オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書

発刊
2026年4月16日
ページ数
240ページ
読了目安
259分
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長期投資の本質
世界の株式に分散投資するインデックスファンド「オルカン」の生みの親である著者が、世界経済の成長を資産形成の手段として用いるメリットや、ファンドのコンセプトを解説している一冊。

多くの国で、インデックスファンドによる資産運用が増えている現状などを紹介しながら、長期投資の本質とは何か、資産運用にあたっての注意点とは何かが書かれています。
2018年に設定されて以降、すでに10兆円の純資産残高を超えて人気となった「オルカン」のことをよく理解できる内容になっています。

増えにくい形で資産を持ち続ける日本人

企業の成長が株価を通じて家計の資産に反映されることは、ごく自然な社会の循環として受け入れられている。資本主義がもたらす豊かさは、一部の資産家だけが独占するものではなく、広く一般の家庭の将来を支え、老後の安心や子供たちの教育を支えるインフラとして機能してきた。

しかし日本では、個人の努力は主に「労働」と「貯蓄」に向けられ、資本の成長はどこか遠い世界の出来事として扱われてきた。投資は不安定で、難しく、特別な人だけが行うものという認識が長く社会に根付いていた。

 

日本では個人金融資産が2000兆円を超え、「お金は十分にあるのに、うまく使われていない」という印象があるが、問題は使う余裕が生まれるほどに、資産が増えてこなかったことにある。1995〜2016年の20年間に各国の家計金融資産がどれだけ増えたか比較したデータでは、米国は約3.3倍、英国は約2.5倍に増えているのに対し、日本は約1.5倍にとどまっている。日本人の問題は、貯めすぎていることではなく、増えにくい形で資産を持ち続けていたことにある。

家計金融資産の構成比でも、日本は現金・預金が51.7%を占め、株式・投資信託は間接保有を含めても18.6%に過ぎない。一方、米国では現金・預金が13.7%、株式・投資信託が46.2%を占める。自分のお金を、どの程度「経済の成長」というリスク資産に委ねてきたかという、積み重ねの差が20年後の資産規模の差として現れている。

 

オルカンとは

投資を限られた人だけの特権にしておくのは、もったいない。世界経済の成長を自分の味方にできるような仕組みがあれば、人生の選択肢は広がるはずだという思いが、低コストのインデックスファンド「eMAXIS」シリーズ誕生の原点だった。この理念をさらに研ぎ澄ませた形として誕生したのが「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」である。

たった1つのファンドで、米国のテクノロジー企業から新興国の成長企業まで、世界中の株式市場に分散投資でき、しかも業界最低水準の運用コストを目指し、長期投資に適した形を追求した。オルカンは2018年に設定後、8年足らずで純資産残高が10兆円に達した。

 

こうして多くの方に受け入れられるようになった背景には、スマホやネット証券の普及により投資のハードルが格段に下がり、投資が「特別な行為」ではなく「人生の選択肢の1つ」として生活に取り入れやすくなったという環境の変化がある。さらに2024年に始まった新NISAは、こうした流れを後押しした。

 

長期投資のすすめ

投資とは、将来の成長を期待して「不確実性を引き受ける行為」であり、あらかじめ特定の金額に到達することを約束してくれるものではない。結果としてどこまで増えるかは、市場が決める。その不確実性を受け入れた上で時間を味方につけることこそが、投資運用の本質だと言える。

目標額だけを固定してしまうと、リターンのブレに一喜一憂しやすくなり、投資行為そのものが不安定になる。重要なのは、長期・分散で市場に居続けること、そして無理なく続けられる積立額を設定することである。過去のデータでは、20年程度の保有期間を取るとマイナスになりにくい傾向がある。そのため、長期投資の期間は20年が目安と言われる。

 

「市場が好調の時だけ市場に入ればいい」「暴落時に逃げて、回復を待てばいい」といったタイミング重視の戦略は、実際には成果を出すことが難しい投資手法である。従って、短期的な値動きを予測しようとするより「市場に居続ける」ことを重視すべきである。

長期投資で大切なのは、途中でやめずに積み立てを続けることである。これは相場が下がった時に積み立てをやめてしまうと、せっかくの安く買える時期を逃してしまうためである。毎月一定額を投資する定額積み立てであれば、相場の上下に関わらず着実に投資を続けられ、長期的な成果につながる。

 

長期投資とは、単に我慢して持ち続けるということではなく「世界の企業と共に歩む」ということに他ならない。世界中の企業は、日々価値を生み出すために努力し続けている。オルカンを通じて世界中の企業の成長に参加するということは、世界経済と一緒に自分の人生を歩むことである。

さらに長期投資の最大のメリットが複利効果である。複利効果とは、運用によって得た利益を再投資することで、元本に組み込み、さらに利益を生み出す仕組みである。短期的な値動きに振り回されず、世界経済の成長を味方につけながら、複利の力で資産を着実に増やしていくことが、長期投資の本質である。