ニーズの方向性に技術予測をマッピングする
イノベーションを起こすには、今後、世の中がどのような方向に進んでいくのか、また、人々のニーズがどこに向かうのか、ある程度予見することが不可欠である。そのための眼力を養うためには、これまでコンピューターを中心とした技術がどのように使われてきたのか、そしてどのような製品が人々に選好されてきたのか、それらの連鎖の流れを読むことである。
今後のニーズの方向性が見えてくればそれに技術予測をマッピングする、そして確実にビジネスとして成功させるにはどうすれば良いかを何度も反芻し、そして検証する、これがイノベーションの基本である。
取り組むべきキーワードは「連携」
現在までのコンピューター史の流れからみて、この先イノベーションを起こすために我々が取り組むべきソリューションのキーワードは「連携」である。
これからのイノベーションを実現するには、チップの進化の方向性と、ソリューションとの親和性を無視することはできない。チップは、世の中のありとあらゆるものに搭載されるようになり、それぞれがメッシュのようにつながるようになる。体の中から街のいたるところ、人工衛星までがネットにつながり、必要な時に必要なものがつながって答えを出していく世界を「情報メッシュ社会」と呼んでいる。
この「情報メッシュ社会」を実現するためには、それぞれの社会システムのノード間の連携が必要となり、様々な分野の人々の合意形成が前提となるため、業界を超えた「コンソーシアム」が必須であり、さらには、連携に最適な層別の共通プラットフォームの形成が望まれる。
これからイノベーションを起こすために最も重要な活動の1つが、地域活動を含めた市民にも受け入れられる広義の「コンソーシアム」の形成である。その1つの例として「ドローン」が挙げられる。
「利己的なチップの法則」と人間の普遍的な「5つの欲望」
コンピューター(チップ)の進化の歴史とそのソリューションの方向性を、チップの側から俯瞰すると、自らの進化(高速、小型、省電力等)のために取捨選択してきたようにも見える。この現象から「利己的なチップ」として3つの法則と、その進化を歓迎した人間の「5つの欲望」が導き出される。
●利己的なチップの法則
①より広大なプラットフォームを好む
1. IBMが仕様公開したPC/AT互換機が主流となり、国産PC等を駆逐
2. 20年以上にわたりWindowsとインテルがPCの主流
3. iモード携帯のガラパゴス化
②機会均等なエコシステムを好む
1. iモードの失敗とApp StoreやGoogle playの成功
2. データ屋と処理屋の分離
3. YoutubeやInstagram等の台頭
③人間の欲望を好む
1. 大型コンピューターからダウンサイジング、使い易さ、高速化、小型化
2. 善にも悪にも追随
3. 脳や身体の解明、宇宙、深海、量子の制御等の未知の分野に進展
●5つの欲望
①自分らしさの実現への欲望
②快適性・利便性への欲望(一体化に向けた社会システムの最適化)
③快感への欲望(エキサイティング、エンターテインメント、コミュニケーション)
④「生」に対する欲望
⑤未知の世界への欲望
これから新たなイノベーションの種を育てようとする際、この利己的なチップの法則と「5つの欲望」の掛け合わせで検討するとよい。