武器としての行動経済学 「売れる」のウラ教えます

発刊
2025年4月15日
ページ数
256ページ
読了目安
215分
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行動経済学をマーケティングに活かす実践方法
人間の意思決定に関わる様々な心理的メカニズムを紹介し、それを実際のマーケティングに活かすためのヒントが書かれている一冊。

商談や販売促進、広告、値付け、ブランディングなど、モノを売る現場において、行動経済学の知見をどのように活かせば良いのかがわかります。数多くの行動経済学の知見が書かれており、様々なマーケティングの施策を検討するための手引きとして使えます。

人がモノを買う意思決定のメカニズムを知る

「行動経済学」とは、経済学に心理学の知見を取り入れ、「人は自己利益のために完全に合理的な意思決定をする」という従来の経済学の仮定を、より現実的な仮定に置き換えて分析する学問である。

簡単に言えば「特定の条件下で人々がどのような経済行動をとるのか」を研究するものである。人の行動やその行動の起点となる心理には直感や習慣に基づく一定の法則性があり、それを実験や研究し、データ分析によって実証することで体系化したのが「行動経済学」である。

 

行動経済学はモノを売るための武器としても役立つという意味で、「心理学 × 経済学 = 行動経済学 ≒ マーケティング」という式で説明できる。

 

選択のパラドクス

商品購入の際、選択肢が多すぎることで選べなくなって後回しにしたり、とりあえず選んだものの後悔したりすること。

 

一般的に、人は豊富な選択肢の中から好みの商品を選びたいと考える。ところが、いざ豊富なバリエーションを目の前にするとあれこれ迷って決定できず、結局は買うことをやめてしまう傾向がある。選択肢が多すぎたり、複雑すぎたりするとストレスになり、顧客は選択を諦めてしまう。

行動経済学の視点で見ると、お客様の選択決定を促したり特定の商品を選ばせたければ、多すぎず少なすぎない選択肢を設定する必要がある。具体的には2〜4の選択肢を用意し、選びたくないモノを当て馬として入れておくといい。

 

バンドワゴン効果

多くの人が支持していると知らせると、さらに支持を集めやすくなる現象。いわば勝ち馬に乗るような心理傾向のこと。

 

「当店人気ランキングNo.1」のようなランキングを提示すると、「いちばん売れている商品を買っておけば間違いない」とお客様は考えてくれる。人気商品であることを「ベストセラー」「売上No.1」といった表現で強調したり、流行しているトピックやニュース、キーワードを使ってSNS投稿やコンテンツ作成を行うケースも多い。

 

心理会計

お金の入手経路や支出目的によって、異なる性質のカテゴリーに分類して支払うなどの現象のこと。

 

人は「お金(収入)」のタイプ(給料、臨時収入、クレジット購入、ポイント還元など)によって、それぞれ異なる価値観で捉えるとされる。支出のタイプによっても支払いの仕方が変わってくる。

大きな買い物の決断後、人は少額の追加支出に対して寛容になる。これをクロスセルに活かすことで追加購入を促しやすくなる。

 

両面提示の原理

ポジティブな情報だけでなく、ネガティブな情報も合わせて提供することで信頼性が高まる現象。

 

消費者は「ウマい話には裏がある」と考える傾向がある。都合の悪いところは隠しておきたいと考えてしまうが、欠点やデメリットをあえて伝えるからこそ信頼される。両面提示の効果が高まる条件としては、デメリットが重大すぎないことが必要である。

 

サンクコスト効果

すでに支払ってしまったコストを惜しんで、さらに損失を重ねてしまう非合理的な心理状態のこと。

 

ゲームなどで課金して揃えたアイテムや育てたキャラクターがあると、それがもったいなくてやめられず、さらに課金を重ねてしまう。カプセルトイ、競馬、パチンコなどもこの効果が働いている。

人は得をする話を聞くよりも、「今あなたは損をしています」と囁かれる方が強く反応してしまう性質がある。こうした損失を強く意識させることで、なかなか行動を起こそうとしない顧客に対して、働きかけを行うことができる。

 

カクテルパーティ効果

パーティ会場のような騒がしい場所でも、自分が興味や関心のあることは、聞き取れるという脳の働き。

 

この効果は音声で届ける情報に限らない。ウェブやフライヤーなどの販促ツールでも同じである。自分が興味や関心のある内容であれば、対象者に届きやすくなる。つまり、ターゲットを絞り込んでの呼びかけや、お悩み・課題を明確に打ち出すことができれば、ちゃんと反応してもらえる。

ターゲットへの呼びかけを「お客様を主役」に置き換えて考え、機能性のみならず、その機能・特長によって、生活がどう変わるかを伝えるのも効果的である。

 

イケア効果

自分が作ったもの、手をかけたものに愛着が生まれ、本来以上の価値を見出す心理現象のこと。

 

プラモデルやクラフト系の商品などは完成品ではなく、工作キットだからこそ価値があり、組み立てコストがかからない上に喜ばれる。ひと手間かけなくてはならない面倒さが、逆に買いたくなったり、価値を感じたりするありがたみになる。

 

デフォルト効果

選択肢があっても変更するインセンティブがなかったり、面倒な場合に初期設定のままにすることが多い現象のこと。

 

人は疲れている時ほど初期設定のままにしてしまいがちである。選択肢を提示する際に、こちらにとって望ましいオプションを初期設定とすることで、お客様の選択を誘導できる可能性がある。