問題をチャンスに変える
「いや、でもうまくいかなかったらどうしよう」といったイエス・バット思考は、人生に対して閉鎖的な考え方で、制約や脅威を投げかける。どんなに価値あるアイデアや主張も、硬直し停滞させられてしまう。
これに対して、イエス・アンド思考は可能性に価値を置き、何ができるかを重視する。イエス・アンドの姿勢で問題に向き合うと、今までにない解決策が驚くほど簡単に見つかったりする。問題を新しい角度から見ると、小さな努力で大きな洞察に辿り着くことがある。問題と闘う必要はなく、問題をチャンスにひっくり返してしまえばいい。
問題をチャンスに変える技術を「フリップ(反転)思考」と呼ぶ。フリップ思考の神髄は、問題を避けるのでも、良いことだけを重視して問題を否定するのでもない。問題を受け入れ、苦痛や損失、欲求を認めた上で人生を向上させるところにある。
フリップ思考は次の2つのステップで進める。
①解体:問題を事実に分解する
問題の余分なものを省いて事実だけにし、「こうあるべき」という期待をすべて取り去って「そこにあるもの」だけを残す。
②再構築:事実をチャンスに変える
ばらばらにしたものを組み立て直す。ありのままの事実をかき集めて、それで何ができるかを考え出す。この事実からチャンスへの転換、「〜である」という事実から「〜もあり得る」というチャンスへの転換が再構築のフェーズである。
フリップ思考の7つのポイント
①現実を受け入れる
現実を受け入れると、目指していたこととは違った変化が生まれることがよくある。重要なことは、自分でどうにかできることとできないことを見分けられるようになることだ。「あるべき状態」に執着するのをやめ、あるがままの状態に目を向けて初めて、「アリかもしれない状態」を受け入れられる。
②注意深く観察する
私たちは実際に何があるかではなく、自分が見たと頭で思ったものを認識する。私たちの近くは必然的に不完全で偏ったものになる。私たちは、経験から得た情報をもとに仮説を構築し、それによって新しい状況の現実を見失ってしまうことがある。
フリップ思考はオープンマインドから始まる。そして、好奇心や可能性という観点で考えること。何がマストで何がそうでないかを決めるのは自分自身で他の誰でもない。自分がすべての事実を知っていると思い込む前に、必ず周辺をよく観察し、見えていない「断片」がないか、それを通せば状況を違った角度から見ることができないかチェックすること。より多くの現実を認識できるほど、より多くのフリップ思考の機会が見つかる。
③問題は存在しないという前提に立つ
私たちが自分の期待をどう定義するかで、ある事実が問題かどうか決まる。ある人にとっての問題が、別の人にとっては理想かもしれない。客観的には問題など存在せず、事実があるだけである。「あるべき」状態を手放し、現状を観察する。問題は頭の中にあるもので、現実に存在するのは事実のみである。
④ストレスや不安定さとうまくつき合う
私たちは大抵、必要に迫られない限り変化を望まない。グッド(偉大)はグレート(そこそこ良い)の最大の敵である。安定・安心を求める人間の本能は、フリップ思考のテクニックと馴染まない。常に更新を心掛ける姿勢があってこそ、フリップ思考は最も効果を発揮する。
⑤反脆弱性を活用する
人、生物、システムは逆境に直面しても成長する能力を持ち得る。時には手を引いて、問題解決を当事者やそのもの自体の能力に委ねるのもフリップ思考である。何もしないで、自己修復の素晴らしい威力に任せることが、反脆弱性を活用する最も効率的な方法である。
⑥スタック思考をやめる
スタック思考とは、結果的に逆効果となるような方法で問題を解決しようと無理をすることを指す。問題を解決しようと懸命に努力すればするほど、問題が大きくなっていく。フリップ思考をするには、スタック思考のパターンを認識し、それを止められるようにならなければならない。
⑦4つの質問
すべての問題がフリップ思考で打開すべきものでもないし、打開できるわけでもない。鍵となるのは、どんな問題やシチュエーションに、フリップ思考を適用できるのかを知ることである。そのためには、次の4つの質問を順序通りに使う。
- 何が問題なのか?
- これは本当に問題だろうか?
- 自分の期待や行動が間違っていないか?
- この問題は武器ではないだろうか?