挫折をポジティブに捉える
挫折経験や苦労話は、一歩間違えると武勇伝や不幸マウントになるし、「最近の若者は辛抱が足りん」という話につながる。理不尽に人を追い詰める道具にもなる。
挫折体験は大別すると2パターンに分かれる。1パターン目が自己成長と捉えるパターンで、「挫折経験は生きていく上で必要で糧になる」と解釈する。こちらの解釈をした場合、他者の悲しみを理解できるようになり、他人への配慮ができるようになる。また、「あの時の困難を乗り越えてきた自分なら大丈夫」と学習して、苦境耐性をつける。
2パターン目が、挫折経験をダメージと捉えるパターンで、自分は他人よりも劣っている、自分は何をやってもダメだと解釈してしまい、「人を信用してはいけない」という思考に陥る。挫折経験をダメージと捉えた場合、他者を軽視することによって自分の有能感を満たすという「仮想的有能感」を持ちやすくなる。これはSNSの誹謗中傷を説明できる概念である。自分を上げるよりも、人を下げる方が手っ取り早い。
挫折体験をどのように解釈するかは、挫折した時に助けてくれた「恩師」がいたかどうかで変わってくる。他人からの助言も励ましもなく、「誰も助けてくれなかった」と感じた場合、自分が傷つかないように他人と距離を取るようになる。
闇堕ちしそうになったら、誰かの「おかげ」を思い出すといい。ポジティブな人というのは、過去に感謝できる人、今自分にあるものに対して「ありがとうございます」と思える人である。
現状維持バイアスを打破する
後悔には「行為後悔」と「不行為後悔」の2種類がある。行為後悔は「愚かなことをしてしまったな」という後悔で、不行為後悔は「やった方がいいことをしなかった」という後悔のこと。
『死ぬときに後悔すること25』という本の中で、1000人を超える末期患者が吐露した後悔が25項目に集約されているが、そのほとんどが不行為後悔である。「◯◯をしなかったこと」で人間は後悔している。不行為後悔の方が公開として残りやすい。その理由は次の2つ。
- ツァイガルニク効果:人は完了した課題はすぐに忘れるが、未完了な課題はよく記憶する
- 心理的免疫システム:辛いことを覚えておくと辛いから、脳が良い経験だったと正当化したり、忘れようとする
この不行為後悔を活用すると、現状維持バイアスを打破できる。「死ぬ時に後悔しそうなこと」を考えると一念発起して行動できる。現状維持バイアスを打破する方法は次の2つ。
- 後悔最小化戦略:長期的に後悔しないことを選ぶ
- 保有効果を倒す:自分の今持っているものを過大評価する傾向を「今持っているものは取るに足りない」と思う
「保有効果」と「不行為後悔」を考え直すことが大切である。
理不尽を乗り越える
ニーチェの「永劫回帰」は「この人生が何回も繰り返される」という思想のこと。ニーチェは「苦痛も失敗も屈辱も含めた人生のすべてを永遠に繰り返すとしても、それでもこの人生を肯定できるか」ということを問うている。
そして、何回同じ人生を繰り返したとしても「このために生きていたんだ」と思えるなら、それは真に肯定された人生だという積極的な肯定がニーチェの「運命愛」という概念である。単に受け入れるだけではなく、「この運命を愛している」と言えるレベルまで高めるのが運命愛である。だからこそ、理不尽を糧にしようという考え方は大事である。
最近の若者がなぜ将来に希望を持てないのかという研究があって、調査では自分の人生を自分で決められる、自分の努力で人生を変えられるという感覚が、日本の若者は他国に比べて低い可能性が示されている。自分の努力よりも生まれた環境が人生を左右するという意識が広がり、虚無感に陥りやすいのかもしれない。
しかし、理不尽は理不尽だが、それによって解決不可能と考えるのは良くない。理論というレンズで捉えれば、理不尽を解決可能な形にできる。「世の中は理不尽である」ということは現実として受け入れつつも、自分の力でその理不尽の壁を掘削すること自体は忘れない方がいい。選ばれたカードで勝負するしかないが、まずは自分が持っているカードの魅力に気づくことが大事である。そうすれば、理不尽の見え方も、乗り越え方も変わってくる。