確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか

発刊
2025年1月29日
ページ数
376ページ
読了目安
600分
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強いブランドを構築するための方法論
マーケターとして、USJの再建を成し遂げた後、様々な分野で実績を上げている著者が「マーケティングの集大成」として、これまでの経験から導いた理論を書いた一冊。

消費者はどのような行動によって、ブランドを選択するのかという理論から、消費者に突き刺さるブランドをつくるためのコンセプトのつくり方が解説されています。

マーケティングの観点から企業において至上命題とも言える売上をどのように増やせるのか、という本質的なことを理解することができます。商品開発やブランド設計などに携わる人にとって、根本的なことを理解することに役立ちます。

プレファレンスに集中せよ

あるブランドが選ばれる確率は、個々人では「ポアソン分布」(ランダムな選択による結果)、市場全体では成功が成功を呼び、失敗が失敗を呼ぶ「ガンマ分布」(ある試行結果が次の試行確率に影響を及ぼす確率)し、その両方が消費者のプレファレンス(サイコロの目)によって決定される。この市場構造の本質は、人間の脳の構造が変わらない限り、過去から未来にわたって不変である。

 

プレファレンスとは、そのブランドや、その選択肢が持つ、競合(代替品)に対する相対的な好意度を意味する。消費者は、この一定のサイコロ目に従って、ランダムでブランドを選んでいる。売れるかどうかは、消費者の「プレファレンス(M)」というたった1つの変数によって決まる。だからプロダクトのHOWの前に、消費者を深く理解してプレファレンスを勝ち取るブランドの設計が何より重要である。

 

マーケティング戦略においてリソースを割くべき焦点は、次の3つしかない。

  1. 認知率(そのブランドを知っている確率)
  2. 配荷率(店舗などで物理的に買える状況にある確率)
  3. プレファレンス(消費者の脳内のサイコロでそのブランドが選ばれる確率)

中でも最大のポテンシャルを決めているのはプレファレンスであり、プレファレンスで決まる最大ポテンシャルを認知率と配荷率で制限する構造になっている。消費者の購買確率は、この3つの条件付き確率の掛け算になっている。

 

プレファレンスは、垂直方向へ伸ばす(狭く深く)よりも、水平方向(広く浅く)伸ばす方が、遥かに勝算が高い。商品の浸透率と購入頻度は、消費者のプレファレンスによって決まってしまう。市場全体におけるプレファレンスをどれだけ大きく取れるのかを考え、できるだけ広く売る方法を考える方が効率がいい。ターゲティングすべき時は、ターゲティングによって、プレファレンスが増える場合のみである。

 

強いコンセプトをつくれ

本質的にプレファレンスを決定づけるのは、WHOの大きさだけではなく、WHAT(便益)との組み合わせによるMの大きさである。WHOに対して「本質的に何の価値を売っているのか?」というWHATによって生まれる、消費者の脳内ポジショニングによってプレファレンスが左右される。

 

プレファレンスの最大変数は「コンセプト(脳内で認識された意味)」である。マーケティング・コンセプトは、消費者の認識世界に自社ブランドに有利なイメージを築く意図でつくられたツール(情報の束)である。マーケティング・コンセプトが伝わった結果として、消費者は自身の脳にコンセプト、つまりブランド・エクイティを形成する。

マーケティング・コンセプトを刷り込むことによって、その価値をより強く実感することを「コンセプチュアル・セル効果」という。例えば、同じパンであっても、食べる前に強いマーケティング・コンセプトで価値を想起させておけば、そうでない時のパンと比べて、より美味しいと感じさせることができる。

人間の知覚は、認識によって大きなバイアスを受ける。圧倒的大多数の消費者にとって、ブランドの差を生む震源は物理的な性能差というよりも、その人が何を価値として認識して信じているのか、つまりその人の脳が形成しているコンセプトである。

 

マーケティング・コンセプトの究極の目的は、中長期にわたって競争優位をつくる価値を、自ブランドの戦略エクイティとして構築することにある。成功への道筋は、ブランド・エクイティを設計するところから始まる。

 

強いコンセプトは消費者理解がすべて

マーケティング・コンセプトをつくるために最初にやるべきことは、徹底した消費者理解である。

 

①凡人と狂人に憑依する

  1. 凡人に憑依する
    その商品カテゴリーで代表性のある典型的な消費者がやっていることを、できるだけ同じ文脈で自分自身でも同じように徹底的にやってみる。第一印象や初期の感覚を忘れずにいつまでも素人であり続けることが重要である。
  2. 狂人に憑依する
    その商品カテゴリーで超ディープな消費者目線で、自分も同じことを本気でやってみる。

凡人と狂人という2つの視座を繋ぐことで、そのベクトル上に商品・サービスが刺すべき消費者の衝動の根源、そのカテゴリーが根ざしている「ヒトの本能」を発見する。ブレイクスルーな価値の多くは凡人と狂人の間にあり、今の凡人を狂人の方向にちょっとだけ近づけたベクトル上に見つかることが多い。

 

②消費者の脳内想起から本能をたどる

自分が売りたい商品の上位カテゴリーについて質的調査を行い、消費者がカテゴリーについて想起するあらゆる脳内イメージを引き出す。消費者の脳内でのカテゴリーやブランドがどのような意味をもって記号化されているかを知り、そのように記号化された原点を推理しながら、消費者のどの本能にささっているのかを仮説立てする。