「食」から考える発想のヒント やる気を引き出しチーム力を高める

発刊
2018年4月27日
ページ数
240ページ
読了目安
306分
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独自の発想をするためのヒント
ミシュランの星付きフランス料理店のオーナーシェフが、料理を通じて、新しい発想を生み出すためのヒントを紹介している一冊。

独自性を磨け

瞬時の的確な情報処理は、現代を生きる人間にとって必須の能力である。情報の活かし方はわかっていても、必要な情報を手に入れることが困難だった時代は終わり、必要な情報を探すのは簡単でも、その情報をどう編集処理して活かすかが困難になってきた時代、それが現代である。

そんな中では、民主的にアクセスできる情報を掘り下げて、独自に編集処理した非民主的な、自分だけを持つしかない。誰もが知りうる情報を編集処理したオリジナルの視点に立つことこそが、自分に必要な知識を呼び込む支点となり、他の誰でもない自身の志点を形作る。

コピー&ペーストを常態化した「人材」なら、換えはいくらでもある。そんな状況を変えていくには、まず個人事業主の意識を持って、希望する道を行く先達の話を聞いてみたり、周辺の本を深く読み込んで、自分なりに情報を活かせるよう工夫するしかない。そうした編集処理が、一緒に働きたいと思わせる「独自性」を形作る。

失敗を失敗と捉えない

「独自性」を手に入れるには、まず自分なりの情報処理能力を身につけること。自分なりの物差しを持って、普段から世の中と向き合えば、いろんな疑問を抱く。それを自分で掘り下げるクセをつけることで、独自の情報処理能力は自然と形作られる。

独自の物差しがあると、自分にとって必要な情報をキュレーションできるようになる。情報は随時入ってくる。しかし、独自の物差しを持っていなければ、より価値のある情報をキュレーションすることは難しいし、編集処理の質もそれだけ変わってくる。独自に編集処理した情報を持っていれば、その場に一番ふさわしい受け答えや態度をとることができる。それは、ある出来事が起こった時、とっさに修正が利く発想に繋がるからである。何か失敗があった時に、そのままで終わらせないで、それを活かすことができるようになる。

失敗を失敗と捉えない。ダメをダメのまま終わらせることが、一番ダメ。失敗を失敗で終わらせず、修正して経験を積み重ねることで、発想力は身につく。

「クリエーション・イノベーション・リノベーション」の法則

南仏のニースに店を出し、それを持続可能なものにするためには、南仏の自然から創造された郷土料理の数々を、現代に通じるような編集処理して新しく発想し、常に原点へ戻って改修することが欠かせない。

料理の「クリエーション」は、南仏の自然がもたらした食材の集まる、市場というカオスが生み出す。市場には毎朝、新鮮で豊かな食材が並び、そこへ通い続けることで、そのカオスの中から何をキュレーションするか、独自に編集処理能力が磨かれていく。

南仏の歴史と伝統が育んできた郷土料理のレシピは、それ自体がすでに創造された、地元で生きていくための知恵である。その日に手に入った食材から、郷土料理のレシピ通りに調理してみることは、先人の「クリエーション」を学ぶ貴重な経験である。

その一方で、郷土料理のレシピを基本コンセプトとして、常に新しい調理法を発想し、現代にふさわしいシンプルな一皿にアレンジするのも、欠かすことができない。それが料理の「イノベーション」である。

次に、常に原点に戻って改修する。その土地に深く刻まれた伝統を重んじ、一般からのレシピ情報をそのままにするのではなく、料理の基本コンセプトにもとっていたら正す。「クリエーション・イノベーション・リノベーション」の法則とは、過去から現代を経て、未来へ伝統を受け継いでいく大切な方法論である。