ビットコインは金と同じようなポジションを得ていく
2008年に現れた人類史上初の暗号資産「ビットコイン」の社会的な位置付けや性格は変化し続けている。ビットコインの市場における時価総額は2025年3月20日時点で約1.5兆円(約220兆円)になっている。
ビットコインが誕生した当初は、単なる「ちょっと便利な電子的小口決済の手段」でしかなかった。当時、日本での取引は99%が個人投資家によるものであり、基本的に短期の値上がりが狙いだった。それが今や、世界の機関投資家が資産ポートフォリオに組み込むほどになり、ビットコインはマネーゲームに使うギャンブルのチケットではなく、れっきとした資産だと捉えられるようになっている。
暗号資産の「価値」とは、何より多くの人が保有しているということである。口座数は日本だけでも1200万以上、世界では6.5億口座にまで拡大したと推定されている。暗号資産の資産価値は、法定通貨のように国が保証しているからではなく、取引市場において多くの人が「それだけの資産価値がある」と考えていることが裏付けとなっている。
特にビットコインについては、プログラムによって発行上限が2100万枚にあらかじめ制限されている。この内既に1980万枚が発行されているが、上限に到達するのは2140年頃である。このように発行上限が決まっていることも、ビットコインの信用につながっている。
このビットコインの価値を裏付けているのは、「Web3」と総称されるテクノロジーである。改ざんされない堅牢な電子記録の技術に、本質的な価値がある。暗号資産を支えているテクノロジーは急速に進化しており、それらを応用した「Web3」関連の新しいサービスも続々と登場している。
今後、ビットコインは金融商品としての性格をさらに強め、その他の暗号資産はWeb3などで利用されるトークンとしての位置付けになっていくのではないか。世界では金に替わるデジタル資産の普及が進んでおり、暗号資産は金と同じようなポジションを得ていく可能性が高まるはずである。
Web3の状況
Web3を巡る状況としては最近、日本の大手企業が積極的に参入していることが注目される。
・ジパングコイン(ZPG):三井物産デジタルコモディティーズ
ブロックチェーン技術を使い、金を担保にその価値に連動するよう設計された日本初の暗号資産。デジタル化によって現物の金にはない利便性と小口化を実現している。
・トヨタウォレットST債:トヨタファイナンス
トヨタグループ初のセキュリティートークン社債。期間は1年で1口10万円、募集額10億円。ブロックチェーン技術を使うことにより、社債を購入した個人を直接把握し、購入口数に応じた電子マネーをプレゼント。トヨタグループの事業や活動に共感したり応援したりしてくれる人を増やしていくのが狙い。
・KENDRIX:日本音楽著作権協会
ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能とeKYC機能を備える楽曲情報管理システム。音源ファイルなどをKENDRIXに登録するとファイルなどの情報がブロックチェーンに登録される。これにより、作曲者などは自分がある音源ファイルをいつの時点で所有していたのかという事実を客観的に証明する「存在証明ページ」を示すことができる。
・NISSAN PASSPORT BETA:日産自動車
Web3の概念とテクノロジーを活用し、ユーザーに新たな価値を提供することを目指す新サービス。第1弾として、メンバーシップNFTの提供、独自Web3ウォレットの提供、体験型リワードプログラムの提供などを行う。体験型リワードプログラムでは、ゲームに参加するような感覚でトークン(ポイント)を獲得でき、貯まったトークンは特別な体験や権利と交換可能である。
・GT6551:NTTドコモ
メタバースでプレイ可能なレーシングブロックチェーンゲーム。ユーザーはゲーム内で、レーシングマシンの性能やデザインをカスタムする「部品NFT」と、レーシングマシンに登場するドライバーをカスタムする「ドライバーNFT」の2種類を組み合わせ、レーシングマシンをカスタムできる。作成したレーシングマシンはオリジナルのコレクション(資産)として所有することもできる。
・Soneium:ソニー
イーサリアムをベースにしたブロックチェーンを使い、インフラからアプリケーションまで含めた幅広いWeb3サービスを展開予定。例えばデジタルクリエイターの権利保護や収益還元、仮想通貨取引やNFTのマーケットプレイスなどが想定されている。
・魁 三国志大戦:SEGA
トレーディングカードゲーム。プレイヤーは三国志の武将たちをNFTカードとして用意し、戦略性を考慮したデッキを編成。その後は自動でバトルが進行する。カードをNFTとしてゲーム外でも売買など取引できるのが大きな特徴。