ビットコインの歪な構造
ビットコインは「上位1%の保有者が全体の9割を保有」「上位3%の保有者が全体の97%を保有」といった形で「一握りの人が独占している」と言える歪な保有構造になっている。マイニングについても、大規模なマイニング・ファーム上位13社が8割ものシェアを占めており、特に中国の採掘集団が世界のマイニングの7割を担っている。このため、分散的であったはずのビットコインは、ほんの一握りの人々によって管理されていると言われる状況になっている。
ビットコインの取引をみても、中国の3つの取引所における取引高が9割以上と圧倒的なシェアを占めている。まさに「中国人がマイニングして、中国人が売買し、中国人が保有するビットコイン」とも言える状態となっている。このように保有構造、マイニング構造、取引構造のいずれをみても、ビットコインは、かなり歪んだ構造となっており、幅広いユーザー層を獲得することができていない。
ビットコインは、仕組みそのものに問題を抱えている
ビットコインは、最終的な発行上限が2100万BTCと決められている。2017年8月半ば時点で79%が発行済みとなっている。このように発行上限が決められているのは、インフレに強い通貨とするためだとされている。しかし、これは逆に通貨の希少性が高まることから、将来の需給のタイト化を見越した投機的な動きを招く。結果として、本来の目的である「交換手段」ではなく「投資用資産」として用いられる。
ビットコインの発行量は2140年頃に上限に達すると計算されるが、上限に達すると、マイニングに対して新しいコインが発行されないことになる。そうすると、取引を承認する役割を果たすマイナー達にとって、インセンティブが失われ、ビットコインの取引が承認されなくなる可能性がある。結果、システムとして崩壊する恐れがある。
ブロックチェーン技術が革命を起こす
金融界では2015年頃を境に、ビットコインは「一部の特殊な人たちが使うマイナーなサービス」として位置付けられ、金融のメインストリームに影響を及ぼすような存在ではないとみられるようになった。一方、評価が高まってきているのが「ブロックチェーン」である。ブロックチェーンは、取引記録を入れた「ブロック」を時系列に鎖のようにつなげて管理する仕組みであり、これによって、不正な取引や二重使用などを防止できるようになっている。この技術は、元々はビットコインの仕組みを支える技術だったが、現在は、仮想通貨とは切り離して、独立した技術として利用が進められようとしている。
国内外では、ブロックチェーンを使った多くの実証実験が行われている。金融界では、貿易金融、シンジケート・ローン、債券発行など多方面に実証実験が行われているが、中でも特に有望視されているのが国際送金や証券決済の分野である。また、ブロックチェーンの応用は、金融界だけでなく、非金融分野である土地登記や医療情報、選挙システム、ダイヤモンドの認定書などにも及んでいる。
ブロックチェーンには、取引記録を改ざんすることが難しい点や障害が発生しにくく、システムダウンしにくいといった特徴がある。これに加えて、ブロックチェーンが注目されている最大の要因は、劇的なコストの削減につながる可能性があるためである。ブロックチェーンを使うと、金融取引にかかるコストは1/10程度にまで削減できるとの見方もある。
ブロックチェーンは、いわば「金融のメインストリーム」の部分で活用されようとしている。このため、これが本格的に導入された場合のインパクトは、仮想通貨の比ではないと考えられる。