人とのつながりや絆は健康に影響を及ぼす
体や心の健康以外に大事な健康は「つながりの健康」である。つながりの健康とは、人とのつながりがもたらす、人生全般の健康や幸せのことだが、つながりの健康の価値はほとんど評価されていない。体の健康、心の健康、つながりの健康は互いに関連し合っている。体や心の健康が改善されると、人と交流する気力や自信が湧いてきて、つながりの健康も改善される。体や心の健康を支える習慣を身につけた上で、人間関係や絆を一番大事にすると、寿命が延び、健康が増進し、幸福感が増す。
健康には人のつながりや絆が不可欠だとするデータは山のようにあり、もはや無視することは不可能である。つながりの健康を手にするには、家族や友達、周囲の人や所属するコミュニティとの絆があり、支えられ、価値を認められ、愛されているという実感が不可欠である。
但し、社交的であることが、つながりの健康に直結する訳ではない。つながりの健康のスタイルによって、例えばパーティーで社交を楽しめる人もいれば、疲れ切ってしまう人もいる。つながりの健康の維持には、うわべの社交ではなく、深いつながりや絆、支え合い、自分自身との良好な関係が不可欠である。健康やウェルビーイングに影響を与えるのは、家族や友人、恋人だけではない。同僚や隣人、たまたまドアを開けてくれた通りすがりの人やカフェでちょっとしたやり取りをするバリスタは、他人でもつながりの健康に影響を与える存在である。
つながりの健康状態を評価する
私たちは、友人や家族、コミュニティとのつながりや絆に投資する必要がある。体や心の健康と同じくらい、つながりの健康を改善する必要がある。
つながりの健康を把握するには、次の3つのステップで確認する。
①人間関係を見極める
自分が望むよりも孤独だと感じている人、付き合いが広いが浅すぎると感じている人、愛する人に十分な注意を向けることができていない人は、人間関係を再調整する必要があるかもしれない。
②自分の人間関係の強さを振り返る
たくさんの人を知っているだけでは十分ではなく、つながりを深める必要がある。つながりの健康は、双方向の関係がある時に一番良好な状態になる。個々の人間関係においてもコミュニティにおいても、与えることと受け取ることの両方が必要となる。
一般的に言って、人間関係については、量より質が重要である。とは言え、量は無関係という訳ではない。持続的な幸福を実現するのに最低限必要な友人の数は3人かもしれないとするデータもある。
③自分の戦略を決める
つながりの健康についても、戦略がなければ、向上させることは不可能である。戦略とは、自分の人間関係の量や質に対する満足度を把握し、つながりの健康増進のために何をすべきかということであり、それは4つある。
- ストレッチ(伸ばす):人間関係の数を増やす
- レスト(休む):人間関係の数はそのまま、または減らす
- トーン(調える):つながりや絆を深める
- フレックス(ほぐす):つながりや絆を大切に維持する
つながりの健康のスタイルを見極める
つながりの健康が良好な状態とは、つながりの量やタイプが自分にとって適切な状態である。つながりの健康に関する好みや習慣は人によって違う。つながりのスタイルについて、大抵の人は次の4タイプのどれかに当てはまる。
- 蝶:頻度の多いつきあいとカジュアルなつながりで一番幸せになれるタイプ
- 壁の花:頻度の少ないつきあいとカジュアルなつながりで一番幸せになれるタイプ
- 蛍:頻度の少ないつきあいと深いつながりで一番幸せになれるタイプ
- 常緑樹:頻度の多いつきあいと深いつながりで一番幸せになれるタイプ
他の人と健全なつながりを育むには、自分自身が健全でなければならない。そのためには、自分を知り、自分を大切にし、自分のニーズをしっかり満たしながら、自分を偽ることなく他の人とつきあい、つながる必要がある。
自分としっかり向き合う1つの方法が、セルフコンパッションの実践である。セルフコンパッションとは、思いやりを自分に向けること。自分自身を責める代わりに優しい気持ちで理解する。
4つの戦略を実践する方法
「ストレッチ」「レスト」「トーン」「フレックス」の4つの戦略を実践する方法には次の通り。
- 趣味:好きなことを他の人と一緒にやる
- ボランティア:コミュニティに貢献する
- 会話する:質問上手になる
- 弱さ:相手を選んで打ち明ける
- 感謝:心からの感謝を伝える
- 寛大さ:よいことをすれば気分がよくなる
- けじめのある人間関係:人と集うスタイルを選ぶ