なぜ富を得ることが重要なのか
富とは、経済的自立という目的を実現するための手段である。経済的自立は、どれくらい多く稼ぐかではなく、どれくらいの資産を保有し「自分は何があれば満足した人生を送れるか」を知ることによってもたらされる。「もっと多く」を求めれば幸せになれるのではない。自分にとって何が必要かを見極め、そこに至るまでの正しい計画を立て、お金以外の人生の側面に目を向けられるようになることで、人は幸せになれる。
経済的自立を得るとは、十分な「収入」ではなく、十分な「資産」を手に入れること。この資産によって生み出される年間の「受動的所得」が、自分にとって望ましい「消費支出」を超えていることが、目指すべき目標となる。経済的自立は人生の選択肢を与えてくれる。
富の方程式
経済的自立に到達するには、懸命に働いてお金を稼ぎ、収入のいくらかを貯蓄し、それを投資するのだ。収入をできる限り増やし、支出を最小限に抑えて差額を賢く投資すれば、経済的自立は達成できる。
富の方程式は、以下の通りだ。
富 = フォーカス +(ストイシズム × 時間 × 分散投資)
富の方程式には、4つの要素がある。
①ストイシズム
資本主義は「人々を消費に向かわせる」という唯一の目的のために、社会全体の知見やエネルギーを注ぎ込ませようとするが、私たちは公私共に、意図的かつ節度のある生活を送る必要がある。倹約するのはもちろん、人格を磨き、コミュニティとつながることも大切にすること。
ストイシズムでは、以下の4つの美徳が重んじられる。
- 勇気:粘り強さのこと
- 知恵:自分の力の及ばない外的なものと、自分のコントロール下にあり選択できるものに問題を切り分けられる能力
- 正義:公共の利益にコミットし、人間は互いに支え合っているという認識を持つこと
- 自制:あらゆる浪費や不摂生への対処策
4つの美徳を実践するには、衝動的に判断を下さず、一呼吸置くことを意識する。私たちは環境をコントロールはできないが、それにどう反応するかはコントロールできる。
②フォーカス
フォーカスとは、何に注意を払うかを選ぶことである。経済的自立を築くには、数十年にわたる努力が必要だ。こうした努力は、フォーカスなくして維持できない。富の方程式の大きなカギは、仕事への集中と収入アップだ。これは人生も充実させる。
仕事に割ける時間には実質的に限りがある。自分ではコントロールできない要因もあるからだ。但し、それを心理的な制限と一緒にしないこと。つまり、キャリアを積むための重要な時期には、仕事を優先することを受け入れるべきだ。得意な仕事をすること。得意なことで、金銭的に十分な見返りがあり、スキルを習得する情熱を感じている時には、仕事中心の生活を受け入れやすくなる。
③時間
時間は、最も重要な資産である。「忍耐強さがあれば、時間が持つ大きな力を引き出せる」という概念を理解できるかどうかが、日々のことばかりに目を向けず、富を築くために必要な長期的なマインドセットを持てるかどうかの分かれ目になる。
富を築くことに関しては、時間は長期的には味方になり、短期的には敵になる。これには3つの側面がある。
- 時間には物事を雪だるま式に増やす力がある
複利の力のおかげで、資本のわずかな増加が莫大な利益になり得る。 - 現在という時間を経験する
富を築くには、自分が時間をどう配分し、お金をどう使っているかを明確に理解していることと、大小様々な判断を適切に下せるスキルが必要になる。 - 時間がもたらすトレードオフ
未来の自分を想像し、時間の力を活用したら何が起こるかを想像することが、近い将来の自分と遠い将来の自分の幸せのトレードオフを受け入れるためのカギになる。
④分散投資
分散投資は、健全な投資判断を下し、金融市場に賢く参加するためのロードマップになる。分散投資とは基本的に「すべての卵を1つのカゴに入れないこと」だ。リスクの高い投資資産は、ゼロになる可能性がある。こうした投資資産のどれか1つに全資産を集中投資していると、賭けに失敗した時に壊滅的な打撃を被る。分散投資をすれば、このデメリットを軽減できる。投資の目標は世界一の金持ちになることではない。分散投資したポートフォリオを適切に運用すれば、経済的自立を達成できるリターンは十分に生み出せる。
私たちが取るべき最善策は、富に至る次の2つの道の両方を進むことである。
- 現在の収入を最大化するために時間を集中させる。
- 長期的な資産を最大化するために投資を分散させる。