高度経済期を迎えるインド
インドの人口は中国を抜いて世界1位14億6400万人。平均年齢は中国39歳に対して約28歳。GDPでは世界5位であり、今後も年率6%成長を続け、2026年には日本、2030年までにドイツを抜いて世界3位に躍り出ると言われている。
急激な経済発展と都市の拡大が続くインドは、ユニークな側面がある。
- 中国のように世界の工場となって、輸出モデルで発展しているのではなく、内需が極めて大きい
- 第二次世界大戦前からの巨大な財閥が多数存在し、インド経済を牽引している
- スタートアップ企業の勢いがあり、2024年の新規上場企業数は世界トップ
- 人々の間で経済格差が極めて激しい
- 人口が多いため、日本以上の数の富裕層が存在する
インドは、既に世界一の人口を持ち、経済規模でも日本を抜いて、高度経済期を迎えようとしている。
成長地域は東アジアからシフトする
インドの国土は日本の約8.8倍で、15億人が暮らしている。人口400万人以上の都市が8つ、100万人以上は約60存在し、特に都市部は混んでいる。最大都市デリーの人口密度は、東京の約2.4倍。基本は大家族で暮らしている。平均年齢は28歳で、若い人がたくさんいる。中国の労働人口が2025年に減少に転じる一方、インドの労働人口は2050年まで増加し続ける。これは経済成長を牽引してきた東アジアから、半世紀ぶりに成長地域がシフトする転換点と言える。
近年では、アメリカを中心にビジネスの世界で活躍するインド人が次々に出てきており、Google、Microsoft、IBMなどのテック企業でも、インド系のCEOが就任している。インド国内にはかつて優秀な子供たちが就職する場が少なかったため、海外を目指す道筋として、インド最難関のインド工科大学が作られた。今ではインド各地に23校ほどあり、英才教育を受け、グローバル企業に就職し、猛烈に働く。
インドのGDP成長率は全体で6〜7%、都市部では10%以上の成長が始まっている。特に人口1000万人以上の6つの都市が急成長しており、1人当たりGDPが5000ドルを超える規模になっている。これは、1970年代後半の日本、2000年代の中国と同程度である。
インド経済発展の背景
インドの経済発展のユニークな点は、加工貿易などの輸出で成長とドライブした訳ではないこと。外貨を稼ぐたけの礎となったのがITである。英語ができること、人件費が安いこと、高度な理工系人材がいたことを武器に、世界のITオフショア拠点という巨大産業を国内に作った。インドが外国からの投資による輸出型モデルを取り入れなかった背景には、イギリス植民地時代があり、インドは独立後に国内産業を保護する政策にこだわった。
転機となったのは、2014年、現在の与党であるインド人民党が勝利し、モディ首相が誕生したことだった。政権交代を機に、外資への規制を緩和するなどの大胆な改革が行われた。もう1つのインド経済活性化の起爆剤は、世界に3500万人を超えると言われるインド系海外移民の印僑である。彼らが海外で稼いだお金をインドに送金したことが、内需拡大に大きく寄与した。
中でもインドで生まれ、国内で教育を受け、インド工科大学をはじめとした難関大学を卒業した優秀な人材は、多くがグローバルテック企業に就職し、ITトップにまで昇り詰めるような人材が輩出され始めた。アメリカの人口全体では1%のインド系の人々がシリコンバレーの労働人口の約8%を占めるとも言われている。
2017年から始まった第1次トランプ政権によるビザの厳格化によって、こうした優秀な人材がインドに戻り、スタートアップブーム、上場ブームを生み出し、インドの内需拡大を推し進めていくことになった。
インド進出ブーム
日本企業の第1次インド進出ブームは1980〜1990年代にかけて起こったが、当時は外資による投資が規制されていた。2000年代後半から、少しずつ日本企業の進出が戻り始め、プチブームとなった。2010年代半ばからモディ政権のもと規制緩和が進み、かなり外資にもオープンになってきている。
2020年代に入り、日本企業の第3次インド進出ブームになっている。中国は経済も良くないし、人口も減っていて、米中対立のリスクもある。残っているのはインドとアフリカである。
2024年、インドの現地日系法人数は約1400社となっている。東南アジアへの進出企業数に迫っているが、中国進出企業数の約12700社に比べると、その規模はまだ1/9である。
日本企業がインドでチャンスを掴むための有力な手段がM&Aや資本参加を伴う事業提携である。インドではほとんどの業種で、既に有力なローカル企業が存在しているため、M&Aをした方が早いのである。実際にインドのM&Aは大きく増えており、件数、金額ともに過去最高を記録している。