シニアの消費傾向
2013年10月現在、65歳以上の高齢者人口は3189万8000人、高齢化率は25.1%を超えている。日本全体の高齢化人口は2040年まで増え続け、高齢化率は2060年には39.9%に達すると予測されている。
高齢者が保有する資産は、70歳以上で2101万円と最も多く、2番目が60〜69歳で2052万円。そして、3番目が50〜59歳で1139万円、4番目が40〜49歳で55万円、39歳以下はマイナスである。シニア層は他の年齢層に比べて平均的には資産を持ちである。しかし、60歳代、70歳代は多くの世帯主が退職し、主たる収入源が年金であるため、年間所得は4、5番目になる。
一般に将来に対する明るい展開が見られないと思いがちな事から、シニアは3K不安(健康不安、経済不安、孤独不安)が強い。このために、いざ高額出費が必要という時のために備えてお金を蓄える傾向が強い。そして、普段の生活においては倹約志向が強く、無駄なものにはあまり出費をしない消費スタイルの人が多い。
シニア層は若年層より資産が多くあるのに、それが消費に回りにくい。その最も大きな理由は、病気・介護など老後に対する漠然とした不安があるからである。人は将来に対して不安があると、いざという時に備えるため、財布の紐が固めになり、普段はなかなかお金を使わなくなる。
シニアは貯蓄や資産が多いからといって、日常的に消費も多いとは限らない。日々の消費はおおむね所得(収入)に比例する。消費財を買うという意識下では、将来を見越した「倹約・節約の考え」が冷静な価格感覚を呼び起こす。
したがって、シニアの資産を消費に促すには「漠然とした将来への不安」の解消につながる価値の提案が必要である。資産を使ってでも「必要だと思わせる説得力」「お金では買えないもの(健康・時間・楽しさ・喜び等)を手に入れたいという気持ちに働きかけること」などが重要と言える。
シニアの消費は変化で決まる
シニア市場を年齢によってセグメントするやり方には、注意が必要である。私達がモノやサービスを買うのは、何かの状態が変化した時であり、必ずしも年齢が変化した時ではない。
①加齢による肉体の変化
老眼、体力の衰え、更年期障害、肩や膝の痛みなどを実感すると、対処や予防のための消費が生まれる。
②本人のライフステージの変化
男性で一番大きいライフステージの変化の1つは退職である。退職して仕事を辞めると収入は減るが自由時間は大幅に増える。このため、この増えた自由時間を使うための商品・サービスに目が行くようになる。また、収入が減った分を補填するため、安全かつ有利な投資活動にも興味を持つようになる。
③家族のライフステージの変化
50歳代では、夫の仕事や両親の介護など不確定要素が多く、将来について確定しにくい。ところが60歳代になると、夫の退職や両親の世話などが一段落して、先の予定が見える事で消費行動が変化する。
④世代特有の嗜好性とその変化
食生活、音楽、映画、テレビ番組、ファッションなど、世代原体験は歳をとってからの消費行動に影響を与える。「ノスタルジー消費」(復刻版CDや映画のリメイク等)「時間解放型消費」(昔やっていた事にもう一度取り組む等)「愛用品消費」(昔ながらの商品等)などの形態で現れる。
⑤時代性(流行・生活環境)の変化
この変化には短期と長期のものがある。
・退職後も3日は仕事をする
・親世代と子世代は近くで暮らす
・介護・寝たきりは自分事
・高齢者のインターネット利用率の増加
ビジネスチャンスの見つけ方
シニアにとって消費の優先順位の高いものは、「不」の解消のための消費である。「不」とは「不安」「不満」「不便」であり、これらを解消させるものに有望市場の芽が潜んでいる。シニアの「不安」の内、「健康不安」「経済不安」「孤独不安」の「3K不安」が、どの調査でも上位に挙げられる。
これらの「不」が生じるのには、需要側と供給側それぞれに原因がある。需要側の原因は上記の「5つの変化」である。一方、供給側の原因は、需要側の変化に供給側が追いついていない事である。シニアが感じている潜在的な「不」からビジネス機会を見つける方法は以下の通り。
①飽和市場と言われている市場の周辺を見直す(例:カーブス)
②毎日行く所がない「不便」を解消する(例:コメダ珈琲店)
③買いたいものが1ヶ所にない「不便」を解消する(例:松坂屋上野店)
④身体の衰えによる「不便」を上品に解消する(例:ハズキルーペ)
⑤昔からあるが旧態依然として「不」が多い市場を狙う(例:補聴器)
⑥自分自身が「不」に感じている事を見直す(例:パソコン)