深く考えるとは
「深く考える」とは、決して長い時間をかけて考えることや、一生懸命に頭を絞って考えることではない。それは、あなたの中にいる「賢明なもう一人の自分」と対話すること。その時、その「もう一人の自分」が、我々の考えを深めてくれる。
誰の中にも、心の奥深くに、想像を超える賢さを持つ「もう一人の自分」がいる。我々の能力、人生を分けるのは、その「賢明なもう一人の自分」の存在に気がつき、その自分との対話の方法を知っているか否かである。
「賢明なもう一人の自分」は、2つの能力を持っている。
①論理思考を超えた「鋭い直観力」
②データベースを超えた「膨大な記憶力」
こうした能力が、我々の日常の思考について発揮されないのは、無意識の自己限定をしてしまっており、我々の力の発揮を妨げているからである。
5つの技法
「賢明なもう一人の自分」が現れ、直観力や記憶力など、素晴らしい叡智を発揮させるためには、次の5つの技法がある。
①自分の考えを「文章」にして表してみる
あるテーマについて、自分の考えや思いを「文章」にして書いてみる。次に、一度、心を静め、しばらくしてそれを読み直すと、心の奥深くから「賢明なもう一人の自分」が現れてくる。そして、この「もう一人の自分」が、違う視点から見るという形で、考えを深めてくれる。
ここで大切なことは、徹底的なブレーンストーミングを行い、頭の中のアイデアを一度、文章として表に出した後、そのアイデアが全てであると、思わないことである。出てきたアイデアが全てであると思えば「無意識の自己限定」を行ってしまい、心の奥深くから「賢明なもう一人の自分」が現れてこない。
②異質なアイデアを敢えて結びつけてみる
異質のアイデアを結びつけるには「対極の言葉を結びつける」ことである。対極の言葉を結びつける技法は、「賢明なもう一人の自分」を刺激し、その働きを促し、新たなアイデアや考えを生み出していく。
③自分自身に「問い」を投げかける
質問をする、問いを投げかけるということは、考えを深めていくための優れた技法である。自分で、ある考えを文章に表していくと、ふと、一つの「問い」が心に浮かんでくる。その「問い」を、自問自答の形で、自分自身に問うと、最初は心に何も浮かんでこないが、まもなく、心の奥深くから「答え」が浮かび上がってくる。
但し、「賢明なもう一人の自分」は、どのような場面でも、投げかけた「問い」に対して、すぐに「答え」を教えてくれるわけではない。その時に行うべきは、一度その「問い」を忘れることである。
④一度、その「問い」を忘れる
昔から「無心の時、直観が閃く」と言われるが、「賢明なもう一人の自分」の直観力は、我々の表面意識で「答えを知りたい」という気持ちが強すぎると、働かない。その問題を徹底的に考えた後、一度、その意識から離れ、問いを忘れた時、さらには「無心」の状態になった時、心の奥深くの「賢明なもう一人の自分」が動き出し、「直観」が閃くという形で、「答え」を教えてくれる。
⑤自分自身を追い詰める
「賢明なもう一人の自分」が動き出すのは、「無心」になった時だけでなく、「追い詰められた」時にも動き出す。締め切りを明確に定め、自分を追い詰める。分野を問わず、一流のプロフェッショナルは、「直観」を閃かせるために、自らの退路を断ち、自らを追い詰める技法を身につけている。