ゲーム作家の全思考

発刊
2025年5月21日
ページ数
160ページ
読了目安
129分
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いいアイデアとはどのように生み出されるのか
『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』などを生み出してきたゲーム作家が、どのようにゲームを創作しているのか、その考えを書いている一冊。

いいアイデアがあれば、いい創作ができるわけではないとし、いかにアイデアを育てることが大切かを説いています。著者のこれまでのゲームづくりの数々の経験談をもとに、その過程からどのように創作が行われたのかを感じることができます。どのようにアイデアが生まれるのかという参考になります。

「いいアイデア」が「いい創作」になるわけではない

まとめられたインタビューのテキストでは「いいアイデア」があったから創作ができたかのように構成される。結果、「いいアイデアの出し方のコツ」がわかれば、「いい創作」ができるかのように錯覚させる。みんな「原因があって結果がある」というふうに単純化して考えたがる。

しかし、これは大間違いだ。「いいアイデア」が「いい創作」になるわけではない。そもそも「こんなことどうやって思いつくんだ」と思わせるアイデアは、乱暴な現場の偶然性がきっかけになって生まれる。その「偶然」を再現しようとしても無駄だ。

 

きっかけはあらゆるところにある。肝心なのは、いいアイデアを見つけようとしないことだ。きっかけは種であり、種の時点でいいか悪いかわからない。「いいアイデア」なんてくそくらえだと思っていた方がいい。「いいアイデア」だとみんなが思うようなアイデアは、みんな考えているからだ。「そんなものアイデアにならない」と言って、誰もが見捨てるものをすくいあげ、育てていくことで、オリジナルなものが芽生える。

 

アイデアは閃くのではなく、育てるもの

ダメなアイデアをたくさん抱えて、ゆっくりと見守るのだ。アイデアの種は一旦放っておく。この段階をイメージビルディングと呼ぶ。頭の中でどんどん組み立てていく。構想していく。像を描き出す。実際につくると時間がかかるが、頭の中なら一瞬だ。

アイデアは閃くのではなくて、育てるものだ。アイデアが閃く瞬間は、創作のキーではない。アイデアは、まず育てる種を見つけることから始まる。日々、何を見ても「ゲームにならないか?」と考える。シャワーを浴びると「このシャワーの穴の大きさと数と水の勢いの関係ってゲームになりそう」と考える。そのバカバカしい思いつきから始まる。

 

アイデアの生態系を手入れする

1000個考えて、その内100個メモして、その内10個を実際につくってみて、最終的に1個が残る。「1000個」は「たくさん」という意味だと思われるが、実際には1000個以上考える。但し、1000個考えるのは「いいアイデア」ではなく、むしろ「ダメなアイデア」だ。駄案こそが大切だ。アイデアにボツはない。アイデアは、森のように存在する。アイデアの種があって芽が出る。

 

アイデアは、それぞれ個別ではなく、お互いに絡み合っている生態系だ。いかに森をつくるか、日々手入れするかが、アイデアを出すために大切なアクションになる。「アイデアが出る」というのは、その日々の手入れの結果でしかない。たくさんのアイデアを出し、検討し、比べ、絡め合わせることで、アイデアの森をつくり、そこから豊かな何かを生み出すことが大切である。

 

紙に書き出す

紙に書き出すことは重要だ。とにかくたくさんのアイデアを一望できるようにし、そのアイデアを貼り替えて、位置を変え、関係性を変えながら、ネットワーク状に結びつきを変えていく。

物理的に、いつもいる場所に存在していて、何の気なしに眺められることが大切だ。A4サイズのコピー用紙にキーワードを一気に書き出す方法は、しょっちゅうやっている。特にテーマがなくても、「最近気になっているもの」を書き出したりしている。コツは、5分間のタイムリミット付きで60個以上のキーワードを書き出すことだ。とにかくスピードを重視する。タイムリミットと書き出す数の目標がないと、ついつい考えてしまい「いいアイデア」を書こうとしてしまう。考えずに手を動かし、自己検閲していない内側から出てきたものが、案外、何かに結びつくことも多い。

 

書棚もアイデアのメモのような存在だ。背表紙が見え、本を眺めることで「読んだ内容」を想起する。アイデアの断片の中に埋もれて生活することで、アイデアが育っていく。

 

創作は対象とのインタラクション

創作は対象との相互作用だ。ゲームのルールを考えている時は、自分がそのルールに対してアクションを起こし、アクションされたルールがこちらに跳ね返ってアクションしてくる。好き勝手にルールを変えることができるわけではない。物語をつくる時も同じだ。世界像やプロットは、その一部だけを変えることが難しくなる。どこかを変えれば、それは他のことに影響を与え、さざ波が拡がるように他の部分を変えていく。

 

自分からのアクションで、対象が変わり、変わった対象から自分に向かってアクションが返ってくる。対象からのアクションで、自分自身が揺さぶられ、変わっていく。変わった自分が再び対象にアクションする。ものづくりをやっていく過程で、自分自身が、創作の対象に向かって成長していかなければならないのだ。

 

参考文献・紹介書籍