不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法

発刊
2025年7月9日
ページ数
272ページ
読了目安
281分
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不完全を受け入れることのススメ
現実世界では、全てを自分の思い通りにコントロールすることは不可能であるとし、現実をまず受け入れることで、豊かな時間を始められると説いています。

大量のタスクや選びきれない選択肢、予測不可能な未来に振り回されて、不安やストレスを抱えることこそが、問題であるとし、ある種の開き直りが必要であるとしています。将来のために今を犠牲にするのではなく、今この瞬間を生きることの大切さについて気づかせてくれる内容になっています。

不完全主義とは

終わらないタスク、選びきれない選択肢、不確かな未来、悩ましい人間関係。これらを「解決すべき問題」と捉える必要はない。不完全主義者は自らの限界を、克服すべき障害とは捉えない。「これさえ解決すれば充実した人生が待っているはずだ」と無理にあがいたりしない。

逆に自らの限界を真正面から受け止めて、その中に飛び込んでいく。すると今までにない落ち着きや、人とのつながりが手に入る。心が自由になり、生きている実感が湧いてくる。世の中が揺らぎ、不安が押し寄せる時代だからこそ、私たちには不完全主義が必要だ。

 

そもそも「やるべきことがスッキリ片付いて、心機一転新たな人生を始められる日」などというものは永遠にやってこない。そんなのは完璧主義の幻想に過ぎない。限りある人間にとって、人生を変えられるタイミングは常に「今」だけだ。

現実を思い通りにコントロールする能力が人生の充実感や達成感に結びついているわけではない。すべてを予測可能で確実なものにした先に、ようやく安らぎが待っているのではない。偉大な成果は多くの場合、予想外のチャンスをつかみ、思いがけず勢いに乗った時に生み出される。すべてが完璧にコントロールされていたら、人との出会いにときめいたり、風景や芸術に思わず心動かされることもないだろう。

 

限りある人間である以上、思い通りにならないこともあれば、不安でたまらないこともある。どんなに時間を有効活用しても、人生で取り組むべきことの量は実際に取り組める量を常に大きく上回っている。予期しないトラブルに巻き込まれたり、つらい感情に振り回されることもある。不完全主義はこの現実を前向きに受け入れる考え方だ。

 

自分の有限性を受け止める

この世界で生きる時間を有意義に使いたいなら、最も爽快で力強い選択は、限りある人間の生の条件が思った以上にひどすぎると認めてしまうことだ。時間は限られているし、その限られた時間でさえも自分の思うようには使えない。

やることリストを終わらせるのは単にものすごく困難なのではない。そもそも不可能なのだ。とても困難だと思って立ち向かっていたことが実は全くの不可能だったと気づく時、心の中の何かが切り替わり、開き直る。ここは理想世界ではないので、やることリストの大半は決して実現できない。冷静になってそう理解した時、不安は静かに引いていく。今できることをしようという新たな意欲が湧いてくる。

現実を直視すれば「いつか完璧な生産性を手に入れて、すべてを思い通りに進めなくては」という無駄なプレッシャーから解放される。落ち着いた心で、目の前のやるべきことに取り掛かれるようになる。

 

限りある人生をなるべく有意義に過ごそうとする時、どこかの時点で必ず突き当たるのが、やりたいことはあっても選択の余地がないという感覚だ。何かをしたいと思うのに、状況がそれを許さない。

しかし、本当に選択の余地がないかというと、そうとも限らない。何かを「しなくてはならない」という状況は、本人が思うほど絶対的ではない。結果はオプションでしかない。どんな選択にも何らかの結果がついてくる。これは有限の存在である限り避けられないことだ。ある瞬間に選べるのは、たった1つの選択肢だけ。トレードオフがあるだけだ。人生の中でどんな選択に迫られているとしても、問うべきはただ2つ。「その代価は何か」と「それを支払う価値はあるか」だけだ。

どんな選択をするにしても、結果に正面から向き合う姿勢で臨むことだ。そうすれば、限りある人間に許された唯一の意味での自由を味わうことができる。

 

不完全に行動を起こす

自分の限界を受け入れることは、主体的な人生を諦めることを意味しない。ただ受け身で流されようと言っているのではない。有限性に向き合うべきなのは、その方が有意義なことができるからだ。「全部完璧にやろう、将来にわたって安心とコントロールを手に入れよう」という態度を手放せば、もっと豊かな活動に時間を使えるようになる。

 

そのためにはまず、何らかの意思決定をすることから始めるといい。今すぐに決められることを探して、実際に決定する。人生を豊かにするためには、向こうから決定の機会がやってくるのを待つよりも、自分から探しに行った方がいい。この混沌とした人生や仕事のどこかに、行き詰まりを解消するために今すぐできる意思決定のチャンスが潜んでいる。そう考えて行動すれば、停滞していた人生が動き出すはずだ。

 

ほとんどの人は正解を知らないことが問題だと思っている。どうすればいいかわからないので、わかるまではどうすることもできないと思い込んでいる。しかし、選ぶのに時間はかからない。これを選ぶと決めた瞬間に選択は完了する。そう考えれば、意思決定は限界を受け入れて生きるための本質的な行為だと言えるだろう。