強みを活かす
ほとんどの親は、わが子を楽観的で、回復力のある人間に育てたいと望んでいる。だが「考え方は正しいが方向性が間違っている」場合も多い。楽観的で、回復力のある人間に育てるためには「わが子の弱点を直さなければならない」と思い込んでいる。しかし、それは間違いだ。弱点を直すよりも、強みを伸ばす方に目を向けた方がいい。
強みにもとづくアプローチでわが子を育てれば、子どもは「自分には強みがある」という考えを吸収して、その強みを使って自らの人生を切り拓こうとする。強みにもとづく子育てでは、それぞれの子どもが持つ才能と性格の強みを、子ども自身が気づくようになる。そうすれば、子どもは変わる。
自分というものをしっかり持った子どもは、自分の強みを活かすと同時に、弱点にも取り組める。なぜなら、自分がどういう人間かをしっかりと認識しているために、揺るぎない自己を持ち、自分の性格の改善が必要な部分を認めて、その改善に取り組めるからである。
なぜ弱点に注目してしまうのか
私たちは、脳に配線された4つの思考プロセスによって、ネガティブなことに目がいくようにできている。この思考プロセスによって、親はわが子の本当の姿を見ていない。
①選択的注意:特定の対象にのみ注目する
選択的注意は、入ってくる情報をフィルターにかけることで、情報過多を防ぐ脳の働きである。
②ネガティブバイアス:マイナス情報を重視する
ネガティブバイアスは、潜在的な脅威をくまなく見張り、アラームを鳴らす。人間は進化の過程で、ネガティブバイアスのおかげで危険を免れてきた。
③投影:自分のネガティブなイメージを投影する
投影とは、受け入れがたい自己の特徴や欠点を、他の誰かの特徴や欠点として、無意識の内に相手に押し付けてしまう心の動きを指す。
④二元思考:白か黒か
「白か黒か」「善か悪か」、親は子どもを二元思考で決めつけやすい。
ストレングス・スイッチ
たとえ強みに気づかなかったからといって、わが子に強みがないという訳ではない。子どもの弱点に反射的に目がいってしまった時には、まずは自分を落ち着かせ、深く息をすることから始める。
①数回、深呼吸をする。
②自分にこう言い聞かせる。「強みはあるが、ただ隠れているだけ。さあ、その強みを見つけるスイッチを入れて」と。
ストレングス・スイッチとは、弱点に目がいきそうになると、強みに注目するよう警告してくれる目覚まし時計だと考える。すると、目が覚め、弱点モードから強みモードへと切り替わる。
強みの3要素
強みには3つの要素がある。わが子の強みを発見する時には、まずその3つが揃っているかどうかを確かめる。
①得意(上手にこなせる)
②熱意(楽しんで行なう)
③頻度(積極的に行なう)
強みとは、その子が「上手」であり、「熱心に」しかも「頻繁」に行なうことだ。「得意」「熱意」「頻度」という強みの3要素は、美しいフィードバック・ループを描く。その活動を上手にこなせると、子どもは嬉しくなり、ますます熱中する。そこで、その活動を積極的に繰り返そうとする。すると今度は、頻繁に行なう(努力する)ことで、ますます上達する。
この3要素を覚えておけば、「本当の強みではないのに強みに見える」活動を、ただうまくこなせるという理由だけで、わが子に押し付けるリスクも減る。
強みを伸ばす公式
強みの開発 = 能力 × 努力
最初は遺伝的な特徴(能力)にわずかに優れているだけだったが、周囲が環境を整え、機会を与える内に、子どもは繰り返し練習(努力)して、他の子どもよりも早く上達する。これを「相乗効果」と呼ぶ。だからこそ、弱点を直すことよりも強みを伸ばすことに力を注いだ方が、高いレベルで物事をこなせるようになる。