時間帯が人の感情や認知能力に影響する
ほぼすべての生物に体内時計がある。この体内時計は、生物が適正に機能するために重要な役割を果たしている。体内時計は、全生物の日々のバックビートを定める「概日リズム」を統率している。体温をコントロールし、ホルモンを調節し、夜眠りについて朝目覚めるというリズムを生み出すのに役立っている。
これは、感情や行動にも影響を及ぼす。人々の覚醒中には驚くほど一貫性のあるパターンが存在する。ポジティブな気分は午前中に高まり、午後に落ち込み、夕方に再び高まる。私たちの気分は決まったパターンを繰り返す。研究の結果、時間帯が知力に及ぼす影響には、3つの結論が言える。
①人間の認知能力は、1日中同じ状態ではない
②この日々の変動は予想以上に大きい
③パフォーマンスには、その作業の内容が関係する
論理的判断は午前に、ひらめきは午後に
注意力とエネルギーレベルは、午前中に上昇し正午頃に最高潮に達し、午後に急降下する傾向にある。その下降に比例して、集中力や自己抑制力も下がる。
注意深さは、脳が分析力を要する問題を解く際には役立つ。但し、洞察問題となると事情は異なる。これには、注意深さと抑制はさほど必要とされない。「頭の中でぱっと閃く」のは、注意力という見張り番がいない時の方が起きやすい。
私たちの気分とパフォーマンスは、日中揺れ動く。ほとんどの人の場合、気分は共通するパターンに従う。ピーク、谷、回復のパターンである。これによって、パフォーマンスは2つのパターンが形成される。
①午前中、ピークを迎えている間、ほとんどの人は問題の解決を得意とする
②遅い時間帯、回復期は、洞察的仕事が向く
但し、この大きなパターンには、例外がある。4人の内1人は、他の3人と異なる体内時計を持った異なるタイプの人間かもしれない。
朝型か夜型か
人間の生理機能と心理に影響を与える概日リズムの個人的パターンは、各自異なる。
①ヒバリ型(14%)
朝になると難なく起床し、昼間は活力に溢れ、夜を迎える頃にエネルギーが切れる。
②フクロウ型(21%)
朝が苦手で、午後の遅い時間か夕方になるまで最高潮に達することがない。
③第3の鳥型(65%)
ヒバリ型とフクロウ型の間。60〜80%の人が分類される。
このクロノタイプは、私たちが誕生した時期が大いに影響する。秋か冬に生まれた人は、生来のヒバリ型である可能性が高く、春か夏に生まれた人は、生来のフクロウ型である可能性が高い。
年齢もクロノタイプに大いに影響を及ぼす。幼い子供はおしなべてヒバリ型。思春期を迎えると、ヒバリ型はフクロウ型へと変わる。フクロウ型のリズムは20歳頃にピークに達し、その後の人生で徐々にヒバリ型に回帰する。
男女の間でも、クロノタイプの相違はある。男性は夜型に、女性は朝型になる傾向がある。この男女差は50歳頃からなくなっていく。60歳以上の人は、概して朝型になる。
それでも、およそ20〜25%の人は、断固とした夜型である。
ピークを見極めて生産性を上げる
最終的に重要になるのは、タイプと作業と時間の整合性である。これを「同時的効果」と呼ぶ。同時性は、倫理行動にまで影響を与える。
スケジュールをあまり自分でコントロールできない場合でも、注意力と明快な思考力が求められる最重要の仕事は、ピークの時間帯に入れるようにすること。2番目に重要な仕事、もしくはひらめきを要する作業は、回復の時間帯に入れること。ルーティンワークをピークの時間帯にまぎれ込ませてはいけない。