JOYSPAN 精神的寿命をのばす科学的方法

発刊
2026年5月20日
ページ数
448ページ
読了目安
562分
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老後の人生を豊かに過ごすために必要なこと
老年学の専門家が、健康で長生きだけでなく、精神的に喜びに満ちた老後を生きるために必要なことを紹介している一冊。
老いていくことに対して、不満と不安を抱えながら不幸な老後を生きる人と、老後も喜びに満ちて豊かに生きる人の違いがどこから来るのか。精神的に満たされた老後を過ごすためには、積極的に人生の質を高めるための行動が必要であるとし、その方法が書かれています。

喜びを感じながら長く生きる

長寿について考える時、私たちは「身体的寿命(生きた年数)」と「健康寿命(健康に生きた年数)」に注目することが多い。しかし、健康で長い人生も「喜び」が足りていないと虚しいものになってしまう。現代社会が求めているのは「ジョイスパン(喜びを感じて生きた年数)」と呼ぶ概念だ。

 

ジョイスパンとは、「ウェルビーイング」と「満足感」を経験しながら生きる期間のことだ。喜びを感じることは、「幸福」を感じることとは異なる。幸福感は極めて不安定で、大抵外的な要因に左右されるが、喜びは逆境の中でも感じることができる。強烈な快楽というよりは、静かに満たされるような感覚だ。

老齢期における「豊かさ」とは、年齢に伴う様々な困難を抱えながらも、自分の意思で行動し、手応えを感じ、満足しながら日々を過ごすことだ。そのためには、身体的、認知的、感情的な健康を最大限に高め、他者とのつながりや自分の存在意義を実感することが欠かせない。「豊かな老後」とは、健康上の問題や生活上の困難が全くない状態のことではない。むしろ困難の中で、レジリエンスや適応力、「人生に喜びや価値を見出す力」を発揮できる状態を意味する。

そういう老後を送っている人は、偶然そうなったわけではなく、積極的に人生の質を最大化している。

 

人生を豊かにする4つの要素

長いジョイスパンを楽しでいる人たちは、次の4つのことに積極的に取り組んでいる。これらは全て、ウェルビーイングに満ちた人生を送るために不可欠なもので、どの要素も意識的に伸ばすことができる。

 

①成長する:探究を続けて自分の世界を広げる

絶対にしてはいけないのは「成長を諦めること」だ。成長とは、探究し、学び、新しい経験を求める意欲のことで、ただ知識を増やすことではなく、新しい出会いや経験に対して「心を開く」ことだ。知的な体験、感情を刺激する体験に定期的に取り組む人は、抑うつや不安、認知機能の低下に悩まされることが少ないことが明らかになっている。

研究によれば、次の3つの要素が重要になる。

  1. 自己受容
    強みと弱みを含めた自分のあらゆる側面を、自己批判することなく認識し、受け入れる力のこと。自己需要を高めるためには「マインドフルネス」と「感謝の実践」がある。
  2. 好奇心
    新しい知識への欲求は、生涯を通じて重要な役割を果たす。好奇心を持つのに年齢は関係ない。知的成長は学校教育だけでなく、読書、他者への質問、新しい経験といったものからも生まれる。学ぶことは認知機能の低下を防ぐことに効果的だ。
  3. ユーモア
    ユーモアに満ちた人は、健康を保ち、問題にうまく対処し、積極的に新しいことに挑戦できる。ユーモアには不安と抑うつを減らし、レジリエンスを高める効果がある。

 

②つながる:新しい人間関係と既存の人間関係の両方を大切にする

つながりとは「他者との意味のある絆」のことであり、これは安心感、連帯感、帰属意識を感じられる関係から生まれる。他者との絆は、偶然生まれるものではなく、意識的につくり出し、育んでいくものだ。

良い人間関係は、ストレスを軽減し、免疫力を上げ、血圧を下げ、炎症を抑え、孤独や抑うつを防ぎ、認知機能を長期にわたって保つ。また、オキシトシンやエンドルフィンといったホルモンの分泌を促し、幸福感を高めてくれる。

新しい友人をつくる最良の方法の1つは、マイクロ・コネクション(小さなつながり)を積み重ねることだ。

 

③適応する:変化や困難に柔軟に対応する

これは、置かれた状況、心身の状態、周囲の環境の変化に合わせて自らを調整し、機能を維持していくことを意味する。変化に適応するには、柔軟性と創造性、学習力と行動力が必要になる。

歳を重ねると、退職、健康状態の悪化、大切な人との別れ、社会的な役割の変化などを経験することになる。そういう時に「適応」を選べば、新しい形で人生を楽しむ方法を見つけられる。重要なのは、歳をとることは大きな変化だという事実と向き合い、そこにある成長や喜びの機会を受け入れることだ。変化に対応する反応は、人生の満足度を決定づける。

 

④与える:自分が持っているものを分かち合う

「自分を与える」とは、時間、エネルギー、スキル、思いやりを他者に差し出し、つながりを築き、人生の目的を育むことだ。研究によると、継続的に他者に何かを与えている人は、ストレスレベルが低く、免疫機能が高く、長生きする傾向があるという。

近年の研究からは「他者を助けること」と「人生の意味を感じること」が強く結びついていることが裏付けられている。人生の目的がわからずに行き詰まっている人は、自分の外側に目を向けてみるといい。他者とのつながりの中に、その答えが見つかるかもしれない。

別に壮大なことを始める必要はない。日常の小さな行動によって、他者と自分のウェルビーイングに良い影響を与えられる。