一流飲食店のすごい戦略

発刊
2025年3月28日
ページ数
256ページ
読了目安
294分
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推薦者

一流飲食店の様々なコンセプト
数多くの飲食店を食べ歩く著者が、人気店になるために必要なことを解説している一冊。
予約の取れない人気のお店は、どのようなことをしているのか。具体的なお店の事例を紹介しながら、飲食店はどのようにすれば成功するのかが書かれています。

料理の味だけでなく、その店独自の世界観をつくり、体験価値を提供することの大切さを説いています。飲食店の経営を考える上で、役に立つ考え方が書かれています。

体験としての付加価値

一流店であり続けるところには、必ず理由がある。料理の味だけではなく、1ミリのズレもないコンセプト設計から空間のデザイン、シェフの人柄やこだわり、そこにしかない付加価値や売れる仕掛けに至るまで、様々な要素によって一流店は成り立っている。

いくら高級食材を使っても、しっかりとしたコンセプト、ストーリー、付加価値による「必然性」「説得力」がなければ満足感は生まれづらく、リピートにはつながらない。

 

料理店の付加価値とは「舌で味わう美味しさ」だけでなく、「体験としての美味しさ」である。長く愛されている店は共通して「2つの美味しさ」を提供している。1つは料理の味。もう1つは料理に留まらない体験としての美味しさ。例えば、料理人の経歴の面白さや、新規性、テロワール、料理から空間作りまで一貫しているコンセプト、圧倒的な専門知識などである。

共通しているのは「美味しい料理」を食べるだけでなく、店という「1つの世界」の中に滞在させてもらったという満足感があり、店を出る時に「いい体験させてもらったな」と豊かな気持ちに満たされることである。いい経験をしたら、その話を周りの人たちと共有したくなる。こうして人から人へと評判が広がる店が、長く愛される店になっていく。

 

ストーリーが重要

東京の一等地の商業施設に出店しても成功するとは限らない。なぜなら、商業施設では店の「ストーリー」をプレゼンするのが難しいからである。店に辿り着くまでには繁華街を抜け、商業施設のピカピカなエントランスやショップ街を通り抜け、場合によってはエレベーターで高層階まで上がらなくてはならない。

 

また行きたい店の理由の1つに「ストーリーを肌身で感じさせてくれること」がある。その店が今に至るまでの経緯や、師匠・弟子の系譜、使っている食材などの情報、料理のコンセプト、料理人の強い思いや哲学など。そういうものがあると、空間や一皿一皿の料理にストーリーを感じることができて、単に「美味しい」以上の感動となる。

ストーリーが重要であって、立地が重要なのではない。都市部から遠く離れた地域だろうと、料理を含めて素晴らしいストーリーをお客様に感じさせる飲食店ならば、長く愛される店になれる可能性が十分にある。

 

飲食店のストーリーには「一貫性」が必要である。一貫性のあるストーリーを語るには「何でもあり」ではなく、「当店のコンセプトに照らして、これはありか、なしか」という判断がつきものであり、当然ながら捨てるものも多くなる。

コンセプトとは、言い換えれば店に「制約」を課すということ。何かしらの個性でお客様を惹きつけることを考えると、むしろコンセプトという制約がプラスに働く。その制約があることで、店のストーリーが1つの無駄も無意味もなく収斂され、個性が先鋭化する。

 

体験としての美味しさ

昨今、お客様は料理と一緒に「情報」も食べている。これらをストーリーとして、魅力的に描き出すことができたら、大きなアピールポイントを持つことができる。

 

①仕入先

すごい生産者から食材を仕入れていることで、それが美味しい情報となりうる。料理は厨房で始まるのではなく、食材の調達先から始まっている。

 

②系譜

師匠・弟子筋という系譜もお客様を惹きつける美味しい情報である。

 

③料理のコンセプト

「料理のコンセプト」=「◯◯料理というジャンル」とは限らない。根底に揺るぎないコンセプトがあれば、それが店の代名詞となり、一貫したストーリーとしてお客様の心に響く。その上で「◯◯料理」の枠にはまらず自由に遊ぶことが、結果的に「ここでしか味わえない」という唯一無二の価値につながる。

 

④料理人の人生そのもの

料理人自身のキャリアを棚卸ししてみたら、店のストーリーになりうる魅力があるかもしれない。

 

⑤テロワール

不利と思われがちな「地方」を、むしろ強みにすることもできる。地方には「テロワール」という地域ごとの特性がある。「この土地ならではの食材」「この土地に根ざした食文化ならではの調理法」といった元から存在するありのままの地域性は、最強のストーリーになりうる。