営業マネージャーは部下のスキルを向上させよ
営業マネージャーに求められる真の役割は、組織の予算を達成することと、メンバーの能力を少しでも早く、高く引き上げることにある。今いる組織のメンバーで長期的に良いパフォーマンスを出せるようにするには、メンバーの基礎的なスキルや知識の向上と、個性に合った能力をうまく引き出すことがカギになる。
売れるようになるためにはどんなスキルやテクニック、知識が必要なのかを部下と一緒に考え、落とし込む必要がある。部下が目標達成できない理由をヒアリングし、それを要素分解しなければならない。そのためには、社内での部下とのコミュニケーションが大事である。
アポイント
営業成績の良い営業担当と悪い営業担当との最大の違いは、アポの数と質にある。特に優秀な営業担当ほど多くのアポを取ることができていて、メール1つとっても、その内容の書き方にひと工夫している。
アポを取る上で最も重要なのは「情報をいかに出さないか」である。アポを取る段階で、こちらの情報を多く出すと、相手に断られる理由を与えてしまう。アポ取りの連絡は日程調整だけにとどめるのが理想だが、それだけでは「あなたは何者ですか」ということになるので、自己紹介や訪問目的、知り合ったきっかけなど、最低限の事柄を付け加える。
アポ取りの1回目のメールを送って返信がなければ、3〜5日後くらいに改めてメールを送る。その際には、スケジュールが変わったことを伝え、改めて候補日を送る。数回送っても返信がない場合も、どうしてもアポを取りたい場合は、電話や飛び込み訪問、紹介者からの後押しをしてもらう。
商談準備
営業担当がすべき本来の仕事は、相手が何に困っているかをヒアリングし、その解決策を一緒に考えることである。そのためにはまず、相手にどんな課題があるかを知らなければならない。事前にできる限り、相手の情報を集め、課題になりそうなことを多く引き出し、課題の優先順位を決める。相手の利益を考えられない営業担当は必要とされない。
ビジネスパーソンの付加価値は「情報」である。相手からどんな情報を求められるのか、商談の中で提供すべき情報は何かを部下と一緒に考える。
- 相手企業のビジネスモデルの想定(誰に何をいくらで売っているのか)
- 相手企業の課題の想定(困っていることは何か)
- 相手企業の課題に対する解決法の想定(考えられる課題に対して解決法を考えておく)
- 想定される課題を解決した自社の事例(同様の課題を解決した時の自社の事例を準備する)
- 反対問答の想定(相手からどんな懸念や拒否が生まれるかを想定して、どう回答するかを想定する)
営業担当は、自社の商品・サービスを強要するのではなく、相手が課題解決方法のどこに興味を示すか、付加価値を提供するために相手が気づいていない課題を掘り起こし、その解決方法を提示できれば成約にグッと近づく。商談の中で課題のパターンを広げるためには、事前に「どんな課題のパターンがあるか」を準備しておくと会話がスムーズになる。
具体的な「事例」や「反対問答」は、社内で情報共有しておかないと、1人の営業担当の経験から得た情報しか蓄積できない。各人から事例や反対問答の情報を持ち寄れば、ノウハウ量は格段に増える。「事例集」を作る場合は、「業界」と「課題」に分ける。「反対問答」は業界を問わず、商談の中で相手から言われた疑問や懸念を社内から集める。事例で一番大事なことは、どんな業界で、どんな規模の会社に、どんな課題があり、どんな方法で解決したかというリアリティーである。
初回訪問
商談相手が、自社の商品・サービスを買ってくれてもくれなくても、営業担当としては「この人と話をしてよかった」と思ってもらえることが1つの成功で、それが営業担当からビジネスパーソンへステップアップする大きな要素である。
どんな優秀な営業担当でも、失注することは必ずある。肝心なのは「断られ方」である。断られ方には2種類ある。
- 理由が明確な断られ方
- 理由がよくわからない断られ方
失注理由が明確であれば、対策を講じることができる。一方、失注理由がわからない場合は、次の手を打つことができない。失注理由がわからない場合の多くは、自社の商品を説明しているだけの、いわば「押し売り」状態の商談になっている、相手の課題を引き出し、その解決方法について適切にディスカッションしていれば、失注理由は明確になる。
世の中には、顕在ニーズと潜在ニーズがある。人による営業の価値は、相手が気づいていないことに気づいてもらうことである。そのことによって営業担当及びビジネスパーソンとしての信用、信頼へと結びつく。
潜在ニーズを引き出すためには、想定力と質問力が必要である。適切な質問をするには、準備が必要である。それにより、「一方的な説明」から「課題解決のディスカッション」へと商談が変化する。