失敗しないDX

発刊
2025年3月11日
ページ数
324ページ
読了目安
313分
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推薦者

DXを成功させるために必要なこと
間接材購買プラットフォーム「KOBUY」の導入事例を紹介しながら、組織全体の業務の全体最適を図りながら、DXを進めるためのポイントが書かれています。

様々な業務に対応したSaaSが乱立する中で、本当の意味でのDXを実現するには、組織全体の業務の棚卸しからスタートし、その上で理想の形からDXを検討することが重要であると説いています。
多くの企業でDXが進まずに失敗している現状において、DXが進んでいる企業の実例を参考にすることで、DXの進め方を学ぶことができます。

DXの失敗はなぜ起こるのか

労働生産性を高めるには、生産高や付加価値額を多くするだけでなく、同時にそれを生み出すための工夫をして、人数や労働時間を少なくする必要がある。お金の投資と同じように、時間についても「その時間で最大限の成果を上げることができるか」という視点が必要になる。

DXは、人手不足と働き方改革が同時進行している現在の経営環境において、必須の課題となっている。人がやらなくてよいことはデジタルに任せ、人がやらなければならないことは手短に済ませ、私たちは新しい価値を創出する時間をつくり出さなければならない。

 

2020年代に入り、コロナ禍の影響もあり、日本では急激に「DX熱」が盛り上がった。企業の中に潜む様々な業務をデジタル化するためのサービスやツールが提供されるようになり、SaaS市場が活況となった。しかし、実際は「DX化が進んでいない」という状況が続いている。

新しいシステムの導入を行なった会社でも、デジタルツールに対する悩みは少なくない。トップダウンで導入を決めると、現場の実情に合っておらず使いづらいということが起こりがちである。一方、現場の要望で導入したサービスは、作業効率の向上や時短など、導入効果は実感できるが、全体像を見据えて導入されていないため、部門間や業務の前後の工程で、新たな負担が増えてしまうといった問題が発生する。つまり、デジタル化を目論んでツールを導入しただけでは、業務改善が進んでいかない。

 

DXは、SaaSなどのツール導入の際の「うたい文句」になっていることもあり、ツールの導入でDXが出来上がるという錯覚を起こしがちである。しかし、ツール導入だけでDXを実現しようとすると、壁にぶつかり失敗する。業務単位のデジタル転換で、様々なツールを導入しても、ツールが活用されなかったり、余計な業務が増えてしまう。

DXの初手は、ツールを検討するのではなく、組織全体で目指すべき目標や、解決しなければならない課題を確認する必要がある。例えば「残業をゼロにする」「ペーパレスを達成する」など、定量的に設定できるテーマをKGI、KPIに設定していく作業が重要になる。

そして、DXに取り組む前に業務を全て可視化する必要がある。その上で、デジタル化した方が効率的になるかどうかという評価を下していくプロセスが始まる。業務の洗い出しは、できるだけ細かく行う必要がある。単純で、当たり前だと思われている業務や作業を分解していくと、多くの「行動」が隠れており、そのために時間が使われていることを発見できる。

 

DXを成功させるために必要なこと

課題解決のためには、まず会社として業務の現状を把握し、理想的な姿を描く。現実と理想とのギャップこそが「問題」であり、その問題の深掘りを通じてはじめて、採るべき解決策を検討することができるようになる。まず業務全体を詳細に分析し、これをどのようにデジタル化すればよいのかを考えるところからスタートする。業務分析の過程で、「その仕事、本当に必要ですか?」と常に現場の担当者に問い掛ける。

 

DXの成否を決める要素は、詳細な業務分析を皮切りとして、関係する業務や全社員が働き方を刷新し効率化を進める「全体最適」を発見することができるかどうかにかかっている。全体最適を進めるにあたって、一連の業務の中で、次の2点に着目していく必要がある。

  • 誰が関わり、各プロセスで何をするのか
  • 作られるデータが保持され、部署単位の入力や再入力が起きないか

 

ここで問題となるのが、組織の壁である。どの部門が主導するとしても、業務分析の際に発見する全てのプロセスにおいて「誰が関わり、何をするのか」を網羅しなければ、組織全体での「全体最適」に辿りつくことができないのである。そのため、「関係する部署が参画するプロジェクトチームの組成」と「部門横断的に意思決定ができる決裁者の参加」は、全体最適のために必要条件となる。

 

DX化はあらゆる業務をデジタルに置き換えていくことが前提だと考えがちである。しかし多くの場合、あらゆる業務をデジタル化するだけでは、全体最適が起きない。アナログで行われるオペレーションやプロセスの一部が合理的な理由を持って全体最適の一端を担っているのであれば、それをどのように残すことができるのかを考えなければならない。

ここで、DXを成功させるために重要な要素となるのが「目標設定」である。業務全てのデジタル化が、必ずしも全体最適のゴールではないため、DX化のゴールを設定しなければならない。「ペーパレス化の達成」「残業時間の削減」「人材の再配置」「業務の再定義」など、組織ごとにDXが成功することで得たい成果を目標として設定する必要がある。