企業を変革するための8つの要素
日本企業は致命的な危機に陥ると大胆に変化を遂げ、強さを発揮する。しかし、そこまでの危機に至っていない場合、もしくはV字回復後には変わることができず、停滞したり、衰退したりしてしまう。一方、高成長を遂げている企業が、高成長を持続できているのは、危機に陥った際に緊急事態として実行するような大改革を、平時から成し遂げているからではないか。
「平時を有事にする」ための理論に通じるものに、リーダーシップや変革の研究の第一人者ジョン・コッターが提唱した「8つのアクセラレータ」がある。
- 切迫感を生み出す
- 変革主導チームを築く
- 戦略的ビジョンと変革施策を策定する
- 変革の支持者を増やす
- 障害を取り除き、行動を可能にする
- 短期的な成功を創造する
- 加速を維持する
- 変革を定着させる
変化のペースが速く、絶え間なく革新を必要とする現代において、コッターは8つの要素を同時にかつ継続的に実行することを想定している。日本企業の現場においては、これらが十分に機能しておらず、依然として変革を起こせず、緩慢な衰退の状態にある。
高成長体質の5つの核心
高成長を持続するには、何らかの経営の仕組みを採用すれば済むものではなく、物の見方、考え方、行動習慣のような「体質」から変えなければならない。緩慢な衰退に陥っている日本企業が「高成長体質」の企業へと転換するためには、大きく5つのアプローチ「5つの核心」が必要である。
①必要なのは危機感ではなく狂気
切迫感は企業変革には欠かせない要素だ。この切迫感を生む要素の1つが危機感だが、平時に危機感を醸成するのは難しい。ならば、あえて平時を有事にすればいい。有事を作り上げる出発点となるのが、組織に狂気を帯させることである。
②変化を目的にする
企業を取り巻く環境が刻々と変化する中で、現状維持を続けることは衰退を意味する。常に自らが「変化すること」を意識していおく必要がる。ゴールを定め、そこに向かって変化していくのではなく、変化すること自体を目的にする。変化を全肯定することで、組織は進化に向かう。
③スピードが変化を生む
変化を生むための重要な要素がスピードである。スピードを大幅に上げるように要求された人や組織は、それに応えるために仕組みや手法、手続きを変えていく。結果的に、より強固で高パフォーマンスを発揮できる態勢ができあがる。スピードは組織の粗もあぶり出す。進行を妨げるボトルネックがどこにあるのかが明確化される。
④易きに逆らうエネルギーを与える
人間は基本的に弱い生き物である。この点に留意しないと、経営層はリスクを取らずに済む判断を下し、社員も自分が楽をできる方向に動く。性弱説の観点に立ち、エネルギーを充填することが大切である。
⑤朝令暮改する、大胆にやめる
外部環境は猛烈なスピードで変化している。指示が短期間の内に軌道修正されることは肯定されるべきものだ。一方、既存事業の収益力は数年後ですら保証されない。危機に陥ってから手を打つのではなく、平時にこそ大胆に事業を再編する決断が問われる。
高成長体質を獲得する4つのステップ
組織に5つの核心をインストールするためには、次のサイクルを何度も回す必要がある。
①狂気の楔を打ち込む
既成概念を破壊するレベルの非連続な目標の達成に向けた「狂気の中間目標」を掲げる。同時に、体質獲得を判断する数値基準も設定する。
②狂気の小集団を作る
狂気の目標達成に取り組む小集団を選び、メンバーを編成し、動かし始める。高成長体質が備わっていない状態で困難な目標を全社に与えても、大多数の社員は理解が追いつかないため行動に移さない。
③体質メーターを上げる
高成長体質は、ルールや教育で押し付けても身に付くものではない。社員にやらせて、気づかせて、納得させることで定着させる。抑えるべきポイントは次の3つである。
- 体質獲得につながることをさせる
- 称える、鼓舞する
- 対話する
④非共鳴の源を取り除く
高成長体質への転換を失速させないよう、阻害要因となりかねない人物を外す。非共鳴の源となり得る人物がいると、他の社員の変化意欲まで奪ってしまうので、体質獲得の最前線から明確に退いてもらう。
②から④のフェーズを経たら、小集団が高成長体質をどの程度獲得したかを見極める。定量面では要求体質水準に照らし、成果が目標水準に達しているかを確認する。また、定性面からも高成長体質をどの程度獲得しているかを確認する。要求体質水準を達成し、高成長体質を一定程度獲得したと判断できたら、より高い目標を掲げる。つまり、①から再スタートする。