時間と空間は密接に結びついている
かつてアインシュタインに数学を教えたヘルマン・ミンコフスキーは、「時間と空間は密接に絡み合い、宇宙全体に広がる一枚の織物を形づくっている」と主張した。この織物こそが、宇宙のあらゆる事象の舞台となる。彼はこの織物を「時空」と名付けた。
1915年、アインシュタインは一般相対性理論を発表した。問題の核心は、重力をどう捉えるかだった。ニュートンが重力を「力」と解釈した一方、アインシュタインは引きつける力など存在しないと主張した。彼の考えでは、重力とは時空が湾曲することから生じる現象だった。
この概念を思い描くのに役立つ、よく使われる例えがある。ベッドシーツの四隅をしっかり握り、これを時空の織物に見立てる。シーツの中央に太陽を表すボーリングの球を置くと、その重みでシーツの中央が沈み込む。ここにテニスボールを加え、へこみの縁に沿って転がすと、ちょうど地球が太陽を周回するように、テニスボールはボーリング球の周りを巡る。小さい球は大きい球に引き寄せられているのではなく、大きい球が作ったシーツの湾曲に沿って進んでいるだけだ。アインシュタインは、重力とはこのように作用するものと考えた。
アインシュタインの発表から1世紀の間、物理学者や天文学者は、彼の主張を検証するための証拠を探し続けてきた。アインシュタインの理論に基づく予想は、「重力レンズ効果」「重力波」「ブラックホール」など続々と得られた証拠と完全に一致している。私たちは、時空という概念、そして時空が折り曲げられ、形づくられ、ゆがめられることがあり得るという考えの正しさを、かつてないほど確信できるようになった。時間と空間は密接に結びついており、一方に作用するものは他方に作用する。空間を曲げることができるなら、時間を曲げることもできる。この事から、空間だけでなく時間の中も移動できるという、可能性の扉が開く。
ブラックホールの中心で時間は止まるのか
一般相対性理論によれば、狭い領域に質量が集中すればするほど、時空の湾曲が増大する。ブラックホールの特異点では、時空が折り畳まれるようにして、無限小の点となり、時間と空間という通常の概念は意味を失う。
特異点というアイデアを認めない物理学者も多い。彼らは、こうした微小なスケールにおいて破綻するのは時間や空間ではなく、一般相対性理論そのものだと主張する。問題の一部は、原理や素粒子を支配する法則である量子物理学への言及がないという点だ。最初は恒星サイズだった物質が、最終的には原子よりも小さな領域に押し込まれるブラックホールの中心で何が起きるのかを理解するには、2つの理論を「量子重力理論」として1つにまとめる必要がある。
数多くの物理学者がこの方程式を統一しようと試みてきたが、成果は出ていない。この対立の核心にあるのは、時空の滑らかさをめぐる根本的な見解の相違だ。一般相対性理論は、ひとつながりの滑らかな時空の織物を前提とする。一方、量子物理学では、あらゆるものが粒状の塊だとされる。
これらの理論を結びつける方法はいくつも存在する。しかし、そのためには物理学者が何かを追加せざるを得ない。例えば「ひも理論」は、私たちが経験する空間の三次元と時間の一次元に加えて、さらに最大で7つの次元が存在すると仮定している。私たちがそれらの次元に気付かないのは、それらが小さく折りたたまれているせいで観測できないからだと説明されている。
競合する理論の1つである「ループ量子重力理論」によれば、時空は滑らかな1枚の織物とは程遠く、量子の世界におけるあらゆるものと同じく粒状の塊からなるとされる。最小スケールの時空を拡大して観察できたら、時空も一連の「縫い目」のようなもので構成されているとする。
問題は、理論へのこうした追加が現実の宇宙に本当に存在することを示す決定的な証拠が得られていないことだ。量子重力理論を確立できない限り、ブラックホールの内部で本当に時間が止まるかどうかを断言することはできない。
時間は幻想なのか
アインシュタインの理論は宇宙が時空からなる巨大な1つの塊であることを示している。現時点で最良とされる理論によれば、すべての空間と時間はビックバンで一度に生成された。これ以上、時空を生み出せる事象は存在しない。つまり、「明日はまだ存在していない」ということはあり得ない。同様に過去が消え去ることもあり得ない。
このように考えると、過去、現在、未来はすべて同時に存在していることになる。「現在」だけが現実だという私たちの思い込みは間違っている。この考え方は「ブロック宇宙論」と呼ばれる。すべての物理学者がブロック宇宙論的な時間の解釈を支持しているわけではないが、現時点で最も広く支持されている説である。