テレ東のつくり方

発刊
2018年6月9日
ページ数
248ページ
読了目安
274分
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推薦者

テレビ東京の裏側
『ガイアの夜明け』『カンブリア宮殿』『未来世紀ジパング』などの番組制作に携わってきたプロデューサーが、テレビ東京の番組の裏側を紹介している一冊。どのようにして番組が生まれるのかが書かれています。

アイデアは「組み合わせ」である

テレビ東京は「他と同じことをやらない」にこだわり続ける少し独特なテレビ局である。「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」「未来世紀ジパング」も「他がやらない」という意味で、その代表的な番組と言える。

アイデアは、天才的に突然生まれるものではなく、そこらにある、あるいは自分の頭の中にある要素、知識の組み合わせである。この法則は「ガイアの夜明け」が、成功を収め、長寿番組となった理由の1つかもしれない。「経済×ドキュメント」あるいは「経済×物語」となった時に、新たな地平が生まれた。

テレビの番組作りは、企画書という文書が起点となる。そこからどれだけイメージを膨らませられるかが重要である。「仮説」に近いかもしれない。この仮説がうまく立てられなければ、コンビニの商品開発もできないように、テレビ番組もうまく作れない。

アイデアで逆境を跳ね返す

1991年の湾岸戦争の時、各局が戦争報道一色になる陰で、別の意味で注目を集めたのがテレビ東京だった。テレ東は夜7時からレギュラー番組の「楽しいムーミン一家」を放送した。戦争の裏でアニメ、ムーミンは高視聴率(18.1%)を取り、かなり話題になったが、世間の評判は微妙なものだった。「戦争という一大事にムーミンを流す報道局」、半ば嘲笑と共に語られる「テレ東伝説」の誕生だった。

カネもヒトも足りない弱小組織。関東のローカル局で業績も視聴率もダントツ最下位で、「番外地」というレッテルを貼られていた。その逆境をバネにするのが、テレビ東京の伝統、DNAだった。

政治取材の現場でも、テレ東は官邸記者クラブは当時2〜3人、他の民放局で5〜6人、新聞社・通信社は多いところで10人以上。これではなかなか戦いにならない。どうするか、「知恵を使え」というのが昔からのテレ東式である。そこから「池上彰の選挙ライブ」が生まれた。池上彰さんが「無双」と呼ばれ、政治家に切り込んでいく姿や、ちょっとゆるい「議員プロフィール」のユニークさが話題を呼び、毎回、視聴率では10%を超えて民報トップになった。この勝因となったポイントは3つある。

①己を知る
池上彰さんと福田裕昭Pは「速報力では負けている」という自己分析から入った。そして池上さんから「家族みんなで楽しめる選挙特番をやりましょうよ」という問いかけがあり、「今までにない選挙特番作り」が始まった。

②素朴な疑問
「政治家とはいったい何者なのだろう?」という素朴な疑問から生まれたのが「当確者プロフィール情報」だった。

③視聴者目線
相手が権力者だろうと、誰であろうと「視聴者目線」で聞くべきことを聞くという姿勢で、池上彰さんはインタビューに臨む。池上さんは常々、「政治記者が聞かないことを聞く」と言っていて、タブー視されているところに切り込んでいく。

2つの要素を掛け合わせる

番組の企画を考えたり、アイデアを考えたり、構成を考えたり、とにかく頭をひねらないといけない時に、イメージするのが映画『千と千尋の神隠し」に登場するキャラ「釜爺」である。物語の舞台となる湯屋の最下層にあるボイラー室で湯を沸かし、薬湯を調合している老人である。釜爺は、自在に伸びる腕を6本持ち、薬湯の素となる薬草を、おびただしい数の引き出しから選んで、引っ張り出しては、絶妙に調合していく。あのイメージで考える。

おびただしい数の、重要だったり、どうでもよかったりする知識や記憶を、自在に伸び縮みする6本腕で引っ張り出してきて、調合、掛け合わせる。そうやって、ある時はみんながリラックスしたり、ある時は心や体に効いたりする薬湯(アイデア)を作る。