なぜあなたの感想はふつうなのか

発刊
2026年6月17日
ページ数
256ページ
読了目安
269分
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自分だけのオリジナルの視点を生み出す方法
映画やドラマなどのエンタメ作品のレビューや、時事問題についてのコメントで、その独自の視点が注目される著者が「独自の感想」を生み出す方法を紹介している一冊。

レビューサイトやSNSなどで、ありきたりな感想が溢れる時代において、他の人にも影響を与え、注目を集める「独自の視点」はどのように作られるのかが分析されています。テンプレのように意味のないコメントから脱し、他人とは異なる意見を出すために参考となる考え方が書かれています。

自分を知ることで、独自の感想を作る

情報が溢れる時代、私たちが何かを語る時、「速いけど平凡」「鋭いけど遅い」という2つのもったいなさに陥りやすい。今の世の中に影響を与えるには「時間をかけすぎず、そこそこ独自の仮説を探るのをサボらない」姿勢から生まれる言葉が必要である。

自分の実感に基づきながら、言い尽くされていない、まだ語ることが残されている視点を、作品を自分の中から切り出すこと。それができるようになれば、専門家やプロにならずとも「そこそこ独自」な感想を作り、他者の考えに影響を与えることができる。

 

あなたの感想が「ふつう」なのは、自分で自分がよくわかっていない可能性が高い。独自の感想・言葉は、自分を知り、掘り下げることで生まれてくる。うまく言語化するための特殊な訓練も必要ない。

 

他人の感想を徹底的に調べて利用する

自分の考えを書く前に「先行批評」を調べることは重要である。徹底的に他人の感想を調べ尽くす。レビューサイトなどでコメントを一気に読むのが手っ取り早い。次にSNSで「作品名+気になったキーワード」をSNSの検索窓に入れてひたすらスクロールしていくのが最速である。作中で出てきた深掘りしたいポイントに絞って何度かスクリーニングするのがコツである。YouTubeやPodcastで「作品名+感想」「作品名+解説」で検索し、片っ端から倍速再生で聴いていくのもおすすめである。

 

ポイントは、すべての感想に「なるほど!」と思わないこと。大量に感想を浴びている内に、感想の質の差が見えてくる。そうなったら次に、他人の感想を吸収しながら以下の基準で「選り分ける」作業に入る。

  1. 過去作品に言及しているか
  2. 過去作品との比較が的確か
  3. 「観てないと言えない話」を言っているか
  4. 全体の話をしているか、部分の話をしているか

こうした基準で他人の感想をスクリーニングしていると、他の人がほとんど言及していないのに気になった場面や、みんなが良かったと言っているのに置いていかれた場面が引っ掛かる。その場面や人物と作品全体の関係を徹底的に考えると、自然と独自の感想が生まれる。

 

どれも似たようなテンプレ感想を疑って一段深める。聞き慣れたフレーズに出会ったり、自分自身つい言いがちなフレーズに気づいた時こそ、自分の感想を一層尖らせるチャンスである。テンプレ感想について、少し引いた目で見て、それがどのような前提・基準のもとで成り立っているのかを分解して考える。

 

独自の感想を生み出す

感想は、本当に無の状態から生み出すことはできない。感想は、既に自分の中にあるからである。自分ならではの感想が生まれるプロセスを単純化すると、4段階の分析を繰り返すことになる。

①比較

好きな対象Aを、同ジャンル/同レイヤーの他のものと比較する。比較するジャンルやレイヤーは、どういう相手に感想を発信したいのかによって変わるため、ターゲットを決めておく。感想を広く届けたい場合には、比較するジャンルも拘らず、凝りすぎず、シンプルに広く取るといい。

 

②特異性の抽出

他のものと比較して、Aが特異な点は何かを考える。一般論は気にせず、納得がいく特異性が浮かび上がるまでいろんな物差しを当てていく。特異性の抽出を経ると自ずと仮説が生まれ「独自の感想」を開ける鍵になる。

 

③ネーミング

Aの特異性に名前をつけ、座標を作る。ここでは何かしら、特に極端な作品・役を端っこに置いて、その作品と対照的なものを考え、極端な性質にネーミングする。大事なのは、その物差しをいかに説得力がある、自分が納得できるプロセスで作れるかである。

 

④検算

他のものにも3のネーミングを当てて、他のものにも当てはまることか、A独自のものかを検証する。大事なのは、その仮説・検証の過程を「知らない人に話している」つもりになること。仮説と検証のトライアンドエラーを繰り返すことが「独自の感想」を持つためには必要になる。

 

違和感を膨らませる

新しく出会ったもの、初めて観た作品については、違和感を膨らませる。映画などを観ていると「あれ?」と感じる部分がある。こうした「あれ?」と思った些細なことに全体に関わる重要なことが隠されていることがある。

どんな作品であれ、小さな違和感を抱く箇所が必ずある。そこから「なぜ自分はこの箇所に違和感を持ったのだろう?」と考えることが、自分なりの切り口を見つける手掛かりとなる。

 

「違和感を膨らませる」時、自分だけの警察を見つけるという方法がある。初心者の不用意な発言に無意味に厳しい「◯◯警察」を、うまく応用する。自分は「何警察」になれるのかを自覚するだけで、独自の感想に近づく。