7つの激変 いかがわしい者たちが主役の「インターネット産業」30年史

発刊
2026年6月24日
ページ数
312ページ
読了目安
377分
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インターネット30年の歴史の中で世の中を変えたもの
インターネット黎明期にヤフーに入社し、インターネット30年の歴史を見てきた著者が、インターネットがもたらした劇的な変化を7つのテーマで紹介。AI時代においても、過去30年と同じパターンは形を変えて起こり得るとして、インターネットの歴史を振り返っています。

検索、SNS、動画、通販、広告、文化、起業という、インターネット30年時代に大きく世の中が変わったものを取り上げながら、これからのAI時代において変わるもの変わらないものについて考えさせます。

検索:誰もカネになると思わなかった検索が生成AIを生み出すまで

検索技術そのものは「情報を整理して、見つけやすくする」という、図書館の司書みたいな機能で、そこにマネタイズポイントはない。便利だけど、ビジネスモデルがないとレッテルを貼られていた黎明期、「カネの匂い」をもたらしたのが、ネット広告である。

当時のネット広告は、人気ページの余白を「広告枠」として販売するバナー広告が主流。この「枠売り」の常識を覆し、検索に革命的なビジネスモデルをもたらしたのが「キーワード広告」である。この仕組みが画期的な点は「ユーザーが誰か」を知る必要がないこと。検索ワードが打ち込まれた瞬間に、見込み客がわかるため検索エンジンは巨大な収益装置へと変貌を遂げた。

 

インターネットが普及していくと、人々のあらゆる「知りたい」欲望が検索ニーズを拡大させた。それに伴い、検索ワードも、その組み合わせも飛躍的に増加。このデータ量の増加が、後のAI技術の進化の伏線となった。爆発的に増えるデータを前に、人間が手作業でルールを決める「ルールベース」の管理は限界を迎え、そこに技術を進化させるための強烈な「動機」が生まれた。これがAIを花開かせた決定的なトリガーとなった。

 

インターネット産業はいい意味で「ゆるい」世界で、検索の結果の表示が少し間違っていても、誰かの命が脅かされる訳ではなく、他の産業に比べ「間違い」に対する許容度がはるかに高かった。だからこそ、たくさん「失敗する」ことができ、その分、AIの学習サイクルを大量に回すことができた。生成AI社会の根源は「検索」にあった。

 

SNS:友達の昼飯を見るだけだったSNSが、私たちの可処分時間を支配するまで

インターネットが登場する以前の80年代は、テレビなどのメディアを通じて、プロが作ったコンテンツを受動的に消費することしか選択肢がなかった。時間とコストをかけて作った「プロコンテンツをいかにして集め、ユーザーに届けるか」がネットビジネスの主要なテーマだった。

マスメディアが強大な影響力を誇っていた1990年代後半、インターネットの片隅に個人が制作したウェブサイトが増え始める。その後、UGC(ユーザー生成コンテンツ)」の主流として「ネット掲示板」が台頭し、2000年代に入ると「ブログ」が登場。このブログこそが「メディアの民主化」の最初のターニングポイントと言える。このブログの登場とほぼ同時期に、一般の個人が自らコンテンツを作り、届ける主体になれる「SNS」が誕生した。

 

SNSの中でも、Facebookは、日本のネットカルチャーに「実名登録」という最大の衝撃をもたらした。それは「現実社会の人間関係」そのものを、丸ごとネット上に再現した点にある。インターネット史上初めて、リアルとネットが地続きになったことは、今日の「リア充投稿」のカルチャーを生んだ。

SNSがインターネットにもたらしたもう1つのインパクトが「タイムライン」の発明である。アプリを開くだけで、フォローしている人の投稿が時系列順に表示される。自分からわざわざ訪問する必要はなく、ただ画面を眺めているだけで、情報がひたすら流れ込んでくる。このユーザー体験の変化こそが革命だった。そこにはコンテンツの「底」がなく、さらに重要なコンテンツを優先的に表示することで、滞在時間が引き上げられていった。

タイムラインの発明は、投稿と投稿の間に、同じフォーマットで自然に広告を挟み込む「インフィード広告」を生み出した。タイムラインというUIの変化が、莫大な収益を生むSNSの広告ビジネスモデルを確立させた。

 

取るに足りないUGCの空間に過ぎないSNSに多くの人たちが引き寄せられ、タイムラインを無限にスクロールしている。その理由は、SNSの本質が「コンテンツ(情報)」と「コミュニケーション(つながり)」という、本来別々だった2つの要素を一体化させたことにある。SNSのコミュニケーションには「終わり」がない。