定量的な目標を決めて、タスクに落とし込む
イラストレーターという仕事は、絵を描く技術だけでは成り立たない。むしろ「絵で仕事をするという考え方」を持てるかどうかが、成功できるかどうかの分かれ道になる。つまり、ビジネスの視点で自分の強みとマーケットを分析し、どう自己プロデュースすべきかという「戦略」が必要である。
フリーランスのイラストレーターとして一番はじめにしたことは「覚悟を決めること」だった。覚悟とは、自分の現状を理解し、具体的に目標を定め、どう行動するのかを決定づけること。
- イラストレーターとして月20万円の収入を得る
- 子供たちに見せることのできる仕事をしたい
時期と段階を踏んだ具体的な数値を設定することで、そこから逆算して「今何をすべきか」を明確にする。特に始めたばかりの頃は「3ヶ月」という単位で区切って目標を立てるといい。
目標を達成するために「具体的に何をするべきなのか」という実際のタスクに落とし込む必要がある。フリーランスの仕事は、自分の計画通りにいかないことがほとんど。その都度「なぜできなかったのか」を冷静に自分を見つめて、具体的なタスクに組み込み実行の道筋をつくることが大切である。
戦うフィールドを見極める
プロのイラストレーターとして活動していくためには、シンプルに2つの軸を戦略として意識することが肝心である。
- マーケティング:売れる仕組みをつくること
- ブランディング:選ばれる理由をつくること
「上手な絵を描く」だけでなく、「誰に」「何を」「どうやって」届けるかというマーケティングの視点と、「自分はどういうイラストレーターとして認識されたいか」というブランディングの視点、この2つが揃って初めて、持続可能なビジネスとして成り立つ。この2つを踏まえて戦略的に自己プロデュースしていくことが、イラストレーターとして生計を立てることができるようになった秘訣である。
イラストレーターとしての働き方は大きく分けて2つ。
①クライアントワーク
主に企業や個人のお客様から依頼を受けてイラストを制作する仕事。
ex.書籍や雑誌の表紙やカット、広告やWebサイトのイラスト、キャラクターデザインなど
②オリジナル作品の販売
自分の描きたいものを描いて、それを商品として販売する。
ex.イラスト集やグッズの制作・販売、デジタル素材の販売
市場を分析し、具体的な収入モデルをシュミレーションすることで、誰に何をどうやって届けるのか、という明確な方向性が見える。そして、次の視点でリサーチし、自分が戦うべきフィールドを見極める。
- どの分野で高単価のイラストの需要があるのか
- 自分の得意なことを活かせる市場はどこなのか
イラストレーターとして、仕事を得るために、自分を「売り込む」のではなく、「選ばれる」ことを意識する。SNSやオンラインのプラットフォームを積極的に活用し、それらの特性に合わせた「選ばれる」理由を形成していく。
イラストレーターとして「選ばれる」ためには、自分の作品がどういう系譜の中で位置づけられるのかを、クライアントに示す必要がある。これは、作品そのものが引き継いでいるその系譜の伝統的品質や表現の深さが、新しい時代の中で少しずつ進化していく文化的遺伝子のようなもの。ゼロベースで何か新しいものを生み出そうとするよりも、先行する価値のある表現を深く理解した上で、自分なりの解釈や経験を加えていくことが、自分自身のブランドをつくり上げる礎となる。
SNSで仕事を獲得する
イラストレーターにとって、SNSでの活動は自分のブランディングであり、ポートフォリオの一部になる。多くのクライアントが新しいイラストレーターを探す時、最初に目にするのはSNSでの投稿内容である。そこに投稿されている作品の質はもちろん、投稿の頻度、作風の一貫性、他者とのコミュニケーションの取り方など、すべてがその人の評価につながってくる。
まずやるべきは、アカウントを訪れた人に自分がプロのイラストレーターであるということがわかる店構えにすること。次の3つの要素を入れて、プロフィールを明確にする。
- 自分が何者なのか
- 仕事の依頼方法や連絡先
- 実績や受注可能な仕事の種類
プロフィールの文を整えたら、アイコンやヘッダーなどの見た目の部分を考えていく。
SNSを運用する時は、それぞれの投稿には明確な目的を持たせる。目的別に主に6パターンの投稿を使い分ける。
- ブランディングの強化
- 信頼性の構築
- コミュニティ形成
- スキルアップのアピール
- 市場調査
- ポートフォリオの充実
「イラストを描く」→「ポスト」→「バズる」→仕事の依頼
このシンプルな流れが、SNS時代の営業の王道である。単に投稿したいものを発信するのではなく、見る人にとってどのような価値があるのかを考える必要がある。