データを集めることから始める
データ活用の第一歩は、まず加工できるデータを作ること。データベースがあってこそ「顧客属性」によるデータ分析が可能になる。顧客属性とは性別、年齢、購買履歴など顧客が持っている情報のこと。これを分析することがマーケティングの基本になる。
すべての基本は個人のデータである。それをコツコツ溜めて、自分の使いやすいように加工することで、事業の役に立つ傾向や予測ができる状態まで持っていく。細かく、綿密にデータをチェックすることで、普通に商売をしていたら気づかないお客さん1人1人の「状態」や「本気度」まで知ることができる。
データを観察し続け異常値に気づく
1回しか来ない新規のお客さんを増やすのは限界があるし、それだと最終的に利益は上がらない。大事なのは、何度もリピートしてくれる「ファン」と呼ばれるお客さんを増やしていくこと。上質な既存客をどれだけ掴んでいるかがビジネスを発展させる土台になる。
LTV(顧客生涯価値)とは、そのお客さんが生涯で自社にどれだけお金を落としてくれたかを計る指標である。
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年) × 平均継続期間(年)
数式のそれぞれの要素を上げれば、LTVが上がる。LTV向上に向けた第一歩はデータの母数を増やすことである。顧客に関する有益なデータが増えれば増えるほど顧客の状況が理解できるし、その結果として購入頻度の増加や取引年数の継続、そして購入単価の上昇を促すことが可能になる。
データから顧客の状況を把握するのに必要になのがロジックと想像力である。この数値とこの数値を比較することで何がわかるの? この数値とこの数値を掛け合わせることで何が証明できて、どんな仮説が導き出せるのか? 数字の並びからロジックと想像力を駆使することで、顧客というブラックボックスを見える化させていくのがデータ分析の神髄である。
大事なのは、データを日常的に積み重ねることで「異常値」が出現した時、すぐに「あれ? おかしい」と気付けることである。予想と異なる数値が出た時には疑問が湧く。それが新たな勝ちパターンを獲得するチャンスである。異常値の出現は「ここをテコ入れすればお客様に喜ばれる確率が上がる」という箇所を特定する絶好のチャンスになる。常にデータを取り続け、データを観察し続けることで、ちょっとした異変にも気付けるようになる。
データの整理法
①サマリー
顧客サマリーとは新規・既存、またはロイヤルカスタマーなどこちらが定義した顧客数の変化を確認するために用いるもの。全体が伸びているのか、下がっているのか、部分的に伸びと低下が混在しているのか、その度合いはどの程度か。前年比、前月比を用いて傾向を確認する。
サマリーは非常にシンプルだが、気軽に目を通すことができ、全体をパッとチェックできる。まずはサマリーでお客さんの増減、ロイヤルカスタマーがちゃんと付いてきてくれているかどうかをチェックする習慣を身につける。
②移行表(顧客動向表)
お付き合いのあった顧客がどう移行しているかを知るための表。表の縦軸は「初回購入年度」で分ける。横軸はその年度に知り合ったお客さんが「その時点でどれだけ残っているか」を示す。移行表は離れてしまった優良顧客予備軍の存在を知るチャンスでもある。取引が続いている人の割合「移行率」を上げるためにDM配布やキャンペーンが大事な施策になる。
データ活用の神髄は、数字を見るのではなく、その奥にある人の心を見ること。単に移行率が上がったことが大事なのではなく、それはつまり何を意味するのか、心の機微や交感まで読み取れるかが重要である。
③LTV表
LTV表は直接的にLTVの推移を表したもの。それを時期別で見たり、広告別、商品別で見たり、多角的にチェックすることで、その項目に関連するお客さんにどんな特徴があるのかを見極める。移行表で浮かび上がったロイヤルカスタマーの存在を、さらに細かい分析で分類・把握する。
LTVのポイントは長期的視点で市場を見ること。広告にしても商品にしても初動がいいのは大事だが、長期的に見ると結果は違ったりする。大事なのは顧客のペルソナを把握すること。彼らに刺さる商品はどれか、どんな媒体を目にしているのか、といったことをデータで読み解いていく。
④顧客履歴分析(RF分析)
RF分析は移行表をさらに細かくしたもので、各月のリピート回数別の顧客数を表にしたもの。RFとはそれぞれ「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」の略である。
以下のセグメントに分類する。
- 準・安定顧客:なじみ客
- 安定顧客:常連客
- 優良顧客:ロイヤルカスタマー
この表は「リピート顧客が何人いるか」がわかるだけでなく、逆に「どれだけのお客さんが商品を購入しなくなったのか」がわかる。