリック医薬品は一般商品と同じように値付けされ、それは差別化要因のない医療機器類もほぼ同様だった。特許に守られた新薬は、同じ分野の先行製品に比べて高値がついた。サービスは主に、急性期(病院)、慢性期(外来施設や診療所)、長期(リハビリ施設)、在宅ケアで構成された。これらの機関はそれぞれが医療提供システムの一部として存在しているにもかかわらず、それぞれが個別の機能として運営されており、価値志向ではなくボリューム志向だった。

ボリュームからバリューへの転換

今日では事業環境が大きく変わり、基本となる指標がボリュームからバリューへ移行しているのを誰もが気付き始めている。したがって競争相手との差別化の源泉も、大量生産から、より重層的な環境へとシフトしている。そこでは以下のようなビジネスモデルが主流となる。

①リーンイノベーター
ジェネリック企業をルーツとし、効率的な製造、撤退したコスト管理、ROI管理、高度なM&A知識、価格設定や市場アクセスの自由度が大きいニッチ市場の見極めなどのベストプラクティスを組み合わせる。

②患者サービスイノベーター
医薬品の製造をなお重視しているが、付随サービス、アルゴリズム、解析法などを開発して製品のエコノミクスの新しい基礎を築き、顧客に付加価値を提供することで、差別化を図ろうとする。

③バリューイノベーター
患者および臨床アウトカムの改善を重視することで、医療システム全体の効率・効果を高める。

④新デジタル医療企業
先進的なデジタル企業であり、彼らの持つ技術やインフラ、技術者、開発者のネットワークを活かし、医療業界への参入を図っている。