人生の勝算

発刊
2017年6月30日
ページ数
248ページ
読了目安
243分
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コミュニティの形成に必要なものとは何か
ライブ配信サービス「SHOWROOM」創業者が、これからのビジネスにおいては、コミュニティの形成こそが大切だと説く一冊。

仮想ライブ空間サービス

SHOWROOMとは「仮想ライブ空間」というキャチコピーで知られる、2013年11月にスタートしたライブ配信サービスである。素人からプロまで、あらゆるジャンルにまたがる「配信者、演者」と呼ばれる放送主の方々が、まるで駅前で路上パフォーマンスをするかのように、インターネット上の無限に広がるライブ空間でパフォーマンスをしている。

同じメディアであるテレビとの違いを一言で表現するなら「メディアへの参加可能性」である。テレビは受け身視聴が基本の受動的なメディアと言える。一方、SHOWROOMは、能動的に仮想のライブ空間に「参加」することが前提になっている。視聴者は、そこでコンテンツを「見る」のではなく、そこに「居る」という感覚で、個性や人格を持って、演者とコミュニケーションを取る。その視聴者の個性を表現するために「アバター」と呼ばれるバーチャル上のキャラクターを使ってルームに入室する。このアバターを通じて、視聴者は、様々な自己表現や、演者に対するアピールをすることができる。また、SHOWROOMには「ギフティング」という、課金機能があり、演者のパフォーマンスに感動した際や応援のために、ギフトアイテムを投げ込むことができる。

コミュニティを生み出すことが重要

コミュニティの形成は、これから、どんな種類のビジネスにおいても、外せない鍵になる。理由は2つ。第一に、コミュニティには、現代人が価値を感じる要素が詰まっているからである。人は表層的なコンテンツ価値以上に、絆、すなわち、心への強い紐付きや、裏側にあるストーリーに価値を感じて消費する。第二に、絆やコミュニティ作りの成功において、先天的な要因はほとんど関係がないからである。コミュニティの成功に影響を与える最大変数は、後天的な努力の絶対量である。正しい方法論で、十分量のアクションを踏めば、誰もが良質な絆とコミュニティを生み出すことができて、その結果、現代に沿ったスタイルでビジネスを加速させることができる。

意識的か無意識的かは別として、ヒットしているものの多くにおいて、コミュニティが機能している。

コミュニティが深まる要素

コミュニティが形成される上で、5つのエッセンスがある。

①余白があること
余白とは、不完全であり、つい埋めたくなってしまう要素である。未完成な感じが逆に共感を誘い、仲間を作る。みんなで支えようという結束力が生まれ、コミュニティが強くなる。

②クローズドの空間で常連客ができること
空間をなるべく閉じられたものにすることによって、「俺たちだけの場所」といった具合に、常連客の所属欲求を掻立てる。

③仮想敵を作ること
仮想敵、すなわちライバルの存在が、それぞれのコミュニティの熱量を高める。仮想敵を倒すべく、常連客が結束する。一人のスターとファンの関係で完結するのではなく、ファン同士の横の連帯が生まれることで、コミュニティの繋がりはより強くなる。

④秘密やコンテクスト、共通言語を共有すること
自分たちだけしか知らないルールやコンテクスト、いわゆる「共通言語」が出来上がると、コミュニティはより強固になっていく。

⑤共通目的やベクトルを持つこと
一つの目的にそれぞれが向かっていくことで、絆が生まれる。

コミュニティ運営とは、1つの村を作るようなものである。もし村長やリーダーに頼りがいがなかったり、町に何か課題があったとしても(余白の存在)、ずっと同じ村に住み続ける同士として結束して助け合い(常連客の存在)、同じルールを共有して(共通言語の存在)、同じ的と戦う(仮想敵・共通目的の存在)。村という小さなサイズだからこそ、結束が求められるのであって、大都市ではこうはいかない。まず、永続する「村」を作るという発想が、あらゆるサービス、あらゆるコンテンツを世に出していく上で重要になる。

SHOWROOMも、このコミュニティの力学を最大限活用し、今までになかったエンターテインメントを作り上げている。