交雑する人類―古代DNAが解き明かす新サピエンス史

発刊
2018年7月25日
ページ数
464ページ
読了目安
718分
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人類はどのように進化してきたのか
技術の進歩によって、古代の骨から抽出した全ゲノムデータを解析することができるようになり、新発見が続いている。旧人類のゲノム分析から得られた人類の進化の歴史が紹介されている一冊。

ネアンデルタール人との遭遇

人類のサブグループの1つである現生人類は5万年頃より後にユーラシア全域に広がって、他の人類を駆逐、あるいは絶滅させた。4万年前頃までは、世界には多様な旧人類が住んでいて、姿形は私たちを異なるものの、直立歩行し、私たちと共通する多くの能力を持っていた。

40万年前頃のヨーロッパで一番幅を利かせていたのは体の大きなネアンデルタール人で、脳は現生人類よりわずかに大きかった。

現生人類とネアンデルタール人との遭遇については、確かな科学的証拠がある。一番直接的な証拠は西ヨーロッパの例だ。西ヨーロッパでは3万9000年前頃にネアンデルタール人が姿を消したが、少なくともその数千年前に現生人類が西ヨーロッパに到達したことがわかっている。ネアンデルタール人と現生人類との出会いは、中東でも起こっていたのはほぼ間違いない。

ネアンデルタール人との交配

出会うたびに、現生人類がネアンデルタール人に取って代わっていたのだろうと思うかもしれないが、実は逆だった。ネアンデルタール人が故郷(ヨーロッパ)から広がって、現生人類が退いた途端に前進していた。しかし、6万年前より後のどこかの時点で、現生人類が中東で優勢になり始めた。今度は出会うたびにネアンデルタール人が敗者となり、中東だけでなくやがてユーラシアの他の場所でも絶滅してしまった。

2つの集団は交配していた。ゲノムを解析したところ、ネアンデルタール人に関連した遺伝物質が少なくともいくらかは、8万6000年前から3万7000年前にかけて、現代の非アフリカ人の祖先に取り込まれたとわかった。現代の非アフリカ人ゲノムの1.5〜2.1%ほどがネアンデルタール人由来であることがわかった。今ではネアンデルタール人との交配の証拠がヨーロッパ人だけでなく東アジア人やニューギニア人でも確認されている。

ネアンデルタール人は私たちの祖先と交配した唯一の旧人類だったのか

デニソワ人は遺伝学的に、ユーラシア本土のどの集団よりもニューギニア人と、ほんの少し近い関係にあった。ニューギニア人のDNAの3〜6%がデニソワ人由来であると推定された。

この発見は、現生人類がアフリカや中東から移住する際に旧人類と交配したのは、例外的な出来事ではなかったことを示している。

交雑する人類

考古学と遺伝学のデータを総合的に考察すると、現生人類と旧人類の系統の関わる主要な集団分離が、過去200万年の間に最低4回は起こっていた。少なくとも180万年前にホモ・エレクトスがアフリカから出て、ユーラシアへの最初の重要な移住をした。遺伝学的な証拠は、現生人類に至る系統から第2の系統がおよそ140万〜90万年前に分離したことを示している。この時分離したのが、デニソワ人の祖先との交配を通じてその存在が知られる超旧人類グループだ。第3の大きな分類は77万〜55万年前に起こった。この時現生人類の祖先がデニソワ人やネアンデルタール人と分かれ、続いて47万〜38年前にデニソワ人とネアンデルタール人が分離した。
5万年以前のユーラシアは活気のある場所で、少なくとも180万年前以降、アフリカから様々な集団がやって来ていた。そうした集団が姉妹グループに分かれ、異なる進化を経たのち、再び混じり合ったり、新しくやって来た集団と混じり合ったりした。そのようなグループのほとんどはやがて絶滅し、少なくとも「純粋な」形では残っていない。

現生人類集団の相互関係を考える場合には、樹木に例えるのは危険だ。人類の過去には1本の幹のような集団は存在しない。ずっと混じり合いが続いていたのだ。