謙虚なリーダーシップ――1人のリーダーに依存しない組織をつくる

発刊
2020年4月22日
ページ数
240ページ
読了目安
334分
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推薦者

これからの組織が成果をあげるために必要なこと
変化の激しい時代には、これまでのように業務上の役割に従って決められた人間関係だけでは、組織は機能しない。上司や部下がより個人的に信頼し合う関係を構築することが、組織が成果をあげるための鍵だとし、組織内の人間関係を進化させることの必要性を説いています。

リーダーシップとは

リーダーシップとは、新たな、より良いことをしたいと思い、それを他の人たちに一緒にしてもらうことである。リーダーシップとは、関係性に他ならない。そして、真に成功しているリーダーシップは、極めて率直に話をし、心から信頼し合うグループの文化の中で成果をあげている。リーダーシップと文化はいわば表裏一体であり、文化はまぎれもなく、1つのグループの現象である。

 

20世紀の伝統的な経営文化は、決められた役割と役割の間にできる、単なる業務上の一連の関係と言える。そのような関係では、率直に話すことも信頼し合うこともあまりできない状態が意図せず生み出され、それゆえ、本当に効果的なリーダーシップを実践するのが困難になってしまう。

 

関係のレベル

人との関係には、次の4つのレベルがある。

 

レベル−1:全く人間味のない、支配と強制の関係

レベル1:単なる業務上の役割や規則に基づいて監督・管理したり、サービスを提供したりする関係

レベル2:友人同士や有能なチームに見られるような、個人的で、互いに助け合い、信頼し合う関係

レベル3:感情的に親密で、互いに相手に尽くす関係

 

日常生活では、相手とどのレベルの関係になるかを決めるための考え方とスキルを、私たちは既に持っている。だが、作業グループや上下関係にある人との間で、どのレベルの関係になるのが適切かを、じっくり考えることは少ない。

 

謙虚なリーダーシップはレベル2の関係が基盤になる

組織がもっと成果をあげられるようにする、つまり「組織文化の変革」や「トランスフォーメーション」と言われるものを導くためには、自然に生まれるリーダーと、変革を実行することになる組織のフォロワーとの関係が、もっと個人的で協力的なレベル2になる必要がある。

文化的トランスフォーメーションを促進し、VUCAの時代に不可欠な革新力を高めるには、レベル2の個人的で率直に話し信頼し合う関係を、作業グループの至るところで育てる必要がある。職場でのこのようなつながりは、課題の性質によって、様々な程度のレベル3の親密な関係へ変わることがある。

 

レベル2の関係では、「あなたの感情や経験を、あなたの立場に立って理解している」と伝えることになる。これは必ずしも「あなたが好きだ」とか「友達になりたい」という意味である訳ではなく、「あなたの存在を余さず意識している」ということを、言葉や態度、ボディランゲージによって知らせることである。

 

謙虚なリーダーシップの基盤は、レベル2の個人的な関係である。この関係は、率直に話し、信頼し合うことが土台になり、その状態を促進する。作業グループの関係がまだレベル2になっていないなら、自然に生まれる謙虚なリーダーはまず、作業グループの中で、信頼を確立し、率直な発言を促す必要がある。

レベル2の関係をつくって維持するプロセスには、学習するマインドセットと、進んで協力する姿勢と、対人およびグループ・ダイナミクスのスキルが不可欠である。

 

一個人として相手を見る

レベル2の関係で何より重要なのは、相手と「役割」ではなく、「一人の人間」として見て、共通の目標や経験に基づき、より個人的なつながりをつくることだ。レベル2のつながりには、あらゆる形の友情や近しい関係が含まれる。関係をレベル2へ深めることは、「互いに信頼し合って、一層良い仕事をするために、あなたについてもっとよく知りたい」と思っていることを、言葉と行動で表すことだ。親しくなって、互いの私生活を事細かに知る必要はない。ただ、仕事の問題については、率直かつ正直に話せるようになる必要がある。

 

仕事上のレベル2の関係は、上司や部下がそうありたいと望んだからといって、それだけで自動的に生まれる訳ではない。「相手を一人の人間として見る」努力をしながら交流を重ね、加減を測り、反応し、やがてレベル2のつながりをつくれたり、つくれなかったりして、徐々につくられていく。