人は事実よりも印象に引っ張られる
私たちは、日常生活での多くのことを「なんとなく」で直感的に判断している。知らず知らずの内に、わかりやすい印象に引っ張られている。この「印象」が本人も気づかない内に損をもたらす。
あとから実際のことがわかると、かえって印象が良くなる場合もあるが、これが可能なのは「ギャップを感じさせるチャンスがある場合」に限定される。実際の社会においては、最初の印象を挽回するチャンスが与えられない方が多いため、最初の印象を操作した方が得である。
人生がうまくいくためには基本的に誠実さが重要だが、常に正直でいることは最善の戦略とは言えない。私たちは事実よりも印象に強く引っ張られるため、ハッタリも含んだ印象操作は必要不可欠である。
バイアス・コントロール
相手の印象操作をする上で、重要となってくるのは「バイアス(偏り)」である。人は好むと好まざるに関わらず、バイアスのかかったメガネを通してしか他人を判断できない。このバイアスを計算せず、バカ正直に行動すると損をする。得をするためには、バイアスとのギャップを作り、自分が話したいことを相手から質問される形に誘導することが重要である。
①バイアスのギャップを使って、相手に興味を持たせる
②すると相手は「どうして〇〇なんですか?」と質問したくなる
③その質問に答える形で「自分がアピールしたいこと」を話す
一瞬で印象を操作する重要なファクターの1つが、相手の頭の中に「?」を生むこと。そのための、ちょっとした仕掛けが「フック」である。人はバイアスとのギャップがある「フック」に出会うと、質問をしたくなる。
イメージ・マイニング
スペックの説明は人の耳を閉じさせてしまう。スペックの説明ではなく、相手の頭の中にイメージを埋め込むことで、こちらの望む方向に行動させることができる。イメージには行動を変える力が備わっている。その手法は5つ。
①ファクト(事実)
ファクトによって、自分の話の信頼性を裏づける。ファクトには「権威の意見や理論」「事例」「調査データの分析」の3種類がある。
②シミリ(直喩)
イメージを鮮明にするため「〜のような」と例える。
③アナロジー(類推)
同じ構造を持ち、かつ相手にとって馴染みのあるものに例える。
④ショート・メタファー(比喩)
第三者を主人公として、第三者のエピソードを語る。
⑤ロング・メタファー(物語)
本題とは関係のないように思われる物語や寓話で、相手は自分で行動する。
フェイク・イット
フェイク・イットの目的は「支配する」こと。目の前の相手の心を支配できれば、なんの抵抗もなく2、3歩目を踏み出してもらえる。人は「自分で考えなくていい」ことを好む。
相手を支配するのに最も必要なのは「自信」である。相手が「この人の言う通りにしておけば大丈夫」という安心感を抱けば、支配することができる。相手が何を言っても揺れない態度、それが相手の無意識に「自信がある人」という印象を残す。
自分の自信や能力など目に見えないものをフェイス・イットするのは難しい。そのため、目に見えるもの、数値化できるものを10倍大きくイメージして行動すると良い。