感情をコントロールできてこそ優れた判断ができる
脳は感情に支配されやすい構造になっているため、生活の中で、感情をうまく扱うことは人間にとって非常に重要だ。理性を司る脳の部位は、大脳辺縁系が感情を「感じて」しまうことを抑えられないが、理性と感情はお互いに影響し合い、常にコミュニケーションをとっている。この脳の中の感情と理性のコミュニケーションから「感情的知性=心の知能指数(EQ)」が生み出される。
難題に出くわした時に心をコントロールする技術を身につけている人はほとんどいない。事実に基づく知識だけでは優れた判断はできない。自分を知り、必要な時に心の動きをコントロールすることができてはじめて、優れた判断ができる。
人間は感情の生き物で、私たちの脳は、まず感情に反応するようにできている。このことは、私たちにどうすることもできない。しかし、感情の後の思考をコントロールすることはできるし、感情にどう反応するかも、心の動きに気づいている限りは自分でコントロールできる。EQスキルが上がるにつれて、何が感情的な反応の「トリガー」かに気づけるようになり、前向きに反応できるようになる。
EQとは
EQとは、自分自身と他者の心の動きに気づき、それを理解する力である。また、その気づきを使って自分の行動や人間関係を上手にマネジメントする力でもある。EQの力が、行動をコントロールできるか、賢い判断によって前向きな結果を出せるかを左右する。
EQは人間の行動の土台になる要素だが、知性とは違う。IQとEQの間に明確な関連はない。EQは知性では測れない。IQは生まれながらに決まっており、知識や情報を蓄えても上がるわけではない。一方、EQは後天的に身につけられるスキルだ。EQは個性に左右されるわけでもない。
EQを高めることで、1つの方向に力を集中でき、最高の結果が生まれる。時間管理や意思決定、コミュニケーション力といった重要なスキルの土台になるのがEQである。
EQの4つのスキル
EQには4つのスキルがあり、大まかに2つのカテゴリーに分けられる。
・個人的なスキル:自分の心の動きを認識し続け、行動や傾向をコントロールする力
①自己認識スキル
その瞬間の自分の心の動きを正しく把握し、様々な状況での自分の傾向を理解する力。特定の出来事や問題や人に対して、自分がよく取ってしまう対応を知る力も含まれる。自分の傾向を正確に知っておくと、自分の心の動きをすぐに察知できるようになる。
心の動きを本当に理解するためには、どこからその感情が生まれ、なぜそう感じるのかを時間をかけてじっくりと考えなければならない。自己認識力の高い人たちは、自分が何が得意か、何が自分を動かし何が自分を満足させるか、どんな人や状況が自分をやる気にさせるかをはっきりと知っている。
②自己管理スキル
自分の心の動きを知ることで、柔軟性を保ち行動を前向きな方向に変えられる能力。自己管理スキルの高さは、自己認識力に左右される。自己管理とは、単に衝動や問題行動を抑えることではない。何よりも難しいのは、長期にわたって自分の傾向をコントロールし、様々な状況でこの力を実践することだ。
・社会的なスキル:他者の気持ちや行動や動機を理解して、人間関係を改善させる力
③社会的認識スキル
他者の感情を正確に読み取り、相手の心の中で何が起きているかを理解する力。つまり、相手の立場に立てる能力と言ってもいい。社会的認識スキルを構成する最も重要な要素は、聞くことと観察することだ。
④人間関係管理スキル
自分と他人の感情を理解し、その理解を利用して人との関わり合いをうまくマネジメントする力。人間関係管理スキルには、自己認識、自己管理、社会的認識の3つのスキルが必要になる。人間関係の管理とは、時間をかけて他者と絆を築くことでもある。他者をどのくらい理解し、他者をどのように扱っているか、自分の経験をどこまで共有できるかによって、人間関係管理力が決まる。
EQを高めるためのテクニック
①自己認識スキル
- 自分の感情を「いい」か「悪い」かで見ない
- 感情の波及効果を観察する
- 居心地の悪さに慣れる
- 感情を身体で感じる
- 自分の感情ボタンを押す人やものを知る
- 悪い気分にもいい気分にも左右されない
- 立ち止まって「なぜそう感じるのか」と自問する
②自己管理スキル
- 正しく呼吸する
- 感情と理性のリストを作る
- 目標を公開する
- イライラしたら立ち止まって、10まで数える
- とりあえず放っておく
- 笑顔や笑い声を増やす
③社会的認識スキル
- 挨拶する時に相手の名前を呼ぶ
- ボディーランゲージを観察する
- 正しいタイミングを見計らう
- 他人の立場に立つ
- その場の雰囲気を読み取る
④人間関係管理スキル
- 心を開いて好奇心を持つ
- 自分なりの自然なコミュニケーションのスタイルを磨く
- 相手を混乱させない
- ちょっとした思いやりを示す言葉を使う
- フィードバックを素直に受け止める