Read Write Own

発刊
2024年11月29日
ページ数
376ページ
読了目安
614分
推薦ポイント 8P
Amazonで購入する

Amazonで購入する

インターネットの新しい時代
大手テック企業がユーザーやクリエイターから搾取する現在のインターネットのあり方は、公共性志向のあるブロックチェーンを用いたネットワークにより、変えていくべきだと説いている一冊。

ブロックチェーンの特徴と本質をわかりやすく解説しながら、ブロックチェーンを用いたネットワークがもたらす、新しいインターネットの時代がどのようなものかを書いています。
現状、仮想通貨以外には、あまり注目を浴びていないブロックチェーンの、本来の価値と将来性を理解することができます。

所有権を民主化するネットワークの登場

ネットワークの設計がネットワークの運命を左右する。これまでには競合する2つのタイプがあった。

  • プロトコルネットワーク
    電子メールやウェブのように、ソフトウェア開発者のコミュニティといったネットワークのステークホルダーが制御するシステム。平等主義かつ民主的で、利用に許可はいらない。
  • 企業ネットワーク
    コミュニティではなく、企業が所有し制御している。中央集権的で利用には許可がいる。お金と権力はネットワークの末端を構成するユーザーや開発者から、ネットワークを所有する企業へと流れる。

 

インターネットの歴史は3幕で展開する。それぞれの幕は支配的なネットワーク構造によって特徴付けられる。

①読み取り(リード)時代

1990〜2005年頃のインターネットの初期、プロトコルネットワークが情報を民主化した。誰でもウェブブラウザに単語を入力するだけで、ウェブサイトを通じてあらゆる情報を見つけられるようになった。

 

②読み取り/書き込み(リード/ライト)時代

2006〜2020年頃、企業ネットワークが情報発信を民主化した。SNSなどのサービスに投稿することで、誰でも多くの人に向けたコンテンツを作成、公開できるようになった。

 

③読み取り/書き込み/所有(リード/ライト/オウン)時代

ブロックチェーンネットワークの登場により、前の2つのネットワークを自然な形で融合しながら、所有権を民主化する。誰もがネットワークのステークホルダーとなり、かつて株主など少数の関係者だけが手にしていた権力と経済的な恩恵を享受できる。この新しい時代は大手テック企業の中央集権に対抗し、インターネット本来のダイナミックなあり方を取り戻す。

 

ブロックチェーンネットワークの特徴

ブロックチェーンは情報を保存し、その情報を操作するソフトウェアに定義されたルールに則って動く。その重要性は、ブロックチェーン自体とそれを使って作られるネットワークを制御する独自の方法にある。従来のコンピュータでは、ハードウェアがソフトウェアを制御する。そして物理的なハードウェアは個人または組織が所有し制御している。つまり、基本的には特定の個人や団体がハードウェアとソフトウェアの両方を管理しており、所有者の気が変わったら、いつでも制御しているソフトウェアを変更できる。

 

一方で、ブロックチェーンは、従来のインターネットで見られるハードウェアとソフトウェアの力関係を逆転させる。ブロックチェーンでは、ソフトウェアがハードウェアのネットワークを管理する。ブロックチェーンはソフトウェアの強制力により、ユーザーに提供する機能を保証する。その1つがデジタル所有権であり、これにより経済的利益とガバナンスの権利をユーザーの手に委ねることができる。

ブロックチェーンネットワークを使えば、企業の利益よりもユーザーの利益を優先するソーシャルネットワークを作れる。商取引が発生するマーケットプレイスや決済ネットワークも作れる。しかもテイクレートは基本的に低い。さらには新たな収益化の方法を持つメディアやデジタル世界、クリエイターから搾取するのではなく報酬を提供できるAIサービスなどを作れるようになる。

 

より良いインターネットをつくり出す

ネットワークの設計は都市計画のように考えることができる。インターネットにも健全な都市に見られるような公有地と私有地のバランスが必要だ。企業ネットワークは起業家が私有地を広げるのと似ており、成功すると公共の場を取り込み、代替サービスを締め出してユーザーやクリエイター、起業家が活動する機会を減らしてしまう。

 

ブロックチェーンネットワークは、その制御権をコミュニティのメンバーに委ねることで、組織的に非中央集権化されている。ハードウェアやその所有者には変えられないルールがソフトウェアに組み込まれている。コミュニティはトークンの所有者、ユーザー、クリエイター、開発者を含む様々なステークホルダーで構成される。新しいシステムの多くでは、ブロックチェーンネットワークの変更には投票が必要だ。投票できるのは通常、ガバナンスの権利を表すトークンを持っているユーザーである。この仕組みにより、コミュニティの利益になることに関してのみルールが変更されることを保証する。

 

ブロックチェーンの設計は都市計画に、新たなブロックチェーンネットワークの立ち上げは未開発の土地に都市を作るのに似ている。都市計画を立てる人は必要最低限のビルを建てたら、住民や土地開発者向けに公有地の供与や税制優遇の仕組みを作る。ここで所有権が重要となる。物件が本当にその所有者の持ち物であることを保証し、物件に投資する安心感を与えるからだ。都市が成長するにつれて、税収基盤は安定し、税金で公共設備を開発すると同時に、さらに多くの土地が人々に提供され、都市は成長していく。