自衛隊元最高幹部が教える 経営学では学べない戦略の本質

発刊
2017年12月1日
ページ数
240ページ
読了目安
246分
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自衛隊の戦略のつくりかた
自衛隊トップの役職である統合幕僚長を務めた著者が、自衛隊で行われている戦略立案の方法と、戦史を事例にした戦略の要点を紹介している一冊。

相手の立場になって考える

軍事戦略・作戦を立てる時に自衛隊がまず行うのは、現状認識のための「情勢見積もり」である。この情勢見積もりの目的は「相手を知る」ことだが、具体的には相手の「能力」と「意志」を見極めることが必要になる。そこでは「相手の立場になって考える」ことが肝要である。戦略レベルの情勢見積もりになると、相手の指導者の生い立ちや性格、考え方といった情報も、見積もりの要素となる。

「相手の立場になって考える」時、まず自認すべきは「自分が何にとらわれているのかを考え抜く」ということである。例えば「相手はこうしたいと思っているのでは?」と考えた時、そこでなぜ自分はそう考えたのか、ということを問う。これは「自らのバイアスを外す」ということである。その状態に至るには、常に自分を冷静な状態に保っておく必要がある。

情報こそが生命線

「情報見積もり」の情報とは、ただ集めれば良い訳ではない。集めた情報資料について、当然ながら自衛隊は取捨選択を行っている。自衛隊には情報資料(生情報)を処理し、論理的、合理的な情報を提供するために「情報担当」というスタッフが存在する。「情報担当」は相手について情報を収集した上で、最終的にはそれを「目的」「現状認識」「考えられるオプションの列挙」「考えられるオプションの分析」「考えられるオプションの結論」という形に整理し、「処理された情報」を指揮官に報告する。

指揮官に上げる情報は「指揮官が何かを判断するため」という目的に沿った情報である。「情報担当」はその時指揮官が何を考え、何を判断しなくてはいけないのか、という目的を真っ先に考える。指揮官は指揮官で、判断材料として必要となるのはこういう情報だとスタッフに要求する。この情報こそが自衛隊の生命線である。

情報と作戦のバランスが重要

一方「自分はどうすべきか」を考えるのは「作戦担当」である。「作戦担当」は自分たちが戦略レベルで相手に対して何をしたいのか、あるいは作戦・戦術レベルでどのように振る舞うのかなどのオプションを指揮官に示す。さらに自らが見積もった戦略・作戦を「情報担当」が見積もった成果を踏まえた上で、相手がどのような動きや手段に出てくるのかを分析・比較しながら、さらに戦略を練り上げる。

この「情報」と「作戦」のバランスこそ、戦略を考える上では決定的に重要である。旧日本軍の失敗の原因は、情報課に比べて作戦課の力が強く、敵の出方をほとんど考慮せずに、自分中心の都合の良い判断をしたことにあると言われている。

修正とレビューを繰り返す

「情報担当」と「作戦担当」のオプションが出揃ったところで、その中で最良のオプションとは何か、ということが徹底的に議論される。その議論の結果を踏まえて、最終的な意思決定を指揮官が行う。

その後、戦略や作戦は具体的な行動計画に落としこまれるが、そこで指揮官はコンセプトを与えた上で、現場レベルの自衛官にまで具体的な目標を示さなければならない。その戦略や作戦は状況の変化や時間の経過に伴って、必要に応じて修正される。実行の後にはレビューを行い、その成果を蓄積していく。そこでの教訓が自衛隊の経験として受け継がれる。

情報・決心・実行のサイクルを回す

現実の戦いの場を想定した場合、あらゆる状況が絶えず変化する。そこで重視しなければならないのが「情報・決心・実行」のサイクルである。このサイクルの速度と精度、正確度が敵に対して相対的に優越することが重要になる。このサイクルは実際には、試行錯誤の連続である。