「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?: 世界を魅了する〈意味〉の戦略的デザイン

発刊
2020年2月26日
ページ数
239ページ
読了目安
282分
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推薦者

イタリアに学ぶデザイン経営
ファッションや機械、食品など、デザインに優れるメイド・イン・イタリーの特徴を紹介しながら、その強さの源泉を紹介している一冊。どのようにプロダクトに取り組めば優れたものを生み出せるのかヒントが書かれています。

メイド・イン・イタリーの特長

「メイド・イン・イタリー」は、売上高の大きさで、自動機械、ファッション、インテリアデザイン、食品の4つの分野が主流だ。機械はクライアントの要望に沿ったパーソナライゼーションに強く、ファッション・食品・インテリアの3つの業界で使用される機械に持ち味がでやすい。これら「メイド・イン・イタリー」には3つの特長がある。

①中央政府主導で獲得したブランドではない
②中小の企業であっても大企業に振り回されていない
③テクノロジー主導のビジネスではない

これらのイタリアの中小企業経営の特長を深く理解するにあたって、キーワードとなるのが「意味のイノベーション」と「アルティジャナーレ」である。

意味のイノベーション

「意味のイノベーション」とは、モノやサービスがもたらす意味を変えることである。技術イノベーションだけでは独占的な新しい市場を作りづらい。また問題解決型のイノベーションは役立つ場面もあるが、問題解決のアイデアがコモディティ化しており、差別化の要因になりにくい。したがって「意味を与える」というデザインの本来の役割に立ち戻り、意味のイノベーションにもっと目を向けるべきである。

モノの意味はそれ自体からではなく、モノを囲む環境や使われる状況にしたがって変わってくる。意味はコンテクストと不可分の関係にある。したがって技術的にずば抜けたものがなくても、市場にインパクトを与えられる。こうした意味のイノベーションに秀でた規模の小さな企業がイタリアには多い。

イタリアの企業人は、デザインの原点へのこだわりが強く「意味を与えること」「可視化」「審美性」の3つの要素を不可欠とみている。イタリア人はメタファーの使い方が上手で、抽象的なことや曖昧で難しい内容を、視覚的にイメージしやすい別の事例に置き換える習慣が定着している。この熟練度の高さが、意味のイノベーションの実現度を大きく左右する。

意味のイノベーションの実践にあたっては、2つの点が原則である。

①内から外へ
自らの同期にはじまる内発性に重きをおくこと。モノの開発やコトを起こす当事者の「内」を起点とする。ビジョンは個々人の中から生まれてくるからだ。ゆえに、自分で判断のものさしをつくり決めていくことが重要になる。

②批判精神
意味を生み出すには量ではなく質が問題になる。そこで批判が必要になる。距離をもって的確に判断・意見を述べていくことでビジョンは成長する。

アルティジャナーレ(職人的であること)

日本語の「職人」とイタリア語の「アルティジャーノ」の間には、意味するところに大きな差異がある。イタリア人の本領として、手を動かす人は起業家精神に溢れているケースが多い。アルティジャーノはビジョンの作り手であるとの自覚も強い。何かを自分の手で作ったら、それをどうするとよく売れるかを自ら考え、実行する人たちが多い。

手を動かしてモノをつくると、言葉や論理では説明しきれない部分を連続的につなげることができる。イタリアは、この価値を大切にする。機械による量産品は自分なりの味が出しにくい。イタリアのビジネスパーソンは他人と違うモノをつくることにエネルギーを惜しまないが、それには製品の作る過程に手仕事を入れ込むのが効果的であると考えている。アルティジャーノの名のもとにストーリーが充実し、付加価値のあるものとして高価格設定できる。