棲み分けを生み出すことが重要
マーケティングは、競争を避け、顧客にとって本当に価値あるものを提供するための道具である。競合との無意味な戦いをやめ、売れ続ける新たな市場を作ることが、マーケティングの本質だ。
競合との戦いを避けるために最も重要なのが「棲み分け」である。適切な商品を適切なユーザーに届けるコミュニケーションを設計することで、自社商品に合うユーザーのみがスムーズに自社商品に辿り着き、他社商品に合うユーザーはスムーズに他社商品に辿り着く状態を作る。
今は、WEBマーケティングの広告配信技術によって、「ドンピシャ」のターゲットにだけアプローチできる。これにより、競合と戦う必要はなくなった。マーケターの仕事は、その商品の特性に応じて「誰に広告を見せるか」「誰に見せないか」という棲み分けのルールを作ることだ。
3つの競合を見極めて差別化をする
現代の競合は大きく分けて3種類存在する。
- プロダクト競合:同じカテゴリの商品同士で戦う競合
- インサイト競合:消費者の心理的な要因による競合
- メソッド競合:目的を達成するための方法の違いによる競合
プロダクト競合だけを意識して差別化戦略を練っても、WEBマーケティングの世界では無意味だ。なぜなら、消費者は、手のひらのスマホの中のWEBという市場において、常に「プロダクト競合」「インサイト競合」「メソッド競合」という3つの選択肢に囲まれた状態で選択をしているからだ。
競合との戦いを避けるためには、この3つの敵を見極め、それぞれに対する戦略を練ることが不可欠である。消費者の心の壁や、同じ目的を果たすための別の選択肢まで視野に入れてこそ、真の差別化が可能になる。
顧客を理解する
WEBマーケティングの肝は「どんな人に」「どんなことを」「どのように」伝えるかだ。ターゲットを「どんな人」に設定し、商品の「どんなこと」を伝えれば最高の反応を得られるかに向けて全力を尽くす。
「どんな人に×どんなことを」という組み合わせが変われば、人々の心は異なる反応を示す。「顧客ニーズの9段階分類」は、顧客理解とターゲット設定の精度を極限まで高め、ターゲットの変化がメッセージに及ぼす影響を鮮明にする。
- 対策の必要性に気づいていない人
- 対策の必要性に気づいているが、その悩みは一時的なものだと思っている人
- 対策の必要性は自覚してはいるが、まだ何もやっていない人
- 対策を色々と検討し始めている人
- 対策を色々と検討してかなり詳しくなっている人
- 対策の手を打ち始めた人
- すでに対策用のお気に入り商品を使っていて、それに満足している人
- お気に入りの商品はあるが、他にもっといいものはないか探している人
- 色々試したが、結局満足するものはなかった人
悩みの深さや段階に応じて効果的なメッセージは全く異なる。顧客の心の奥に潜む「まだ言語化されていない欲求」を先読みし、各段階で最適なメッセージを送ることで、顧客からの熱狂的な共感を起動させる。
顧客を理解するために一番重要なことは「当事者に聞く」ことである。自分が担当する商品について、徹底的にヒアリングを実施しないと売れるかどうか判断できない。ヒアリングのレベルは、3段階に分かれる。
- 観察=ターゲット層が何を好んで何を好んでいないかという「結果」を知る
- 置き換え=自分がターゲット層だとしたらどうするか「想像」する
- 憑依=ターゲット層の「思考回路」に基づいて判断できるようになる
理解すべきなのは「趣味嗜好」「立場」ではなく「思考回路」である。ターゲットに憑依して、思考回路をハックする。
「売れる理由」を明確化する
「どんなこと」とは、ユーザーにとっての最大の利点「ベネフィット」でなければならない。このユーザーに訴求する利点を「USP(自社の商品やサービスが持つ他社にはない独自の強みや価値)」と呼ぶ。ターゲット層に響く独自の強みをどう打ち出すかが、マーケティング戦略の成否の鍵となる。
USPは、以下の4種類に分類する。
①ユニークベネフィットUSP(ベネフィットの独自性)
他社が提供していない独自のベネフィット。
②アドバンテージベネフィットUSP(ベネフィットの優位性)
競合商品と比較してベネフィットに優位性がある。この優位性には「本質的価値」と「付随的価値」の2つの側面があり、3つの細分化される。
- リーズンUSP(本質的価値=根拠の説明)
- オーソリティUSP(本質的価値=実績・権威性・第三者評価)
- エクストラUSP(付随的価値)ex.値段が安い、注文後すぐに届く
1つの商品について最大4種類のUSPを生み出すことができる。良いUSPを生み出すには、商品周辺情報をどれだけ知っているかが重要だ。商品は最初からUSPとなりうるものが備わっているわけではない。商品の奥に潜んだUSPを発掘するのがマーケターの仕事だ。工夫ひとつで「比較されない価値」を築くことは可能である。