RETIRE SHIFT 人生100年時代の引退戦略

発刊
2026年7月8日
ページ数
336ページ
読了目安
451分
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推薦者

リタイアの時期の決め方
人手不足で60歳以降も働く条件が良くなりつつある時代、引退時期をどのように考えれば良いのかを指南する一冊。
公的年金の受け取りは遅らせるほど、給付水準が増えるという仕組みから、いつまで働くといいのかという引退戦略が紹介されています。

これからは自分のリタイアのタイミングは自分で決められる時代だとし、そのための考え方が書かれています。人生100年時代における働き方の1つのテーマとして、役に立ちます。

リタイア・シフト

慢性的な人材不足の中、企業は高齢者雇用をますます積極化していく。60歳代後半あるいは70歳代になっても「働いてほしい」と期待する。ところが国の年金は65歳からもらえるため、「年金がもらえるまで働く」という会社員のニーズは先に充足する。つまり、これからの時代、リタイアのタイミングを決める主導権は、会社から会社員の側に移る。

 

会社員は65歳まで雇用が守られている上に、新しい選択肢が増えていく。この変化が「リタイア・シフト」だ。

  • 70歳あるいはそれ以上まで働くことができるようになる
  • 60歳代の雇用条件は改善され、低賃金で働かされる状況ではなくなる
  • 公的年金は60〜75歳の間で自由にもらい始めることができる
  • 経済的余裕があれば60歳あるいはそれより早く会社を辞めることもできる

 

今の会社にとどまって60歳再雇用を受け入れるだけがリタイアの選択肢ではない。これからは高齢期の転職や再就職も、働く側に有利になると考えられる。60歳代を対象とした人材募集は増えていくことになり、外へ飛び出すという引退戦略も可能になってくる。

 

「リタイア・シフト」の波は、今まで一部の企業や個人が先行していたが、この数年で一気に加速し始めている。定年年齢を65歳以上とする会社は、中小企業を中心に既に3社に1社を超えている。「リタイア・シフト」は中小企業が大企業に先行しており、70歳までの雇用確保措置も、中小企業では3社に1社を超えている。今や60歳代後半の男性は6割が働いており、70歳代前半の男性でも4割が働く時代になっている。

 

リタイア・シフトの時代にまず必要なのは、私たちのマインドセットのアップデートだ。今、目の前で起きている70歳あるいはそれ以上も働ける社会の到来を理解する必要がある。但し、70歳まで働くことは強制されるものではないし、頭を下げて70歳まで働かせてもらうのでもない。むしろ「働いてあげる」くらいの意識でいい。

その上で、自分の働き方をどうしたいのかを「60〜65歳」「65歳以降」「70歳以降」とステージを3つに分けて考えるといい。そして、いつ辞めるかというイメージも自分に問いかけるといい。いつまでも働ける時代がやってきた時、引退年齢を考えないまま働くと、会社に求められるがまま、いつまでも働くということが起きうるからだ。

 

年金を増額させる「遅いリタイア」戦略

今までは私的年金(企業年金や個人年金)の果たす役割は、公的年金の金額に「上乗せ」し、カバーすることだと考えられていた。これに対して、私的年金と公的年金の組み合わせ方には「上乗せ」だけでなく「継投策」というアプローチがある。これをWPPという。

W:Work Longer(高齢期も働き続ける)
P:Private Pensions(私的年金の取り崩しをする)
P:Public Pensions(増額された公的年金の繰下げ受け取りをする)

このWPPは、「リタイア・シフト」の時代の引退戦略に有用である。

 

公的年金は、受け取りを早めると給付水準が引き下げられる一方、受け取りを遅くすることで、年金額を増やすことができる。年金の受け取り開始を1年繰り下げるごとに8.4%の増額ができ、70歳まで遅らせれば42%増、最大で75歳まで遅らせて84%増とすることができる。

WPPにおいては、無収入であってもあえて個人資産を取り崩しつつ、公的年金の増額を目指すアプローチがある。

  1. Wのみ:高齢期に就労を続け、給与収入のみで暮らして繰下げを行う。
  2. W+P(W多め):仕事で稼いだお金と、私的年金の受け取りをミックスして数年間を過ごし、公的年金増額を目指す。
  3. W+P(W少なめ):手元のお金を取り崩すことで、公的年金の繰下げを行う。
  4. Pのみ:仕事はせず無収入になっても、手元資金を取り崩し、公的年金の繰下げを行う。
  5. WからPへの継投策:長く働き続け、そこからさらに数年は資産を取り崩し、公的年金の繰下げを行う。

 

WPPのコツは「◯年繰り下げる」という目標をガチガチに決めすぎないことだ。必ずしも75歳まで繰り下げて年金84%アップを目指す必要はない。選択肢をいくつか選び取り、無年金期間で資産がいくら減少するかを計算した上で、繰り下げる期間を判断する必要がある。

 

65歳より遅く年金をもらった場合、概ね12年もらうことが「損」をしない目安と言われる。例えば70歳からもらった人は、65歳からの5年間が無年金であっても、82歳に達する頃に総受取額で追いつき、以降は逆転することになる。82歳というのは日本人の平均寿命と大体同じと考えて良い。