ゲームを支配するための3つのポイント
ゲームの展開は「手番のタイミング」に大きく左右される。手を打つ前に相手の手を観察できるかどうか(観察可能性)、ゲームの展開を事前にコミットできるかどうかが、大きくものをいう。そして、プレイヤーは当然、手番のタイミングを自分に有利に変えるための策を講じる。
①観察可能性を逆転する
自分の手番を相手が観察できるようにする。例えば、自分のやり方を信憑性をもってレポートしてくれる第三者を確保する。あるいは、反対に、自分の手を相手が観察できないようにする。わざと複数の行動が考えられる布石や宣言を出しておくことで、信号を妨害する。
②時系列的なタイミンングを変える
自分が先攻するために、偽の締切を自分に課す。または、他方のプレイヤーに検査権を与え、相手が選択前にこちらの手番の値踏みができるようにする。あるいは、自分の方が後攻となるように、最後の最後まで自分の手番を変更できる融通性を確保する。
③後攻のコミットメント・パワーを高める
後攻が示すコミットメントに強い説得力を持たせるために、現在のゲームの帰結を、規模や重要性の高い別の事柄と結びつける。例えば個人の名誉に関わる問題にしたり、未来の人間関係を左右する問題にしたりする。
囚人のジレンマの回避方法
ゲームは誰が先行者となるのかが重要な分かれ目となるが、手番のタイミングにとってゲームの帰結が左右されない状況もある。その最たる例が「囚人のジレンマ」である。
現実世界を悩ませている重大なゲームの多くは、囚人のジレンマだ。ビジネスにおいて、競争それ自体が囚人のジレンマとなりうる。ビジネス界では、この囚人のジレンマを競争のインセンティブを少なくする、あるいは撤廃する、信頼性の高い制度をつくるなど、様々な方法で解消を図っている。次の5つの条件のいずれかを満たす場合、囚人のジレンマは必ず回避できる。
①有利な規制を呼び込む
プレイヤーが直接的に、または第三者の介入を通じて間接的にゲームの利得を変えられる場合には、規制を導入し、新たなルールを敷く。
②合併と共謀で出し抜く
プレイヤーが合併またはカルテルを形成できる場合、一体となって集団にとっての利益を追求する。
③有効な報復で牽制する
プレイヤーが規制や合併といった手段を取れず、そのゲームがダイナミック・ゲーム(リアルタイムに進行し、プレイヤー双方が相手の手番を観察して、その変化に対して速やかに反応できるゲーム)の場合、「報復するぞ」という相互の脅しが、囚人のジレンマ回避の手段として成立する。
④信頼を構築する
ゲームがコミットメント手番(プレイヤーが順番に手を打つ場合に、後攻が必ずこのように反応すると事前にコミットできること)を使えるコミットメントゲームである場合、後攻による約束次第で、囚人のジレンマの回避が可能である。
⑤関係性を活かす
ゲームが繰り返し型(同じプレイヤー同士が何らかの関係性の下で、反復的に交流する)の場合、評判を第三者に証明してもらったり、掛け金を小さく抑えるといった方法で囚人のジレンマを回避できる。
この5つのどれにも当てはまらない場合には囚人のジレンマを回避する望みはない。