プアジャパン インフレ世界を生き抜く資本戦略

発刊
2026年6月16日
ページ数
256ページ
読了目安
367分
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インフレ社会を正しく認識し資産を守るための知識
資源価格の高騰、円安によってインフレが続く現在の経済状況を正しく理解し、インフレ世界ではどのように動かなければならないのかが、わかりやすく解説されている一冊。

30年のデフレを経て、インフレがやってきた日本の貧しい現状をデータをもとに紹介しながら、こうした新しい現実に対して、資産を守るためにやるべきことが書かれています。貧しくなっていく日本において、生き残るためには何をしなければならないのかを理解できます。

インフレ世界の到来

コロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻という「外圧」によって資源価格が上昇すると、円安もあって、日本の物価は上がり始め、2022年からは年率2〜3%のインフレが続いている。日本経済はデフレから脱却したが、物価の上昇に賃上げが追いつかず、名目賃金から物価の影響を除いた実質賃金が4年連続でマイナスになっている。

 

インフレによって、生活が苦しくなったことで、消費税廃止や軽減を求める声が広がり、ほとんどの政党が減税を掲げている。しかし、経済政策を論じる際の前提として誰もが受け入れなければならないのは、日本が先進国で最悪の1400兆円の財政赤字を抱えているだけでなく、団塊ジュニア世代が70代に達する2040年代まで高齢者の数が増え続け、年金や医療・介護費用が財政を圧迫することである。

こうした現実を直視するなら、日本の政治にできることはほとんどなく、どの政党が政権を担っても、ひたすらこの人口圧力を耐え忍ぶしかないことがわかる。国家に頼っているだけでは、これからの「インフレ世界」を生き延びることはできないのである。

 

プアジャパンの現実

年金などの再分配を除くと、日本では年間所得50万円未満の世帯が30.4%を占め、250万円以下の世帯が半数を占める。一方、所得1000万円以上の世帯は9.6%ある。つまり、日本社会はおよそ3世帯に1世帯の所得がほぼゼロ、10世帯に1世帯が年間所得1000万円超になる。

世帯単位で見た再分配前所得は、2021年423万円から2023年384万円へと9.1%も減っている。理由は高齢化によって労働市場から離脱する世帯が増えているからだろう。つまり、企業がいくら賃上げしても、日本全体の世帯所得は減っていくのである。推計では、人口に占める65歳以上の高齢化率は2070年まで上昇する。これから40年以上にわたって、労働市場から富を獲得できない人たちが増えていく。

 

再分配前の世帯所得384万円から税金48万円と社会保険料52万円を除くと、平均的な世帯の実質所得は283万円になる。それに対して、再分配所得は、年金・恩給116万円、医療介護43万円、その他24万円の合計184万円を受給していて、467万円になる。つまり、世帯平均では拠出額に対して82.3%多く受給している。この超過受給分は年金などの積立金の他、法人税や消費税、新規国債の発行など、他の財源で賄われている。

再分配は低所得者に手厚く、所得が高くなるほど少なくなる。高所得世帯から低所得世帯に富が再分配されることによって格差は縮小する。その効果はジニ係数によって示される。日本では再分配によって0.3825となり、これはアメリカ、イギリス、韓国などよりも低く、北欧諸国よりも高く、日本は経済格差が中くらいの国にあたる。

 

過去30年間、給与所得の中央値は9%も下落しており、一方で年率約0.5%の所得成長を実現してきた。これは家計が働き手を増やして補おうとした結果であり、共働き世帯は約4割から直近6割弱まで高まった。データからは日本では格差は拡大しておらず、みんなが平等に貧しくなっていると言える。

日本社会の最大の問題は高齢化と人口減で、これによって現役世代の家計は圧迫され、そのしわ寄せで最も弱い母子世帯が苦境に追いやられている。

 

逃げ場のないインフレという末路

日本のインフレは需要の過剰ではなく供給の制約である。原油などの資源価格が上昇し、円安で輸入価格がさらに上がり、そのうえ少子高齢化による人手不足で労働供給まで足りなくなったことで物価が上昇し始めた。供給能力を増やすのは簡単ではない。日本の最大の供給制約は人口減による人手不足と海外のエネルギー価格の上昇、および円安である。働き手不足を解消するには出生率を高めなくてはならず、仮に少子化対策が成功しても、生まれた子供が社会人になるまで20年かかる。

外国人労働者を増やすにも、選挙で各政党が「移民問題」「外国人のただ乗り」を唄っている現状では不可能だろう。エネルギー供給不足も同じで、グローバル市場の資源価格や為替市場の円相場を日本政府が変えることはできない。そのうえ電気使用量は、AIの開発などによって、将来的には現在の2倍になるとも言われている。

 

スタグフレーションは、景気が悪化して失業者が増え、それにも関わらず物価だけが上がる最悪の状態をいう。人手不足の日本は、失業率だけはずっと低いままである。そうなると、みんな一生懸命働いても物価の上昇に賃上げが追いつかず、生活は苦しくなる一方という社会が予想できる。

日本は人類史上、未曾有の超高齢化という構造的な問題を抱え、どの政権も「成長戦略」を掲げながら、成長できなかったという重い現実がある。そう考えれば、これから日本がスタグフレーションに向かうという可能性は決して低いものではない。