HIDDEN POTENTIAL 可能性の科学

発刊
2025年10月6日
ページ数
416ページ
読了目安
597分
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成功するために不可欠な要素とは何か
成功の要因は「才能」ではなく、後天的に獲得できる「性格スキル」である。成功するために必要な「努力」をし続けられる「心の力」とも言うべき「性格スキル」を育成することが大切であると、様々な事例を示しながら解説されています。

可能性を解き放つために不可欠な要素「積極性」「意志力」「自己統制力」は、どのようにして身につけることができるのか、様々な研究結果などから、考察されています。

成功につながる資質は「性格スキル」

高い目標を達成できるかの違いを生み出す要因は、一見すると先天的な能力差のように思えても、実のところは、適切な機会や意欲、向上心であることが多い。

潜在能力を判断する際に真に重要なのは、持って生まれた明白な才能の有無ではなく、その人がどれほど進歩し得るかという点である。大きな進歩を遂げる人間が、最初から完成された天才であることは極めて稀で、大半はたゆまぬ努力によってつくられた「後天的な天才」である。優秀さと先天的な能力には、一般に期待されるほど強い関連性はない。

 

先天的な能力の有無にかかわらず、数十年後の成功につながる資質は、積極性、向社会性、自己統制力、意志力といった、いわゆる「心の力」である。この「心の力」は単に意志の強さの問題ではなく、むしろ習得し向上させることが可能な1つの「性格スキル」である。人格や性格は、後天的に獲得される一種の「能力」であり、自らが信じる道徳的な生き方を実践するために、学び、磨き上げていくものである。性格スキルは私たちが大きな目標を達成するための強力なエンジンとなる。

 

人の性格や人格はギプスで固定されるようなものではなく、生涯を通じてしなやかに変化し続ける可能性を秘めている。「性格・人格」と「個性」とは本質的に異なる。「個性」とは、その人が生まれ持った気質や、物事に対する反応の仕方といった、比較的変わりにくい個人の傾向である。一方、「性格・人格」とは、その人の人間的な器の大きさや、精神的な深みといったものを指す。それは、困難な状況にあってもその時々の感情に流されず、自身の価値観や信念に基づいて、粘り強く行動し続ける、後天的に磨き上げることができる「心の力」と言える。

 

「心の力」を伸ばす

秘めた可能性を解き放つ鍵となる特性は「積極性」「意志力」「自己統制力」である。目標へ至る長い道のりにおいては、次の3つが求められる。

①不快感と向き合い困難に挑む勇気

何を学ぶにせよ、居心地の悪さを伴う経験を重ねることで、内に秘めた可能性を引き出すことが可能になるが、不快なことと向き合うには、強い意志力が不可欠だ。そこでは3つの勇気が求められる。

  1. 「自分にとって最適」だと信じ込んでいる手法を捨てる勇気
  2. 自分の心の準備が整う前に、挑戦の場に飛び込む勇気
  3. 誰よりも多くの失敗を経験する勇気

成長を加速させるための最良の方法は、不快感を受け入れ、探し求め、さらには意図的に増幅させることだ。困難を克服する力は、挑戦する過程においてこそ培われる。

 

②情報を積極的に吸収し応用する能力

吸収し、濾過し、環境に適応する能力は、極めて重要である。この積極性という性格スキルの向上は「求める知識の量」ではなく、「吸収する知識の質」に左右される。つまり、費やした努力の量よりも、いかに質の高い学びを得たかが、成長へとつながる。

学習において、真の成果を上げるには、情報を理解し処理する「認知スキル」が、その賢明さや効率性を支える基盤として不可欠である。読み書き能力のような基礎的な認知スキルは、物事を深く理解し、自ら考えて行動するための性格スキルを効果的に育むことができる。

新たな情報を認識し、評価し、消化し、応用する「吸収能力」は、主に2つの傾向に左右される。

  • 情報をどのように捉えるか(受動的/能動的)
  • 情報をふるい分ける際、何を達成しようとするか(自己中心型/成長志向型)

最良の結果を出すのは「能動的」かつ「成長志向」の人間である。このタイプは、自らの可能性を広げ、環境に適応しようと常に積極的に行動する。

 

③不完全さを受け入れる覚悟

内に秘めた可能性を解き放つ鍵は、完璧さの追求そのものにあるのではない。自らの欠点を受け入れる必要性は、スキルを磨き続けるために不可欠である。

完璧主義者は、単純で既知の問題を解くことには長けている。しかし、現実の世界は、試験問題とは違い、正誤がはっきり分かれているわけではない。唯一の「正しい」答えを見出したいという欲求は、かえって困難を招く場合がある。研究によれば、完璧主義者は完璧を追求する過程で、主に3つの過ちを犯す傾向がある。

  1. 些末な細部に過剰に固執する
  2. 失敗を恐れるあまり、困難な課題や未知の状況を回避する傾向がある
  3. 失敗する度に自身を過度に非難するため、失敗から建設的に学ぶことが困難となる

 

完璧さとは幻想である。いずれ目指すゴールに到達したければ、その事実を理解し、ある程度の不完全さを受け入れることを学ぶ必要がある。完璧主義に対処する上で理想的なのは、明確かつ困難な目標を掲げることだ。これにより、関心が最も重要な課題に向けられ、「これで十分だ」という適切な水準を見極められるようになる。