訪日外国人数は伸びているが
日本を訪れる外国人観光客は増加の一途をたどり、2011年からの6年間で約5倍の2869万人となり、2020年には4000万人に達するとされている。人口減少・少子高齢社会の日本にあって、2020年の東京オリンピック・パラリンピック後も見据えた持続的な経済成長を実現していくためには、こうした訪日客のニーズなどにしっかりと対応し、地域の光となる観光資源などを磨きながら、これからの社会や経済を担う人材や企業、豊富な資金を、世界中から呼び込む視点が欠かせない。
訪日外国人旅行者全体の支出総額は、旅行者数が大幅に増えたことで、2015年3.48兆円から2017年4.42兆円へと伸びている。しかし、旅行者一人あたりの旅行支出は、2015年17万6000円をピークにして、2017年15万4000円に減少した。滞在中の消費を拡大させるためには何が足りないのかを私たちは議論する必要がある。
超富裕層向けの施策が不十分
日本では、超富裕層が求める水準を満たすレジデンスや宿泊施設、移動手段などが極めて限られ、外国語対応などの外国人受け入れ環境の課題と相まって、グローバル市場におけるビジネス拠点や余暇の滞在先としての魅力を十分に発揮できず、世界の超富裕層から期待できる豊富な投資や消費の機会を逸しているのが現状である。
一般的には、100万ドル以上の投資ができる資産を所有する世帯が富裕層と定義され、3000万ドル以上の投資ができる資産を所有する世帯が超富裕層とされる。世界の人口の1%の最富裕層は、残り99%の合計と同等以上の資産を保有している。経済成長を実現するために豊富な資金を呼び込むという観点で考えた時、1%の最富裕層をターゲットとする戦略の効果は高い。
超富裕層が求めるもの
超富裕層を呼び込むためには、彼らの滞在施設や移動手段に、十分な広さと洗練されたデザイン、ゆっくりと価値のある時間を過ごせる環境、他と差別化されたサービスが求められる。また、プライベートな空間が保たれていること、セキュリティが整っていることは必須である。
①滞在施設
高級ホテルやレジデンスについて、日本は出遅れている。モナコの最高級レジデンスの分譲価格は約470億円、ニューヨークは約120億円、香港は約92億円、シンガポールは約55億円。日本での最高価格は15億円である。
②移動手段
プライベートジェット機の保有数は、米国13133機に対し、日本は85機。着陸回数についても、桁違いに遅れている。プライベートジェットで日本に降り立った超富裕層が国内の目的地まで、引き続きプライベートを確保して、待ち時間なく移動できるかどうかがポイントとなる。
③サービス
超富裕層は特別扱いが当たり前なので、画一的な対応では満足を得られるのは難しい。個別のオーダーに臨機応変に対応することが重要である。
極みプロジェクトの課題
極みプロジェクトは、超富裕層を対象としたラグジュアリー・レジデンスなどを整備し、世界の人々や豊富な資金を呼び込むものである。その推進には以下の課題を克服する必要がある。
①超富裕層向け不動産マーケットの不足
需要サイドと供給サイドをつなぐ専門仲介業者が不足している。また、都市部は過密状態で、まとまった土地を確保することが難しく、不動産開発が困難である。
②交通インフラが不十分
ビジネスジェットの発着枠の不足、入出港に係る諸手続きが煩雑、国内移動にストレスが多いなどの問題がある。
③超富裕層向けサービスを担う人材が不十分
超富裕層の消費行動・思考までも理解し、滞在中の生活をアテンドできる人材が不足している。