デンマーク人はなぜ会議より3分の雑談を大切にするのか

発刊
2025年3月24日
ページ数
256ページ
読了目安
229分
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生産性の高いデンマーク人のコミュニケーション術
国際競争力トップクラスのデンマークのコミュニケーションの特徴を解説している一冊。
勤務中の隙間時間などに雑談をすることで、お互いのことを知り、そこから新しいアイデアや人とのつながりをつくることで、イノベーションを生み出すデンマーク人のワークスタイルが紹介されています。

長い会議や長文メール、飲みニケーションなどとは対極にある生産性の高いコミュニケーションのコツがわかります。

デンマーク人のコミュニケーション

IMDの調査によれば、デンマークの国際競争力は2年連続1位に輝き、今でも世界トップクラスだ。国際競争力を決定づける4つの指標の内の1つ「ビジネス効率性」は、5年連続で世界1位に輝いている。デンマーク人は、成果を最大化させる「コミュニケーション力」を持っている。

 

デンマーク人のコミュニケーションはシンプルである。何でもストレートに話すから、水面下で細かい根回しをする必要もなければ、終業後に愚痴大会を開く必要もない。飲み会を開く習慣もないし、勤務時間外に、仕事関係の人との「付き合い」もしない。一方で、勤務時間中の会議、メール、チャットのやり取りも最低限だ。職場の人とは、勤務時間中に「軽い雑談」をして、お互いのことをことをサクッと知る。それだけで十分にコミュニケーションは取れるのだ。

 

成果を最大化させるコミュニケーションには「コツ」がある。それは、肩の力が抜けたラクで軽いコミュニケーションだ。彼らは、短い勤務時間の中に「軽い雑談」を取り入れている。近況報告、ランチ、週に1回の朝食会の開催からチームメンバーの誕生日祝いまでする。雑談と言っても、豊富な知識も気の利いた冗談もいらない。時間もかけなくていい。たった3分、軽く会話するだけでいい。

 

会議より3分の雑談

本当に良い仕事をするためには、仕事に「真面目に」向き合ってはいけない。むしろ、テキトーに気楽に構えて、誰かと雑談すると、意外にも突破口が見えてくる。重たい空気が流れる職場から良いアイデアは生まれない。

カジュアルな場での「3分の雑談」の効力は意外にも大きい。目の前の仕事とは関係なくても、とりあえず軽く近況を伝えてみる。断られるかもしれなくても、とりあえず気になった人に声をかけてみる。何にも協力は得られないかもしれなくても、より会えず軽く相談してみる。この「とりあえず」という軽いノリがポイントである。

所詮、雑談の一部に過ぎないので、それが何かにつながらなくても、それで当然と思えるし、何も起こらなくても、後に残るのは気楽な関係だけである。だが、実際には何にもつながらないように思えた会話が、後々に大きな意味を持つこともある。

 

カギは「相手への好奇心」と「サッパリ感」だ。エレベーターを待つ時間、オフィスから駅までの道中、飲食店で料理が運ばれてくるまでの間などの「空白の時間」で、相手が今、どんな仕事や活動をしているのか、どんなことに関心があるのか、何を求めているのかを好奇心から尋ねてみる。好奇心を持って会話することで、ちょっとした一言が「何か」につながりやすくなる。

相手の話が自分の「アンテナ」に引っかかったら、良さそうな情報や人を紹介できるし、自分の話が相手の「アンテナ」に引っかかったら、良さそうな情報や人を紹介してもらえるかもしれない。もし、共通の関心事があると判明したら、今すぐ何か一緒にできることもあるかもしれない。けれど、あくまでも雑談なのだ。

 

会議の冒頭には「ちょっとした雑談」を入れる。すると初対面の人同士でも、なんとなくお互いを知れて、親近感が湧く。それだけで、みんなが発言しやすくなる。

「雑談」がある職場では、イノベーションが起こりやすい。みんなで雑談をしている時に誰かが何気なく話したことに、「あ、それいいね」と反応して、そのアイデアを拾う。そんなところから、イノベーションの火種が生まれる。

 

お互いを深く知れる良い雑談は、普段の「役」を脱いでゆっくりできる「非日常空間」で生まれる。ショップやラウンジ、公園のベンチ、カフェなどの開放的で自由な空間では、普段とはちょっと違う会話が生まれる。「役」を脱いだ「顔」が見えると、それが、仕事のしやすさにつながることもある。

デンマークでは、職場でのランチタイムも「役」を脱ぐ時間である。30分の短いランチタイムは、上司も部下もインターンもごちゃ混ぜだ。みんなが適当な席に座って、フラットに会話を交わす。主な話題は、近況報告である。週末の出来事、昨日の出来事などお互いの近況をアップデートして、息抜きをしながら、お互いの「状態」を感じ合う。初対面の人と同席した時は、簡単な自己紹介をする。そして、この人とはもう少し話せそうだと思ったら、プライベートの近況や自分の関心事なども少し話す。そうすると「顔」が見えるようになって、次から気軽に話せるようになる。

 

勤務時間中の「短い隙間時間」を、お互いを少し知り、お互いの状況を軽く把握するために、最大限に活用する。それこそが、デンマーク人の大切にするコミュニケーションである。