顧客基点経営とは
DX本来の目的は真の顧客基点経営の実現にある。「顧客基点経営」とは、顧客体験を基点としその実現に向けて企業の戦略・提案・デジタル基盤・組織を一体的に設計・運用する経営様式である。デジタル化に伴う顧客の変化に対して、企業は自己の経営をデジタル技術で強化することを目指して、顧客を動かそうとするのではなく、顧客にとって価値ある新たな顧客体験を見据えて自己の経営様式を変革しなければならない。
顧客基点経営は、「CCM Map」によって全体構造とつながりが可視化される。CCM Mapでは、中央に「顧客体験」が置かれ、その周囲に連携する8つの領域が位置づけられる。CXのすぐ上には顧客価値が位置し、さらに同じレイヤーに顧客戦略・顧客提案・顧客理解という、CXを実現するための直接的な設計領域が位置する。その外側には、事業目的・事業目標・事業成果・事業組織という、これらの設計領域を方向づけるマネジメント領域が位置する。
各領域は「価値のライン」と「数値のライン」という2つの軸を介して相互に作用している。
- 価値のライン:事業目的→顧客価値→顧客体験→顧客理解→事業組織
- 数値のライン:事業目標→顧客戦略→顧客体験→顧客提案→事業成果
顧客体験は、価値のラインと数値のラインが交差する位置にあり、その双方を実現する役割を持つ。これら9つの領域は「顧客基点経営への9つの問い」に対応しており、顧客基点経営を実践するための必須の要素になっている。
顧客基点経営の9つの要素
①事業目的:社会にどのように貢献するのか
自社と顧客を取り巻く社会はどのように変化していて、その中で顧客の価値観はどのように変わっていくだろうか。それらに対する解釈があってこそ、企業は「顧客のより良い生活とは何か」を思い描くことができる。
事業目的を見定めるための最も分かりやすい方法は「既にある言葉の意味を見直すこと」と「自社が行った行動の意味を見直すこと」である。
②事業目標:いつまでにどのような状態を達成するのか
事業目標が明確でなければ、顧客戦略においてどの顧客層をどのくらい動かすのかが決められない。顧客基点経営が実践されている企業においては、事業目標を次の2つの面から明確に示してる共通点がある。
- 戦略的意図が明示されている
- 数値的意図が明示されている
③顧客価値:顧客にどのような「より良い生活」を実現するのか
顧客価値は自己変革の具体的な内容を決める領域であり、これがなければ目指す顧客体験を描けない。顧客価値とは、顧客にとっての価値であって、現在の自社の提供価値だとは限らない。顧客にとっての価値は単なる機能的価値だけでなく、体験的価値・つながっている価値までを含む。これらが総体として顧客のより良い生活を実現する。
④顧客戦略:いつまでにどのような顧客基盤を実現するのか
顧客戦略は「事業目標」を具体的に描き出し、同時に「顧客価値」と共に目指す「顧客体験」を方向づける。
⑤顧客体験:どのような体験を通して「より良い生活」を実現するのか
顧客体験は、顧客価値を体現し、顧客戦略を実装する結節点になる。顧客体験は経営が目指す価値と数値を同時に可視化する実装領域であり、ここにビジネスの現場が存在する。だからこそ経営と現場が日頃から目指す顧客体験を見極め共有し、その実現に向けて各領域を連携させていく必要がある。
優れた顧客体験を描くとは、顧客にとっての「より良い生活」を思い描き、「OMO化する接点」を前提とした「選択・購入から使用までを含んだ総体的な時間」をデザインすることである。
⑥顧客理解:どのような仕組みで顧客を理解するのか
顧客データを蓄積するだけでは、そこからは何の解釈も行動も生まれ得ない。目指す「顧客価値」が「顧客体験」において実現されているかを理解することが大前提であり、そこに「顧客戦略」で設定された顧客層を掛け合わせることによって解釈を深め、「顧客提案」という行動の質向上に活かすことが必要になる。
⑦顧客提案:これらを活用して顧客にどのような提案を行うのか
顧客基点経営における「顧客提案」は、顧客体験を通じて得られるデータを用い、3P(Product・Price・Promotion)を可変的に組み合わせる提案モデルを設計・運用するという発想に立つ。デジタル時代においては顧客との関係性の中で揺らぎながら形を変える3Pをどう組み立てるがが、核心となる。
⑧事業成果:これらの成果をどのような指標で測るのか
事業目標で設定した数値的意図を受けて、その達成を確認し、事業組織に共有し、全社的な改善・強化を検討する指標になる。
⑨事業組織:これらを運用するためにどのような組織を創るのか
顧客を基点に設計された戦略や価値を実行可能にするのは、最終的に組織のあり方によって決まる。